第四話 変化
ある日の昼下がり。私たちはショッピングモールに来ていた。買い溜めしておいた日用品が底をついてしまったのだ。
散歩がてらぶらぶら歩きながらここに来てもう二時間になる。
「結構買ったね、重くない?」
トイレットペーパーや洗剤、今夜の晩御飯の材料など、買ったもの全て涼が持ってくれている。
私は持ってきた自分の鞄だけ。なんだか申し訳なくなる。
「これくらい大丈夫だよ。唯こそ歩き疲れてない?」
「大丈夫だよ、でも少し休憩しよう。さっきおいしそうなジュース屋さんがあったの、何か買ってくるね。」
涼にベンチに座って待っててとお願いし、さっき見つけたジュース屋さんに向かう。
タイミングがよかったようでお客さんは少ない。いろんな種類がある。
―涼はなにがいいかな、聞いてくるのを忘れちゃった。
涼の好きそうな味を探していると
「あれ?唯ちゃん?」
「ん?あっ、栂野さん。こんにちば。」
声のする方に視線を向けると、そこには栂野さんがいた。
「こんにちは、偶然だね。お買い物?」
「はい、栂野さんもお買い物ですか?」
よく見れば栂野さんは私服だった。白衣姿はよく見ていたが私服を見るのは初めてで少し緊張する。
「少し野暮用でね。それより唯ちゃん、だいぶ元気になったね。安心したよ。困ったことはない?」
お父さんが死んだとき栂野さんには本当にお世話になった。
大丈夫だと伝えると栂野さんはほっとしたような表情を浮かべた。
「そうだ、唯ちゃんに聞きたいことがあったんだ、少しいいかな?」
涼を待たせているので早く戻りたいが相手は栂野さん、嫌とは言えない。
「連れを待たせているのでゆっくりはできませんが…どうされたんですか?」
「お父さんの持ち物の中にプロジェクトの資料とかなかったかな?必要なんだけど見つからなくて。先生が 持っていたのは間違いないんだ。」
「…ごめんなさい、父の遺品にはまだ手を付けていなくて…。どんな資料ですか?そろそろやらなきゃと思っ ていたから、探しておきますよ。」
「機密事項の資料でね。確か黒い封筒の中に入っていたと思うんだ。見つけたら中身は見ずに俺に預けても らえるか?それか、俺も遺品整理を手伝おうか。」
中身を見るなと言われたら見たい気もするが、どうせ見てもわからないし興味もない。
「いえ、遺品の整理は私一人でやります。黒い封筒、見つけたらお渡ししますね。」
「頼むよ、あれがないと困るんだ。」
なぜか背筋がぞっとした。栂野さんの表情が一瞬氷のように冷たくなった気がした。
だがすぐ元の笑顔に戻り
「引き留めてごめんね、買い物楽しんで。」
そう言って栂野さんは人込みに消えて行った。
しばらく後ろ姿を見ていたのだが、突然後ろから腕を掴まれ驚いて振り返る。
そこにいたのは少し怒ったような表情を浮かべた涼だった。
「遅いからどうしたのかと。さっきの男は誰?」
掴まれた腕に力が入り少し痛い。
「ごめんね、あの人は栂野さんって言ってお父さんの助手をしてくれた人だよ。たまたま会って少し話をし てたの。お父さんが持っていた資料が欲しいんだって。それを探してほしいって頼まれたんだ。」
そう言うと彼は少しほっとした表情を浮かべた。気がした。
「そうか。…帰ろう、晩御飯の準備もしないと。」
そう言うと今度は私の手を取り歩き出した。たくさん荷物を持っているのにしんどくないのだろうか。
「そうだね。あの、手…」
「離れないように。だめか?」
男性、と言っても涼はアンドロイドだが、手をつないだことのない私は免疫がないので少し照れてしまう。嫌じゃない、むしろ安心する。
「ううん、嫌じゃない。」
恥ずかしいので下を向きながら手を握り返す。すると涼は立ち止まり私の方を見てくる。
眉間にしわをよせ、なんだか苦しそう。
「どうしたの?どっか痛い?」
なにか不具合でも起きたのだろうか。心配になって彼の頬をあいてる手で触れる。
「…システムに異常が検知されたんだ。でも大丈夫、すぐ直るよ。」
「本当?無理しないで言ってね?何かあってからじゃ遅いから。」
「わかってる。大丈夫だよ。」
涼は握っている手にきゅっと力を込めた。私もそれに応えるように握り返し、ゆっくりと帰路についた。
次の日、私はお父さんの書斎にいた。遺品を整理するためだ。
栂野さんには一人ですると言ったが、涼に手伝ってもらうことにした。一人でするのはいろいろ思い出して辛いから。
手分けして遺品整理に取り掛かった。
涼がいてくれるからなのか、落ち着いた気持ちのまま、順調に整理が進む。
半分くらい進んだところで一冊の本を見つけた。中を見るとそれはアルバムだった。私の小さい頃の写真。
「それ、唯?」
いつの間に隣に来ていたのだろう。涼はアルバムの中で魚を持って笑っている私を指さす。
「そうだよ、小学校くらいの時かな。お父さんと海に釣りをしに行った時のだと思う。お父さんが釣り好き でね、いつの間にか私も釣りが好きになっちゃって。」
遺品整理を中断し、二人でアルバムを見る。
何ページ目かをめくるとお父さんと二人で撮った写真が出てきた。
写真の中の私たちは楽しそうに笑ってこちらを見ている。
ダメだ、順調に進んでいたのにこんなのを見てしまったら。お父さんを思い出し、視界がぼやける。アルバムを閉じ、目も閉じる。
泣くな、泣くなと自分に言い聞かせる。
「…唯。」
いつもなら、「何?」って答えるけど今は無理だ。
必死に涙をこらえていると突然暖かい何かに包まれた。驚いて目を開けると、私は涼に抱きしめられていた。
内心パニックになっていたが、あまりにも涼が暖かくて、ついにこらえきれなかった涙が落ちた。
「我慢しなくていいよ。大丈夫。」
優しい声で言われると次々と涙が流れる。小さい子どものようにわんわん泣いた。
落ち着くまで涼は何も言わず、ただ私を抱きしめていてくれた。
「落ち着いた?」
どのくらいたったのだろう、ようやく涙もとまり気持ちも落ち着いてきた。大丈夫。
「うん。ごめんね、ありがと。」
そういって涼から離れる。ぬくもりがなくなり、自分から離れたのに少し寂しく感じる。
「今日はやめようか、リビング戻る?」
「ううん、きっと今やめたらしばらくしないと思うから、もう少し頑張る。顔洗ってくるね。」
洗面所へと向かう私を涼は悲し気に見つめていたのを私は知らなかった。
洗面所で顔を洗う。鏡に写るひどい顔、でもなんだかすっきりした。もうひと踏ん張り。頬を両手でぱちんと叩き気合をいれ書斎に戻った。
「こんなものかな。」
あれからゆっくりではあるが整理を続け、ようやく終わりが見えてきた。
「あとはあそこだな。」
涼が指さした先には資料のビルが立ち並んだ机。この部屋で一番大変そうなところだ。ラスボス感が漂っている。
意を決して机の整理にかかる。涼も手伝ってくれているが中々手ごわい。
それでも何とか進めて、もうすぐ終わると思った時だった。
資料を取ろうと机に足をかけてを伸ばした瞬間バランスを崩し、机から落ちてしまった。
高さはそんなになかったので何ともなかったのだが、振動で資料のビルが崩壊し、束になった紙が私の上に落ちようとしていた。
とっさのことで反応できなかった私は痛みを覚悟し目をぎゅっと閉じた。
しかしいつまでも痛みは襲ってこない、代わりにさっき感じたぬくもりを再び感じ、バサバサと言う紙が落ちる音。恐る恐る目を開けると目の前に涼の顔があった。
どうやら間一髪のところで涼がかばってくれたようだ。
やばい、この体制は。涼に押し倒されているよう。ドキドキしてしまう。顔が熱くなるのを感じた。
涼はゆっくり体を起こすと次に私の手を引っ張り起こしてくれた。
「大丈夫か?」
「うん、涼は怪我してない?!痛いところとか…」
…もっと注意していればよかった。後悔で心が潰されそうになる。
「大丈夫、怪我も痛いところもない。だからそんな顔しないで。」
涼は笑って私の頭を撫でた。
「ありがと、かばってくれて。」
いまだに私の頭を撫で続ける涼にお礼を言うと、涼は頭に手を置いたまま固まってしまった。
やっぱりどこか痛むのではないか、心配になって名前を呼ぶ。
「…いや大丈夫だ。」
何か隠している気がするが、大丈夫と言われた以上、深くは聞けない。
「今日はおしまいにしよ!疲れちゃった。」
未だに何かを考えている涼の手を取りリビングに戻る。
―さっきの涼かっこよかったな。
先程の事を思い出しまた顔が熱くなる、涼が後ろにいてよかった。
そういえば、栂野さんが言っていた資料見つからなかったな。一応栂野さんにメールを打っておく。
【この間話していた資料、いつも資料が置いてあるところを整理しながら探したんですが、見つかりませんでした。資料はいつも決まったところに保管しているので、一応他のところも探してはみますが、おそらくここにはないと思います。】
メールを送信し、ふと時計を見ると18時30分過ぎを指していた。
「いけない、晩御飯、なんにもしてない。」
しまった、時間を全然見ていなかった。
―冷蔵庫になにかあったかな
簡単にできるものがあったらそれでいいかと思ったのだが。
「なんなら食べに行く?前気になるって言ってたお店。」
「行く!」
涼から魅力的なお誘い。
腫れた目は上手く化粧でごまかしていざ出発。
この前散歩途中に見つけた小さなイタリアンのお店。
混んでいるかと思いきや、平日だからか、待たずに入れた。
「おいしかったね!」
「たくさん食べたな。」
期待通り、雰囲気よし、料理の味よし。つい食べ過ぎてしまった。
私のお気に入りレストランにまた一つ追加された。
これが美味しかった、今度はあれが食べたいと話しながら歩いていると、向こうからやってきたランニング途中の男性が財布を落とした。でも男性は気づかずにそのまま走り去っていく。
「ちょっと待ってて、すぐ戻る。」
そういうと涼は財布を拾い男性を追いかけて行ってしまった。
私の行ってらっしゃいはきっと聞こえなかっただろう。
静かな夜の街。車通りも少なく少し不安になる。
―早く帰ってこないかな。
そんなことを考えていると突然後ろから羽交い絞めにされた。
「なにっ?!」
抵抗もむなしく路地裏に連れていかれた。二人、いや三人いる。
路地裏の奥まで連れていかれるとぽいっと投げ飛ばされる。盛大にコケた。痛い。
「なんなのよ、あんたたち!」
恐怖心を必死に隠し威嚇する。
「あんた、柊だろ?発明家の娘。お金持ちなんでしょ?俺らにお金分けてほしいんだー。」
何を言っているんだ、こいつらは。
「お金持ってません。帰してください。」
「嘘ついてもだめ。知ってるよ?遺産がっぽりなんでしょ?」
「持ってないものは持ってません。」
怖がっているところを見せちゃダメだ。震える声を何とか抑える。
なんとかしてここから逃げなければ。
「チッ。痛い目見ないとわからない?」
男はそういうと私の胸倉をつかみ右手を振り上げた。
―殴られる。
鈍い音と共に左頬に痛みが走る。本気で殴られた。歯が折れたらどうするんだ。
「どうだ、金出す気になったか?」
にやにやしながら見下ろしてくる男。
「…嫌だ。誰があんたなんかに払うか。」
もうどうにでもなれ。イラついた表情を浮かべた男はもう一度右手を振り上げた。
―涼、助けて…
また襲ってくるであろう痛みに耐えるためぐっと歯を食いしばる。
バキッ。
鈍い音がした。でも痛みはない。胸倉をつかんでいた手が離れた。
なにがあったのかと目を開くとそこには一番会いたかった人。
「…涼。」
涼が一人の男を殴ったのだ。私を殴った男は少し離れたところで口から血を流し倒れていた。
「次は誰だ。」
聞いたことのないドスのきいた声が耳に入ってくる。涼の顔を見ると、今まで見たことがないほど怒った顔をしていた。
思わず息をのむ。
「邪魔すんなっ!」
後ろから涼を殴ろうとするもう一人の男。
「涼!危ない!」
その声に反応するかのように素早く避け相手の頬にパンチを入れた。
そしてすぐお腹にも一発。早い。男は倒れてしまった。
「お前、これが見えないのか!」
残った男はナイフを持っていた。さすがにまずい。
「涼、逃げて!」
だが涼は逃げることなくその場に立ったまま。ナイフが涼を刺そうとする。
「涼!」
もう一度名前を呼ぶとちらりとこちらを向いた。
涼は寸のところでナイフを受け流し容赦なく顔面を殴った。鼻血を流しながら倒れる。
それを見届けた涼は最初にダウンさせた男の元に向かった。
なんだか嫌な予感がする。
涼は男の胸倉を乱暴につかんだ。
「助けてくれ、悪かった。」
そんな声を無視して涼は男を殴った。ちらりと見えた彼の顔を見た瞬間、背筋が凍った。
その顔はまるで、まるで
戦うことを楽しんでいるかのようだった。
男を殴り続ける涼。男を見ると顔のいたるところから血を流していた。このままでは殺してしまうのではないか。そんなことしてほしくない。
「涼!もうやめて!」
涼はちらりとこちらを見たが私の声なんて聞こえていなかったかのように男に向き直り拳をふりあげた。
私の言うことはいつも聞いてくれていたのに。どうすればいい。
必死に頭を働かせる。声が届かないなら…痛む体を引きずりながら涼に後ろから抱き着いた。
「お願い、もうやめて。この人死んじゃう。」
必死の呼びかけにようやく殴る手を止めてくれた。涼と目が合う。
さっきまで狂犬のような顔をしていたのに今は迷子の子犬のような目で私を見ている。
「…帰ろ。」
意識を取り戻した二人の男がもう一人の男を引きずりながら逃げていくのを見た私は涼の手を取り、ゆっくりと歩きだす。
すると涼は私の前に回り込むと目の前でしゃがんだ。
「乗って。」
「大丈夫、歩けるよ。」
「いいから、乗って。」
私が折れるまできっとこのままだ。観念して背中に失礼する。
しっかり乗ったことを確認するとゆっくりと歩きだした。
家に帰るまで私たちは一言も話さなかった。
家に帰るとソファに座らされた。次に涼が持ってきたのは救急箱。手当をしてくれるらしい。
殴られてできた傷に消毒液がしみ込んだコットンを優しく当てられる。
そのとき涼の指先が顔に触れて少し緊張する。手際よく手当てが行われ、あっという間に終了した。
「ありがとう、助けてくれて。」
お礼を言っていなかったことに気づき、救急箱を片付けている涼の背中に投げかける。
すると手を止めゆっくりとこちらを振り返った。目は合わない。
どうして無言のままなのだろう、家に帰ってからもずっと涼は一言も話さない。
迷惑かけて嫌われたかな。不安になり涼から目線を外す。
涼は一つため息をつくと私の前に来て膝をつき目線を合わせてきた。
ゆっくりと涼の顔を見る。どこか悲しそうな顔をしている。
―そんな顔しないで
ゆっくりと涼に手を伸ばす。もう少しで触れられると思った瞬間手を掴まれ引っ張られる。
予想していなかった出来事に体は反応せず、ソファから落ちすっぽりと涼の腕の中におさまった。
「…無事でよかった、本当に。一人にしてごめん。」
ようやく話してくれたと思ったら、彼の口から出た言葉は後悔と謝罪だった。
抱きしめられているので彼がどんな顔をしているかはわからない。
「涼は悪くない、私がもっと気を付けていればよかった。助けに来てくれてありがとう、あのままだったら…。」
涼が来なかったら今頃どうなっていたことか。想像するだけで体が震える。
それに気づいた涼は腕の力を強めさらに抱きしめてきた。
「涼に怪我がなくてよかった。」
涼が無事なことにほっとしていると、少し腕の力が弱まり、お互いの顔が見えるようになった。
「ごめん。」
この謝罪は何に対してだろう。わからなくて頭に❔を浮かべていると涼はゆっくりと口を開いた。
「さっき唯の言うことに従わなかった。」
「そんなこと。怒ってないから大丈夫。気にもしてない。まぁ確かにびっくりしたし、少し怖かったけど…」
いつもの涼ではなく、全くの別人に見えてしまい、少し怖かったのは事実だ。
「僕はプログラムに逆らった、アンドロイド失格だ。」
あからさまに落ち込んでしまった。なんて声をかけようか考えていると、一つの疑問が浮かんできた。
「ねぇ、涼はプログラムされていることに逆らえないって言っていたよね?」
涼は前にそう言っていた。プログラムされていることにはどんなことだろうが従うと。
それなのにどうして。
「わからない、こんなこと初めてなんだ。あの時は必死で。唯を守らないとって思ったら、目の前に出てく るプログラムを破壊していた。」
ちょっと待って、それってつまり自我が芽生えつつあるのではないか?
涼は私を守るために自分の意志でプログラムに逆らったということか。
そのことを伝えると彼は驚いた顔をした。
「僕が…?」
「私もよくわからないけど、プログラムに逆らって行動を起こしたってことはそういうことになるんじゃな い?」
実際はもっと複雑なことなのだろうか。よくわからない、でも私はそう考えた。
「どうすればいいんだ…」
そういうと涼は頭を抱えてしまった。
「私は嬉しいけどなぁ。」
素直にそう思った。涼は驚いている。なんだか今日はいろんな表情を見ている気がする。
「自我が芽生えて、感情が生まれるって素敵じゃない?」
「アンドロイドのくせにとか、変とか思わないの?」
「思う訳ないじゃん。むしろいいことだと思う。」
不安を少しでも和らげたくて大丈夫って笑って見せた。
すると少し考えた後また私を抱きしめてきた。なんだか甘えたの子どもみたいで少しかわいい。
頭を撫でてやる。
「…怖かったんだ、唯が殴られたとき。死んでしまうんじゃないかって。」
涼が感情を露わにしたのは初めてだった。その変化に不謹慎だが少しうれしくなった。
「ごめんね、心配かけて。涼って強いんだね、びくりした。」
本当に強かった。もしかして格闘のプログラムでも入っているのだろうか。
「かっこよかった。」
そう言って笑うと困った顔をしながらも涼も笑ってくれた。
「…ねぇ涼。一つ聞いてもいい?」
「もちろん、何?」
抱き合っていた体を離し、彼の目を見る。この質問をしてもいいのだろうか。でもはっきりさせなきゃ。
これからの事を考えるなら。深呼吸をひとつしてゆっくりと口を開く。
「プログラムがなくなったでしょ、これからはどんなことでも自分の意志で行動できる。これから涼はどうしたい?」
せっかく自我が芽生えたんだ、私に縛られず、本人のやりたいようにしてもらおうと思った。
どんな結果であれ、受け止めようと。
「…僕は離れたくないよ、唯と。最初はプログラムされているからって一緒にいたけど、今は違う。僕の意志で、唯のそばにいたいと思っている。」
その言葉を聞いて思わず涼に抱き着いてしまった。涼はしっかり受け止めてくれた。
「唯こそ、こんな僕になったけど一緒にいてくれる?」
気づかぬうちに頬に伝っていた涙を拭ってくれた涼は少し嬉しそうな、でもどこか不安そうな顔で聞いてきた。
「当たり前!ずっとそばにいる!」
とびきりの笑顔でそう答えまたぎゅっと抱き着いた。涼も嬉しそうに抱き返してくれた。
怖い目に合ったけど、そのおかげで涼ともっと仲良くなれた。
口には出さないけど、あの男たちに少し感謝した。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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