ワクワクの休日(前編)
「うーん、どうしよう……」
休日の明日は野々村とデート、ではなく遙も含めた3人でおでかけ。
正式なデートではないとはいえ、好きな女の子と一緒に遊んだりショッピングしたりするわけで。
「困った……」
どういうコーデで行こう?
なにせ野々村の好みがわからないので、まず方向性が決められない。
でも遙のことが好きだっていうんだから可愛い系かもしれない。
……いやそんなフリフリのなんて持ってないよ。
とはいえリサーチできていれば合わせられたのかと言われればそんなこともないんだけど。
バイトしてないJKに前日に美容院行ったり、服を買いに行くための服を買うお金なんてあるわけないのだから。
「えーい、ウダウダ悩んでても仕方ない!」
野々村にクマのある顔なんて見せられないから、これ以上時間をかけて睡眠時間を削るのは良くない。
告白した日だってクマができる程までは夜更かししてなかったし。
古い言葉に「女は度胸」っていうのがあるんだと母さんに聴いたことがある。
それを信じて勢いだけで決め、眠りについた。
翌朝。
「あ、理緒ちゃーん!」
「おはよう遙、早いね」
「だって理緒ちゃんとのデートだもん!」
「いや違うよ、野々村も一緒だから」
あたしだって本音を言えば2人きりのデートがしたかった。
でも「今日は」3人で。
いつかは2人きりでデートする関係になってみせるから。
「今日の理緒ちゃん、いつもと違ってコーデに気合入ってるね」
「そういう遙はいつもと変わ……」
「?」
言いかけて口を閉じる。
遙はいつも通りなんじゃない、以前からあたしに振り向いてほしくてずっと頑張ってたんだ。
あたしが気が付かなかっただけで。
「ううん、今日の遙可愛いよ」
「むー、いつか可愛いじゃなくて好きって言わせてあげるもんっ」
ゴメンね、あたしは野々村のことが好きだからそれ以上は言えない。
でも遙の気持ちもようやくわかったから。
今までみたいに無視したりしないよ。
「そうそうそれでね、野々村さんから今日来れなくなったって連絡があったんだけど」
「えっ!?」
スマホを取り出してみるが、そんなメッセージはどこにも来てない。
「あたしのところには何も来てないけど」
「え、えっと……それはね」
「ダメよ谷本さん」
「なんだ来てるじゃん」
あー、ビックリした。
「私を置き去りにして2人で楽しもうとしたんでしょうけど、そうはいかないわよ」
「うーん、ダメかぁ」
「えっ、遙の嘘だったの!?」
「当然よ、そんな連絡してないもの」
「は~る~か~」
「ご、ごめんなさい……」
さっきまで考えていたことを投げ捨てたくなってきた。
やっぱり遙相手には今まで通りでいい気がする。
「まあ、この場でちゃんと謝れただけ立派だけどね」
「この際丁度いいから、抜け駆け禁止にした方がいい気がするわ」
「正々堂々ってこと? 野々村って以外なところで男前だね」
「そうかしら、でも今回みたいなことで相手の印象を悪くするよりかは良いと思うわよ」
それは確かに、こんなことされたら気持ちが離れるだけだもんね。
「遙もそれでいい?」
「う、うん。 もうこんなことしないから、嫌いにならないで……」
「今回はならないから、ほら行こっ」
遙の手を握る。
そしてもう片方の手で野々村の手も握る。
最終的にこの三角関係がどうなるかはわからないけど。
今はこの状態を楽しむのもアリだと思う。
「まずはカラオケ行こっ、野々村がどんなの唄うか気になる!」