学園のマドンナ
俺の通っている学校には、学園のマドンナと呼ばれている女子生徒がいる。
「須藤さん、おはよう!」
「おはよう、今日も早いね。」
「やった!私、須藤さんにおはようって言って貰えた!マジで嬉しい!」
それが彼女、須藤絵里香だ。
絵里香は、誰とでも平等に接するため、生徒だけでなく、教師からも気に入られている。また、成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗、家においては家事万能と、大抵の事はなんでもこなすため、男女問わず、常に注目の的だ。そんな絵里香を彼女にしたい男子は連日のように告白しており、その数は計り知れないという。
しかし、彼女はその全てを断っている。それが何故なのかは誰にも分からなかったが、俺だけは知っていた。それは──────────
「お願い!私と付き合ってください!」
「無理だ」
「酷くない!?ずっと好きだったのに!」
絵里香はずっと、俺こと海堂修哉のことが好きだったからだ。実際、俺は何度も彼女に告白されたきたし、今もこうして屋上で告白されている。
だが、いくら告白されても、俺は彼女と付き合うつもりはない。なぜなら、俺にとってはなんのメリットもない。いや、むしろデメリットしかないだろう。
「私、勉強も運動もできて、こんなに可愛いのに……。そんなに私に魅力がないの?」
自分で可愛いとか言ってる時点で無理だと思うが、敢えて言わないでおいた。
「なんでそんなに俺と付き合いたいんだよ。っていうか、俺のどこが好きなんだよ。」
はっきり言って、俺は女子に好かれる要素は1つもない。成績は平均以下、運動音痴、加えて陰キャとコミュ障。こんな俺のことがなぜ好きなのか、全く理解出来ない。
「そんなの、修哉と付き合いたいからに決まってるじゃん!私は修哉の事が好きなんだもん!」
まるで某政治家のようなセリフを言った彼女の顔は、赤くなっていた。どうやら本当に付き合いたいらしい。というか、
「何度も言うが、俺は絶対に付き合わない」
「酷くない!?それが彼女に言うセリフなの!?」
そういった彼女の目は、大粒の涙で溢れていた。というか、俺はお前の彼女じゃないだろ。
「悪いが俺の事は諦めてくれ。お前にはもっといい相手がいるぞ。」
そう言って屋上から出ようとした俺に向かって、絵里香は叫んだ。
「私、絶対諦めない!絶対に、ぜぇぇぇぇったいに、修哉の事、惚れさせてやるんだから!!」
この後、俺は彼女から猛烈にアタックされる事になるのだが、この時の俺は知る由もなかった。