第1話 篠山仁、初詣に行く。
2019/08/09執筆
「……人多いな」
正月気分を味わいたくて初詣に来たけどこれはどうだろうか。地獄じゃないだろうか?
周りには1人で来てる人はいない。寂しい。
朝、太陽が登ってるといっても冬は冬。寒い。
そして何より1番嫌なのはクラスの奴らがすぐ後ろにいてなんかからかわれてることだ。『1人でなんで来てるの?ww』だって?友達いないからに決まってるだろ!察しろ!
……帰ろうかな?
そう思い振り返った時だった。
「あれ、どうしたの?帰っちゃうの?」
「え?」
「せっかくみんなの分の甘酒貰ってきたのに……。暖まるし美味しいじゃん?」
「おぉ、藤原さん気が利くねーっ!俺の心もあったまりそうーっ!!」
「あんたら鼻の下伸ばしてんなよ!」
「の、伸ばしてねーしっ!」
「小春は私達のなんだからね」
「あはは……。」
「よし、俺ら付き合っちゃおうよ」
「なっ!おまっ、何抜けがけしてんだよw」
「そうそう、鏡みて言いなさい。」
「おまっ、傷つくこというなよw」
……このノリ嫌いだな。
いかにも俺達リア充ですアピールっぽくて。
「はい、篠山くん……だよね?甘酒……暖まるからさ、もう少し待っていよ?」
「…………ありがとう………ございます」
「ふふっ、どーいたしまして!」
………美味しい。
それになんか暖まる。
藤原小春。
クラスの女の子で、クラス中……、いや、たぶん学年で1番人気がある子だろう。
コミュニケーション能力が高く男女を問わず好かれる。その事を鼻にかけるわけでもなく気配りが出来、友達想い。
まるでマンガの中のメインヒロインが似合う人だ。
「…………。」
甘酒を貰ってからはリア充グループに話しかけられることもなく俺は淡々とどの巫女さんが1番可愛いかなとか、どの着物女子が可愛いかなとか、そんなことを考えながら順番を待っていた。
そして自分の願いを神に願ってリア充グループにぺこりと軽く会釈して帰路に戻った。
俺の人生の分岐点はたぶんその帰路の途中だった。
歩いていると弱々しい鳴き声が聞こえてきた。
ニャ〜…ミャ〜……。
どうやら子猫が木に登って降りれなくなったらしい。
「………降りられなくなったんだな」
「ミャ………ミャァ〜…………」
「………分かったよ。助けてあげる」
母さんがいってた。超能力は自分のことはもちろんとして、人のために使うべきだと。
まぁ、猫だけど。
俺は猫をゆっくりと宙に浮かせる。
「ニャァァァァァァァアーっ!!」
いや、じっとしてて。気持ちは分かる!驚くのもわかるけど落ち着いて!?暴れないで!?
そして猫を俺の方へとゆっくり移動させる。
抱くようにキャッチしてゆっくりと地面に下ろしてあげた。
「ははっ、もう木に登って降りられないなんてこと繰り返すなよ」
少しこちらを見つめるとその子猫は向こうの方へと駆けて行った。
「さて、俺も帰ろうかな。あ、でもその前にコンビニで……………へ?」
「あっ、………篠山……くん……。今からみんなでご飯行こうと思っててそれでその……」
やばいっ!!
今の見られたのか!?
「あの……篠山くんも誘ってみようかなって思って……追いかけてきたの……。一緒にご飯行かない……かな?」
………あれ?
もしかしてこれはバレてない?
……なんだよ。びっくりさせないで……
「……いや、大丈夫です。家にご飯用意されてるんで……」
よし、これ以上関わるのは面倒くさいしさっさと家に帰って……
「そっか……。残念だなぁ。あっ、それとね!」
「うん?」
「これって……超能力……だよね?」
「ふぁ!?」
そういうと彼女はスマホの画面をこちらに向け、再生ボタンを押した。
「最初猫を助けると思って動画撮ったんだけど………まさか……こうなるとは……ね?」
見られてた。
次回
【第2話】藤原小春は見た!