始まった関係
お昼休み。
ザ・お弁当タイム!
「谷本さん、一緒にお昼食べましょう♪」
「いいよ、大歓迎!」
「ってなんで椿さんまで一緒にいるのよ!?」
「なんでって、ボクと理緒ちゃんが毎日一緒にお昼食べてるからだけど」
まあうん、アレを契機にお近づきになりたいって気持ちもわかる。
あたしも同じだから歓迎したわけだし。
「谷本さんはいつも椿さんと一緒なの?」
「そうだよ、できるだけ理緒ちゃんと一緒にいたいからね」
「半分は嘘だよ、野々村と同じで男子にモテるから女子の友達がいないだけ」
「よく知ってるわね」
好きな女性のことだし、見てたから。
そうハッキリ言うのは控えた、ここ教室だし。
「でも丁度いいわ、私と付き合いましょう谷本さん!」
「よくないよ、仲間意識を利用しようとしないで!」
「あたしもお昼食べるのはいいけど、そこまでは認めない!」
さっき自重したのは何だったのか、結局勢いで騒いでしまった。
周囲にいるクラスメイトに聴こえてないことを祈ろう。
「理緒ちゃんは逆に女子人気ありそうだよね、女子校行ったら王子様になれそう」
「理事長先生がこの学校で女の子好きなのあたし達3人しかいないって言ってたから、それはないんじゃないかなぁ」
それに女子校行ったって野々村がいないんじゃあね。
「野々村が遙みたいなタイプが好みであたしは圏外だっていうなら、他の娘にモテてもなぁ……」
「むー、ボクは理緒ちゃんが好きなのにー」
「同じ女の子が好き同士でも、上手くいかないものね……」
どうしたらいいんだろうね。
このままじゃ膠着状態だ。
「まああたしとしては野々村とお昼ご一緒できるわけだから、進展したと言えるけど」
「理緒ちゃんの下心が知られたら全男子から恨み買いそうだね」
もし野々村&遙とお昼を食べる男子がいたらソイツは夜道に気をつけなきゃいけないもんね。
あたしも襲う側になりそうだわ。
「野々村さんと付き合うのは無理だけど、友達が増えるのはボクも嬉しいよ」
「それって……、お友達から始めてくれるってことでいいのかしら!」
「違うよ、食い気味に来ないで!」
「むしろあたしと友達から始めよう野々村!」
乗っちゃったあたしも悪いけど、またコレだよ!
周囲を見渡す。
待って、今視線を逸らされたの気のせい?
「ほ、ほら2人共。 このままのノリを続けてると時間なくなっちゃうからお弁当食べよう」
「はーい」
「まあ、そうね」
よし。
これ以上騒いでクラスにあたし達の関係がバレるのは良くない気がするからしばらく食べ物で口を塞いでおいてほしい。
あたしも騒いでたけどね、うん。
ただそれも短い間の話、女の子の口に戸は立てられないのだ。
若干意味ズレてるけど気にしない。
「理緒ちゃんは面食いだからいいとして、野々村さんはどうしてボクのこと好きになったの?」
「良くない、あたしの恋心をたったそれだけで終わらせないで!」
「それはその、可愛いし元気をくれるから……」
「スルー!?」
2人だけの世界作らないでよ、あたしを放置しないで!
「エヘヘ、そう言われるとなんか照れちゃうなー」
「この間もそうだったけど、谷本さんに活を入れられるとチカラが沸いてくるのよね」
うん、うん……?
「えーと、もしかして野々村ってM?」
「失礼ね、そんなわけなんでしょ」
「でも遙の罵倒にそんな感想持った人は野々村だけだよ、いつもそれで喧嘩になるし」
あたしにも時々キツイこと言うからね。
それも女子の友達が少ない原因かも。
「遙は周囲からはよく『あざとい』って言われるけど全部素なのよねー」
「当たり前だよ、ボクは理緒ちゃんが好きなんだから男子に媚びるわけないもん」
「私も似たようなものよ。 望んでもないのに告白ばかりされて、それで女子に嫌われるのって悲しいんだから……」
遙に友達ができるのは嬉しい、でもそこから生まれる関係が複雑だなぁ……。
あたしの方を向いてもらうにはどうしらいいんだろう?
そんな思考の海に沈みそうになったところを、チャイムの音で我に返る。
「あら、予鈴ね」
「うっそ、ずっと話込んでたのあたし達」
「ボク次の授業で当てられるかもしれないんだった、教科書教科書」
次数学だっけ。
「ねえ、これからもお昼。 一緒に食べてもいいわよね?」
「勿論、大歓迎!」
「本当は理緒ちゃんと2人きりがいいんだけど、ボクのことを好きだって言ってくれる女の子を無下にはできないし」
「ありがとう……」
そう礼を言って、野々村は自分の席へと戻っていく。
これから一緒か。
今からもう明日のお昼が楽しみで仕方がなかった。