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先生とせいちゃんと僕

作者: 鈴村もゆり

 尊敬をしているというのとは少し違った。ただ、少し居心地がよかった。

 高校生活も二年目が過ぎようとしていた。何をしてきたかと言えば、友人と遊び、名前ばかりの部活に顔を出し、たまに勉強。それと、あえて挙げるとすれば、毎日のように先生のもとへ足を向けていたくらいだろう。

 先生は日本史を担当している。といっても社会科は全般できるので、時折世界史や地理を教わることもあった。文系でありカタカナが苦手な僕は担任教師のすすめるままに日本史を選択し、そこで先生の授業を初めて受けたのだ。

 白髪の混じった髪と、一度は教壇を下りたという話のとおりくちゃりとしわの寄った顔。いかにも優しげな老紳士という風貌で、教室に入ってきたのを見たときはわけもなくほっとしたものだ。授業の印象はといえば、ひたすらに眠たい。とにかく声が柔らかすぎる。耳に心地よい低音が物語るように歴史を紐解いていくものだから、気付けば意識が吹き飛んでしまう。これは凶器だなと、クラスメイトの間で盛り上がったほどに。

 また、課題もとても多く出す人だった。内容は簡単な穴埋め程度なのだが、毎週のように出されてはたまったものではない。授業が始まりひと月もしないうちに先生は生徒たちから億劫な人だと認識されるようになり、唯一ひとつも愚痴を零すことのなかった僕が課題を先生のもとへ運ぶ役に抜擢されることとなったのである。先生のことは別に嫌いではなかった。霧のような人だと思っていた。声もさることながら、微笑みを絶やさない口元や小さめの身長。目を離したらふっといなくなっていそうな、妖精のような精霊のような人。皆は少し近寄りがたいと言っていたけれど、そうは思わなかった。むしろ、不思議な親近感を抱いていた。

 先生の部屋は旧校舎にある。新しい校舎から少し距離があるので大変なのではないかと思っていたが、たまには動かないと足腰が鈍るのだと笑われたことがあった。どうやら先生のほうから旧校舎に部屋がほしいと言ったようで、他の先生たちは職員室やそれぞれの教科の部屋に机を持っている。つまり、旧校舎はほぼ先生のみが使っているのだ。

 冷たい風に身を震わせながら校舎を出て、旧校舎の屋根の下に駆け込んだ。ひびの入ったコンクリートの校舎はいつ見ても寒々しく、人のいない廊下は埃っぽい。隙間風でも入ってきているのか、かなり着込んでいるはずなのにぶるりと体が震えた。暖房の入った教室がもう恋しい。吐いた息が白く染まっているのを見て、ああやはり先生は物好きだとおかしい気持ちになった。

「先生」

 ノックをして扉を開く。旧校舎だからなのか先生にたいして何か思うところがあるからなのか、この部屋へ生徒が訪れることはとても少ない。僕のように課題を届けにくる生徒がいたとしてもすぐに帰ってしまうので、この部屋は無人か先生のみがいるかしかないのだ。

 先生は長机に向かっており、こちらからは背中しか見えない。少し骨が曲がったお年寄り特有の曲線が隠れ、先生が振り返る。僕はその瞬間が、とても好きだった。

「ああ、そこに置いておいて。いつも申し訳ないね」

「いいえ。少しここで時間過ごしてもいいですか」

「どうぞ」

 椅子に向けられた掌に軽く会釈を返し、先生の席の二つ隣に腰を下ろす。どうやら小テストの採点をしていたらしく机の上にはプリントが並んでいる。見ていいものなのだろうか。気まずく椅子に座りなおすと、一年のものだから構わないよと、いつものように薄く笑みを浮かべられる。

 先生は採点に戻り、僕は持ってきた課題を広げる。何を話すわけでもなく静かな時間が過ぎていく。日に焼けたカーテンがふわりと視界をよぎって、やはり寒いなと小さく息を吐き出した。

 先生とともに放課後を過ごすのも何度目だろう。人があまり来ないところであることを知ってから、勉強や読書なんかをする際はここで過ごさせてもらっている。邪魔をするつもりはないので先生に話しかけることはなく、先生もまた僕に話しかけはしない。そのあいだぼくたちはただ同じ空間に存在しているだけであり、先生と生徒という関係であることすら希薄なように感じられる。

 言葉を交わすことはなくても、僕は先生とともにいる時間が気に入っていた。ただ授業が眠たいというだけで先生のそばにろくに寄ろうとしない同級生たちのことをもったいないなという目で見てしまうくらいには。

「暗くなってきましたね」

「ああ、本当だ。昨今は日が沈むのも早くなったものだね。そろそろ帰ったほうがいいのではないかい」

「はい。失礼しました」

 頭を下げ、椅子をしまう。扉を開き、また頭を下げる。そのあいだ先生はこちらを見つめ、にこにこと微笑んでいた。薄暗い中に一人残される先生はどこか影がある。僕はそれに気が付かないふりをして、扉を閉めるのだ。




 歳をとるかなしみ、というものが存在するのだろうと思う。僕なんかはまだ生きてきた歳月も短く、出会った人も経験も少ない。歳をとることは歓迎すべきことで、重ねた日々から学んでいくことも、目がくらむくらいたくさんあるのだろう。

 だから長く生きた人たちを、僕は単純にそのたくさんの何かを乗り越えた人ということで、戦士を見るような気持ちで眺めているのだ。戦が天変地異が、きっとその人のこれまでの人生には溢れていて、僕の想像もつかないようなことがあったりしたのかもしれない。しわの数だけさみしいことが、苦しいことがあったのかもしれない。

 それらを隠して微笑んでいるのだろうか、先生も。

 そうなのだとすると、そのかなしみ等を見るのは恐ろしいことだなと思ってしまう。先生と顔を合わせるたびに思いをはせずにはいられない。いつか僕もかなしみが当然になっていくのだろうか。今の僕の毎日にちりばめられた悲しみの欠片が、年老いた背中にのしかかる日がくるのだろうか。

 鈍感であることは生存本能である。かなしみに慣れ、気付けば致死量の苦しさが身のうちに溜まっているのかもしれない。しかし本人はそれを知らず。また周囲もそれを知らず、知らないからこそどうにか生きていられるのかもしれない。

 僕も、先生のようにしわだらけの顔で笑うのだろうか。そんな年になるまで、かなしみから逃れつづけられるのだろうか。

 何度先生の部屋へ通っても、答えは出ない。




 部活動には絶対所属しなければいけないと言うので、僕は渋々ながら美術部に入っている。週に一度美術室へ顔を出せばいいのと、一年に一度作品を提出すればいいという楽さが魅力だ。僕のようにもともと帰宅部希望だったという人も多く所属している部活である。週一の活動にすら顔を出さない人もいるが、先生のもとを訪れる以外に放課後の予定がない僕は暇つぶしに参加することにしている。

 毎週水曜、美術室。真面目に作業をしている人の邪魔にならないように、僕と友人はひっそりと雑談をするのが恒例であった。

「文理で別れてからあんまり会うことなくなったよなあ」

「そうか? そんなに変わらない気がするけど」

「国語と英語くらいだろ、一緒なの。あーあ、理系は男ばかりで潤いゼロ。今から文系になろうかな」

「好きにしたら。止めないし」

「冷たいなあ」

 拗ねたように唇を尖らせて、友人はスケッチブックに落書きを始める。仮にも美術部員とは思えないほど粗雑な絵だ。化学の実験の図は器用に描くというのに、納得がいかない。

 鉛筆を走らせる音や何かを組み立てるような音が響く中、僕たちやほか数人のひそひそ話が耳に染みていく。先生の部屋には及ばないが、気持ちの良い時間だ。たとえるならば森の中、葉の揺れる音や鳥の鳴き声、川の水が弾ける音。それらがまじりあって一つの音楽になっているような、その中でまどろんでいるような、そういった感じ。目を閉じると、すべてが有象無象にかわる。

 心地よさにかまけてうとうととしていると、友人が、あ、と声を上げた。

「どうかした?」

「いや、旧校舎のあの窓さ、社会科準備室だよな。日本史担当の、……ええと、名前なんだっけ」

「分かるよ。僕、日本史の課題提出する係だし。先生がなに?」

「うん。灯り、ついてるなと思って」

 友人の言葉につられるように窓の外を見る。庭を挟んだ向こうにある旧校舎では、彼が言うとおり一つの窓だけが明るい。確かにあそこが社会科準備室だ、先生がいるところ。

 視線を空に移すと、一面に藍色が広がっている。とうに夕方から夜というべき時間になっていたらしい。日が落ち始めた教室の雰囲気を思い出す。暗がりのなか、電気をつけ、一人でプリントの採点をし続ける先生。想像して、きゅうと胸が音をたてた。

「先生たちも大変だよな。俺たちが帰った後もずっと仕事してるんだし。とくにあの先生は旧校舎に一人だろ? 考えるだけでおっかない」

 言いながらぶるりと肩をふるわせた。この友人は怖がりだったのかと考えながら、僕はぼんやりと旧校舎を眺める。

「あの人に習ったの、一年のときに数回だけだったけど、なんかふわふわした人だよなあ。授業眠いとか面倒くさいとか聞くけど、俺は嫌いじゃないよ」

「僕も。まあ、そうじゃなかったら、係なんて任されないし」

「そりゃそうか」

 からからと友人が笑う声にかぶせて、部長が解散を告げる。時計は最終下校時刻を指している。僕は放り出していた鞄を手に、後片付けをする部員たちの様子を何とはなしに眺める。友人が下手くそな落書きを鞄に詰め込むのを見て、ふと、口が勝手に言葉を紡ぎだした、

「ごめん、忘れ物したから取ってくる」

 頭には、薄っぺらい背中が浮かんでいた。

「なんだよ、教室にくらい付き合うぞ」

「大丈夫だから先帰ってて。おつかれ!」

 友人が何か言う前に美術室を飛び出す。下校時刻になるのと同時に先生が電気を落とすせいで、廊下は真っ暗だ。そんななかを、玄関に向かって歩く生徒たちの脇をすり抜けながら、僕は旧校舎へ向かって足を速める。僕以外には誰も旧校舎へ向かおうとする人なんていない、僕は一人で、同じく一人の先生に会いに行こうとしている。

 旧校舎は相変わらず埃っぽい。密やかに染み入る寒さも相俟って、人のいない洋館でも歩いているような心地だ。肩を竦めながら廊下を一目散に進む。渇いた足音が響くのが少しおっかない。廊下も安全とは言い難いが、この暗さの中で階段を上り下りするのはかなり危ないのではないだろうか。転がり落ちる自分を想像してしまい、誤って足を滑らせないようにしなければと足元に集中する。

 先生はどうしているだろう? きっと下校時刻であることに気付きながらも校舎から出るわけでもなく、ただ淡々と、仕事を続けているんだろう。僕が先生のもとを訪ねるなんて一欠けらも想像せず、帰ってから何をしようかなんて考えているんじゃないだろうか。

「せん」

 せい、と続けようとして、言葉が途切れた。社会科準備室のすぐ目の前で、僕の脚は止まった。

 扉にはめられたガラスを通せば、教室の中の様子を窺うことができる。ノックをする直前で、先生を見つけてしまったせいで、僕の勇気は急速にしぼんでいった。

 先生はいつもどおりに廊下に背を向けて座っている。光の弱い蛍光灯の下で、小さな体をさらに縮めて、ひたすらに仕事をしている。薄い、僕たちがふざけて押しでもしたらぼくりと折れてしまいそうな、薄い背中。頼もしくなんてない、力強くなんてない、しな垂れた老人の背中。

 課題という大義名分もなく、ここからでは微笑みも見えず、今の僕には先生がまとう空気に向き合う覚悟がないのだということに気付く。誰かが訪れる予定のない、真実一人きりを堪能しているときの先生はこれほどまでに近寄りがたい。僕は先生と共にいることが好きだけれど、彼の背負う薄暗いもののことを恐れてもいる。

 僕は先生に親近感を抱いている。自分と近い人間なのではないかと思っている。先生の薄暗い部分は、僕にとってもグレイゾーンなのだ。僕の中の危うい部分に、先生を通して触れることがこわい。

 なんて勝手なんだろう。普段は心の安らぐ場所として先生のそばにいることを望むくせに、いざ自分の柔らかいところを傷付けられる気配を感じれば足がすくんでしまう。そもそも今日、僕がここに来た理由もそうだ、同情なのだ。哀れみなのだ。一人でかわいそうだからとここまで早足で来たりして。勝手に癒されて、勝手に憐れんで、勝手に恐れて。

 傲慢だ。

 社会科準備室に背を向けて、僕はできるだけ足音を立てないように廊下を走る。今すぐにでも先生の近くから離れたい。真っ暗な廊下はどこまでも続くように思えるけれど、あのまま教室の前に立ち尽くしているよりは、七不思議にでも巻き込まれて迷ってしまったほうがまだましだ。

 走って走って、校舎から飛び出す。心臓がばくばくいっている。そうして振り返る気にもなれず、帰路を辿った。先生の後ろ姿が、頭から離れることはなかったけれど。



 翌日、日本史の授業があった。先週のぶんの課題をいつもどおり僕が集めて、先生のもとへ持っていった。何も変わらない。昨日社会科準備室を訪れたことを僕は話さなかったし、先生はきっと気付きやしなかったのだろう。どうぞと渡して、ありがとうと受け取られて、それだけ。

 ただいつもと違うのは、その日は課題を提出したらすぐに退出したことだ。僕が失礼しますと頭を下げたら、先生は変わらない笑顔でお疲れ様と見送ってくれた。何も言われなかった。何も訊かれなかった。先生にとって、僕がいてもいなくても大差ないのだろう。むしろいたら邪魔なのかもしれない。静かにしているからと言って迷惑でないわけではなかったのかもしれない。

 恥ずかしかった。一方的に様々な感情を抱いていたことも、先生と多少打ち解けたと思っていたことも、それが思い違いであったことも。

 それからは、準備室に長居することなく帰ることにしていた。先生は相変わらずで、僕も何か伝えるわけでもなく、それまでの二人で過ごしていた時間がまるで幻だったのではないかと思えるくらい、先生にかかわることは少なくなっていった。

 季節は、冬にさしかかろうとしていた。



「あれ、もう帰るの?」

 クラスメイトに声をかけられて振り返る。隣の席の男子生徒が、鞄を背負った僕のことを見上げていた。それほど親しくもないけれど話くらいはする仲だ、無視するわけにもいかず、曖昧に笑みを浮かべる。

「最近帰るの早いな。前は結構遅くまで鞄残ってたりしたのに」

「ああ、試験前だったし勉強してたんだ」

「なるほどね。あ、じゃあさ、今日ももう帰るんだろ? このあとクラスの奴何人かでカラオケ行かないかって話してるんだけど、来ない?」

「ごめん、今日はちょっと部活に顔出さないといけないから……」

 頭を下げると、気にしなくていいと逆に謝られた。また明日と手を振って、教室を後にする。

 嘘を吐いた。勉強をしていたのは本当だけれど、それ自体が目的ではなく先生に会うために放課後残っていた。部活だって今日は出なくていい日だ。体のいい断りの文句に使っただけだ。

 ああいった誘いはありがたいけれど面倒だと思う。関係にひびを入れたいわけではない。ただ、あまりかかわりたくはない。そしてそういうところが自分のよくないところだと、恐ろしいところなのだと自覚している。

 美術室ではすでに何人かの部員が制作を始めている。適当に挨拶をして、こちらもすでに来ていた友人の元へ足を運ぶ。

「早いね」

「お前もな。どうしたんだよ、ここのところ毎日来てるじゃん。前は週に二三日ってとこだったのに」

「……人のこと言えないだろ」

「まあな。俺もそろそろ制作はじめないと間に合わないから」

 言いながら、友人はスケッチブックを叩いた。年に一度の作品提出の時期が近付いてきているのだ。普段はおしゃべりに来ている幽霊部員たちもこのときばかりは美術部へ顔を出す。僕もまた制作があるのだけれど、たいしたものが作れるわけでもなし、ここ数週間毎日のように美術室に通っていたせいでもうすでに完成目前となっている。

 椅子を引っ張ってきて、友人の向かいに座った。彼は真剣に、白いページを睨み付けている。

 窓の外を見る。これも日課だ。旧校舎の、唯一人がいる教室。先生のいるのだろう部屋の窓を見て、憂鬱な気持ちになる。あそこで今日も先生は一人で仕事をしている。廊下に背を向けて、生徒にそそくさと逃げられて。

 気になって仕方がないというのが本音だ。先生と共にいて心が安らいでいたのは確かで、たいして楽しくない学校生活の中の、心のよりどころのように思っていたのは否めない。先生と一緒に時間を過ごしたかった。言葉を交わさなくてもいい。ただ同じ空間にいられればそれで気は休まるだろう。けれどそれをするには、僕のなかの罪悪感や羞恥心が邪魔をしてくる。

 行動に移せないから遠くから見ているだなんて、まるでストーカーのようだ。自分で思って、笑うより先にうすら寒くなる。こんなだから居場所を失ってしまったりするのだ。

「あれ?」

 一人自嘲していたが、友人の声で我に返る。彼はつい先ほどまでの僕と同じように窓の外を見ているようだった。どうかしたのかと首を傾げてみせると、彼もまた不可解そうに首を傾けた。

「なんかさあ、変じゃねえ?」

「なにが?」

「社会科準備室。もう結構暗いのに、電気ついてないなって。先生いないのかな」

 言われて改めて確認すると、たしかに先生の部屋にあたる窓は真っ暗だ。日が短くなり、放課後をむかえたばかりではあるけれど、空のいろはすでに赤の面積を藍色が追い越し始めている。夕方になるころから明かりをともす先生であるのに、たしかにおかしい。

 友人は不思議そうにしながらスケッチブックに鉛筆を走らせる。相変わらず上手とは口が裂けても言えないのだろう絵を、今は気に掛ける余裕もない。

「なんか最近お前が気にしてるみたいだから、俺も毎日あの窓意識して見てるんだ。ここんところはこの時間にはもう灯りついてたはずなんだけどなあ」

 自分も気付かなかった灯りのことに友人が気付いたことも驚いたが、それ以上に、僕が先生のことを気にしていることを彼が察していたことも意外だった。彼はたしかにクラスメイトで友人で部活仲間であるけれど、親友だとか心の友だとか、そういう関係では決してない。僕のことなんてそこまで見ていないのではと、そう思っていた。

 僕は僕のすべての友人のことを、さして大切に思ったことがない。いや、思えないというのが正しいだろうか。言葉は交わすし、ある程度親しく見せることはする。けれど深くは入ってきてほしくないし入りたくなんてない。

 煩わしい。面倒くさい。

 僕は薄情な人間だ。よく知っている。だから相手に自分のことを見透かされたり好意を抱いてくれているのを思い知ると、ひどく複雑な気持ちになる。

「しかし、あそこが暗いと旧校舎って真っ暗だな。あの部屋の電気がついてるとなんかほっとしたもんだけど、今はちょっと怖いな」

 薄く眉を寄せながら言うのを聞きながら、先生のことを考えた。

 あの部屋に今、いないのならいい。けれど僕が知る限り先生はあそこ以外で放課後を過ごすことはない。担任も部活も持っていないのだから、本当に、滅多に旧校舎から出てくることはないのだ。

 もしどこかで倒れていたら? いや、それならきっと誰かが見つけてくれる。もし、今、あの部屋の中で先生が倒れていたら? 怪我をしていたら? 何か身動きがとれないくらいのことが、先生の身に起きているのだとしたら?

 見慣れた背中を思い浮かべる。あの背中には僕には見ることのできない微笑み以外の何かがある。それを知ることは恐怖でしかなく、僕はいつだって目を逸らしてきた。僕は先生がこちらを振り返る瞬間がとても好きで、言いかえれば、こちらを見ない先生のことが、怖くて怖くて仕方がない。それでもあの部屋にいてくれるのならそれでいい。元気で、微笑んで、これまでと変わらずあそこで座っているのなら、もうなんだって構わないのだ。

「ちょっと、行ってくる」

 友人がきょとりとするのを横目で見て、立ち上がる。椅子の音が大きく響き、皆が僕を見てきた。僕の好きな美術部の静寂が、僕のせいでざわめきにかき消されてしまったけれど、それは今どうだってよかった。森の奥で銃声がしたのだ。鳥たちが飛び立とうと川が枯れようと、銃弾に倒れたのが先生なのかもしれないと思うと投げ出してしまいたくなる。

 先生のことが心配だった。今は、旧校舎を訪れる理由はそれだけで十分だった。



 この埃っぽさは何度味わってもなれることはないのだろう。むき出しのコンクリートの中を昨日ぶりに進み、二階の端を目指す。かろうじて夕日の光がうっすらと差し込んでいるけれど、きっとすぐにでも一寸先も分からないほど暗くなるのだろう。あの僕が暴走した日までは、これほどに暗い中ここを訪れたことはなかった。いつだって遅くなる前に先生が帰るようにと言ってくれていたからだ。それに逆らうことなど、もちろんない。先生は先生で、妖精で、戦士なのだ。反抗する理由などどこにもないのだ。

 字の消えかかった社会化準備室のプレートを見上げ、何やら音を立て始めた心臓を、息を吐き出すことで大人しくさせようとする。やはり明かりはついてない。ガラスをのぞき込んでも暗さのせいで中の様子はまったく分からない。いないのだろうか、いや、きっといる。確信に似た何かがあった。

 大きく深呼吸をし、戸に手をかける。

「先生?」

 自分の声がかすれているのが分かる。薄く開いた扉の向こうは薄暗く、埃っぽさこそないものの何かファンタジーのようなものが感じられて、いつもの明るい部屋とは違ったもののように思えてくる。

 先生はやはりそこにいた。いつもの長机の前の席、こちらに背中を向けて、いた。ただ深く深く項垂れており、おさまったはずの心臓の暴走が再発する。

 先生の背中にはかなしみが隠れている。だから僕は先生が振り返るのが好きだし、他の生徒は先生の背中を見ざるを得ないこの椅子の配置が嫌いなのだろう。もしかしたらわざとなのかもしれない。誰もこの部屋を訪れることのないように、背中を見せているのかもしれない。けれど僕は、先生と共に過ごすことを望んだ。予防線を破ってしまった僕のことを先生はどう思ったことだろう。あの微笑みだけでは、心のうちなど一つとしてわかりやしない。

 今の先生の背中には、何もなかった。かなしみも、くるしみも。

「先生」

 恐る恐る、もう一度声をかける。ゆるやかに上下する肩が先生の呼吸を僕に教えてくれていた。けれど戸を閉めてこの部屋に背を向けることは、してはならない気がしていた。

「ああ、そうか」

 ぽつりと、あの柔らかな低音が僕の耳に届いた。先生? 三度目の言葉に、ようやく項垂れた頭が起き上る。

 振り返るのを待つのはずるい気がして、いまだ背中を向けたままの先生の顔をのぞき込む。隣の校舎の灯りのみが差し込む中、夢見心地に目を細める先生の微笑みではない表情が、ぼうっと浮かび上がる。先生の口が僕の名前を形作った。ようやく僕は肩の力を抜く。

「夢を見ていたんだな。目が覚めて、ここがどこなのだかわからなくなってしまっていた」

 やっと浮かんだ笑みは、いつものものとは少し異なるようであった。幼いようだと思った。いとけない子どものような、普段のどこか警戒心の含まれたものではない表情。

「ねえ、昔話を聞いてくれはしないか」

 夢を彷徨っているままの先生は、穏やかに僕を誘う。僕は頷いて、いつもと同じ二つ隣の席に腰を下ろす。灯りはつけなかった。

美術部はそのうちに終わる時間だろう。生徒は下校時間を守って家路を辿り、先生たちは明日の授業の準備でもするのだろうか。僕はただ先生とともに椅子に座り、先生の昔語りを聞こうとしている。僕などでは想像もつかない重ねた歳の末に出来上がった物語を、聞こうとしている。ずっと逃げ続けてきた、先生の中に息づくかなしみを。

「その人はね、勤勉な人だった」



 歳は、僕より五つほど上だっただろうか。勉強と読書が趣味で、どこか女性らしさのある、柔和な笑みを浮かべる人であった。彼の家は僕の家の隣で、いつも二階の寝室で横になっていた。僕が遊びに行くと、よく来たねと本を閉じて首を傾げていた。その仕草を僕はとても好んでいて、いや、その人のことがとても好きで、僕は時間が空いたならば彼のもとへ飛んで行っていた。

 僕はせいちゃんの――ああ、その人のことはせいちゃんと呼んでいたんだ――話を聞くことも楽しみにしていた。先に言ったようにせいちゃんは博識で、まわりの大人が知らないことを簡単にそらんじて見せた。分からないことはせいちゃんに尋ねればすぐに答えが返ってきた。幼い僕にとっては神さまのような人だったんだね、きっと。毎日のように彼の家に入り浸って。それでもそのうちに学校の年の近い友人らと共に遊ぶことが楽しくなり、いつしかせいちゃんを訪ねることも少なくなっていった。

 最後に彼に会ったのは、……いつだったかな。もう記憶に残ってもいないくらい昔のことだ、何を話したのかも分からない。進学を機に家を出ることが決まって、その挨拶に行ったのは、もう何十年も前のことになる。けれどそのとき、彼には会わせてもらえなかった。体調がすぐれないからと、彼の母親が申し訳なさげに僕に頭を下げた。また帰ってきたときに顔を見せてあげてくださいねと、せいちゃんとよく似た綺麗な笑みでね。

 僕の家にはそこそこに金があったので、好きなことを長く研究し続けた。ろくに実家にも帰らず両親があきれ返るほどで、当然せいちゃんを訪ねることなど頭の片隅にもなく、何年も何年も、僕はせいちゃんに会うことはなかった。

 ようやく教師として働くことが決まったころには、両親もかなり歳をとっていた。僕は親不孝者なのだろうな、長男であるというのに好き勝手に生きて、両親にも下の兄弟らにも迷惑をかけた。家族には、今でもとても感謝をしているよ。

 とにかく職が決まり、ようやくゆっくりと実家に腰を落ち着けることと相成った。家族もほっとしたことだろう。生活に余裕ができ、ふと、お隣さんに長く顔を出していないことを思い出した。せいちゃんはどうしていることだろう。幼い頃の思い出話を、酒を酌み交わしながらするのもよいかもしれないなと、僕は久しぶりにお隣を訪ねた。

 出てきたせいちゃんの母親は、記憶よりも老けたようだった。当然だ、最後にあってから何年も経っているのだから。けれど時の流れのせいのみではないような、疲れ切ったような顔をしていたことを、今でも思いだせるよ。久方ぶりねと言った笑みは変わりなかったけれどね、せいちゃんはどうしておりますかと尋ねたときには、さすがに顔色が変わった。

 結核だったと聞いている。僕が家を出る前に訪れた際には、すでに発症していたのだそうだ。亡くなったのはそれから何年かのちで、僕が勉学に熱中していたころ。僕は幼馴染のご近所さんが命の危機に瀕しているときにも何も知らず、家にも帰らず、ただひたすらに歴史を紐解いていた。今思うと、あのころは何かに取りつかれていたのかもしれない。けれど後から悔やんだところですでにせいちゃんは骨となり土の下で腐り果てていて、あの柔和な笑みを見ることももはや叶わなかった。

 せいちゃんはどう思ったことだろうと、今でも時折思うんだよ。年下の幼馴染のことなど気にもかけていなかったかもしれない。もしかしたら、死に際に髪の毛の先程くらいならば会いたいと思ってくれたかもしれない。もう、確認することもできないけれど。



 つらつらと言葉を並べた先生は、そこまで話して口を噤んだ。横目で確認すると目を閉じて、疲れたように背もたれに体を預けている。僕は何も言わずに、視線を窓の向こうへ放り投げた。

 先生の昔話は、たいして特別というわけではないのだろう。幼馴染が病気で亡くなった。それだけだ。ただ長く会うこともなく、存在すら自分の中で希薄になって、その結果病気のことすら知らないまま死別してしまったという、それだけ。

 せいちゃんとの別れが先生にどんな影響を与えたのか、想像することしかできない。けれど、なんとなく分かる気がした。僕は先生に親近感を抱いている。僕たちはきっと、似ているのだ。

「先ほど、夢でね」

 掠れた声で呟く。年季の入った楽器のような声音は、優しくも悲しげに耳に忍び込む。

「実家の自室の窓から、隣の家を見ていたんだ。せいちゃんの部屋には灯りがついていた。本を読んでいるんだろうか、日記でも書いているんだろうか。明日こそ、会いに行ったら会えるんだろうか? そう、灯りを見ながら考える夢だった」

 先生がこちらを見る気配がした。どんな顔をしているのか気になりはしたけれど、僕はひたすらに窓の外をにらみ続けた。今先生と目を合わせたら、何もかもが見透かされてしまう気がしていた。

 君は。低い声が落ちる。

「君は、友人はいるのかい」

 問いただすような口調では決してなかった。けれど詰問のように感じてしまったのは、こちらの心情に問題があるのだろう。そういうことを聞かれるのは、好きではなかった。

 友人は、いる。休憩時間に隣近所と雑談くらいするし、昼休憩にはいつも一緒に食事をとる相手もいる。部活仲間の彼だって二年連続で同じクラスだし、休日に連れ立って出かけたりもする。彼らは間違いなく友人と呼べる相手だろう。彼らも僕もきっと周りの人も、そう思っている。

 一人一人の顔を思い浮かべた。笑ってる奴、変顔が得意な奴、口が達者な奴。けれどどれも、靄がかかっていて僕には判別できない。

「いますよ、友人」

 少し笑いが混ざった声で告げた。先生は何も言わず、じっと僕を見ている。

「友人です。彼らの名前を、僕は知りませんけど」

 たまに、自分のことをとても恐ろしく感じることがある。友人と話しているとき、笑い合っているとき、遊ぶ約束をしているとき。僕は僕のことが恐ろしくて恐ろしくてたまらなくなる。

 他人に興味なんてない。誰だってただそこにいるだけの人で、隣に座るクラスメイトも、年に数回も行かない病院の受け付けの人も、テレビの向こうの芸能人だって、僕にとっては同列の存在でしかない。誰にも一生懸命になれなかった。誰かのことを特別に思うことなんてできないまま、ここまできてしまった。そう望んだわけではなかったはずなのに、物心がついたときから今まで、ずっと。

 僕は僕が恐ろしい。誰にも興味を持てないこともそうだけれど、そのことを受け入れたうえで平然と普通の人間の仮面をかぶって生活をしていることが恐ろしい。友人らの名前も知らないくせに、声をかけられなければ顔の見分けもつかないくせに、なんでもないような顔をして話をし笑いあえる、自分のことが。

 今日、先生の話を聞いて確信した。僕と先生は同じだ。

 幼馴染だったのに、せいちゃんが死ぬまで思い出すことすらしなかった先生。友人であるのに、相手の名前を呼ぶこともできない僕。他人にたいして無関心であるところ、そして、それを不快に思っているところ。僕たちが、同じなのだ。

 先生はきっと絶望したことだろう。わざわざ明かされなかったとはいえ、せいちゃんの病気のことを知らなかったこと。自分はどんなにか薄情で恩知らずで厚顔な人間であるのかと、自分を攻め立てただろう。それでも他人に寄り添いきることはできず、人との温度差を感じる度に苦しんだのだろう。僕がそうであるように。

 視線を窓から逸らした。先生のほうを見るけれど。すっかり日が落ち切り電気もつけていない室内では表情は分かりかねる。そのほうがよかった。先生が僕をどんな目で見ているのか、同じだからこそ知りたくなかった。

「先生、こわいんです、僕。ずっとこうなんでしょうか。誰にも関心を持たないまま、誰の名前も顔も覚えることもなく、ずっと歳をとっていくんでしょうか。ずっと一人なんでしょうか。僕は」

 先生のようになるんでしょうか。

 その一言は口にすることができなかった。先生の人生を否定することになると思ったからだ。けれど本当に、そう感じていた。

 僕が自ら先生に近づいたのは似た匂いを感じたからだ。この人のそばにいれば楽に呼吸ができるのかもしれない。そう思った。はたして予感は的中し、互いに干渉することのない、そしてそれをよしとする空間は居心地がとてもよかった。だから僕は先生のもとを訪れた。だんだんと先生の声を聞くことが、目を見ることが、笑顔を向けられることが心地よくなって、僕はたぶんはじめて、他人に好意を持った。

 けれど僕たちは同じような人間だから。僕がいくら先生に親近感を抱いたところで、先生はそうではない。先生が他人を受け入れるかは、僕をその他の人間と区別し受け入れてくれるかは、また別の話で。

 いつしか僕は、先生のことも怖く感じるようになっていった。

 年をとっても一人で、受け持った生徒から慕われてもそれを受け流し、ずっと、ずっと一人で。あのいつかの夜。誰も寄せ付けないような先生の背中を目にしたとき、この人が誰かを受容することは一生ないのではないのかと、僕は激しく予感した。そして、僕もこうなるのだろうかと想像して、とてつもない孤独感に襲われたのだった。

 それは嫌だと、漠然と思った。先生のことを怖いと、そう思った。

 ぼんやりと見える月は、今日は満月であるようだった。うっすらと照らされた先生の表情は、無に近い。いつもの微笑みもなく、かといって怒っている様子でもなく。

 無。僕が先生以外の他人に抱いているもの。先生が、僕に抱いているだろうもの。

「授業が、教科書を読むだけなのは、生徒を当てたり交流をする気がないからだ。課題が多いのは、そうしないと成績をつけることができないくらい生徒のことを何一つ覚えていないからだ。そして、こういった教師は多くの場合好かれることはないと、僕は知っている」

 頷く。察していた。出来得る限り人とかかわることがなくても大丈夫なように、学校での先生は行動を徹底していた。角をたてることなく、けれど人気を得るでもなく。あえてそうしているのだと、僕は知っていた。

 薄く微笑んで先生がこちらを見る。僕はきゅうと唇を噛んでその視線を受け止める。

「こういった生き方もある。決して悲観することはないよ。他人に好かれなくてはいけないとか、向けられた好意には同じだけ返さなくてはならないとか、そんな法律はないのだから。でも君はきっと、そうやって僕のような大人になるのが、嫌なんだろうね。だったら足掻くといい。いつか、君にだけの特別が見つかるかもしれない。君は若いしね」

 そうだ、それが先生であればと、僕は願ったのだ。けれど、あなたが僕の特別だったんだなんて、言えやしなかった。先生は僕からすうっと視線を逸らして、ぽつりと呟きを落とした。

「僕はもう、足掻くことにも疲れてしまったけれど」

 低い言葉に、僕もまた先生を見続けることができなくなった。窓の外を、ぎらぎらと夜を照らす満月の欠片を見るだけの生物になった。

 部屋には悲しみが満ちている。先生がこの何十年積み重ねてきた、孤独、苦悩、恐怖。歳の数だけ降り積もったそれらに、僕は息の仕方も忘れてしまいそうになる。

 しばらくの間、僕たちは無言で窓を見た。先生の目には、届くことのなかったせいちゃんの部屋の窓が映っているのかもしれない。僕の視界には、いつまでもいつまでも、先生のいる旧校舎の窓が、暗く暗く佇むのみだった。




 翌日、僕は部活仲間の友人の席の前に立った。

「これ」

「なんだよ。……電話番号?」

「そう。登録しといて」

「それはいいけど、変な奴だな。今まではアドレスだけあればいいからって、教えてくれなかったのに」

「うん、まあね。ちょっと今、リハビリ中なんだ」

「はあ?」

「それで放課後部活に行こう。リハビリだから」

「……はあ?」

 友人は、露骨になんだそれという顔をしていた。変な顔。思わず噴き出した瞬間、普段よりピントが合った気がしてはっとする。そっか、彼ってこんな顔なんだな。明日まで覚えていられるかな。

 代わり、だなんて言葉は使いたくないけれど、それに違いなかった。彼は現状、先生の代替品。僕を特別にしてはくれなかった先生の代わりに、僕は友人と関係を築こうとする。紛れもない、先生のようにならないために。一生覚えていられる名前と顔を探すんだ。先生とせいちゃんのような終わりを迎えないために、背中に背負うかなしみを少しでも減らせるように。

 自覚はしてる。こんなの、先生に対しても友人に対しても失礼だ。僕は酷い奴だ。

 でもたぶん、こういった生き方もある。

 そうでしょう?

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