表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
父からの最期の贈り物  作者: 葵音
3/9

第三話 心のモヤモヤ


不思議な出会いから数週間。家の中の説明や使ってもらう部屋の掃除、涼の服や必要なものの買い出しとやることはたくさんあった。

この数日で大きく変わったことと言えば、

「涼、そろそろ洗濯物乾く頃だから、取り込んで畳んでおいてもらえる?」


お互い敬語をやめ、名前も呼び捨てで呼ぶことにした。

家族なのだから敬語やさん付けは必要ないと思ったからだ。


そしてわかったことがいくつか。


「それならもうしておいたよ。タンスに入れてある。」


 一つ目は涼は仕事が早いということ。ほとんどの事はてきぱきこなしてしまう。私にとってはすごくありがたいことだ。おかげで家事の負担もかなり減った。


「ありがと、じゃあご飯にしよっか。」


二つ目は、涼は食事をとるということ。人間同様食べたものを燃やしエネルギーに変えるのだそう。

文字通り燃やすので汚い話、トイレなどは必要ないらしい。なのでいつも一緒に食事をとる。


そして三つ目。

涼には自我がない。自分の意見を言ったり、自分で考えて行動したりするが、私が命令をするとどんなことでも必ずそれに従う。私はなんだかそれが嫌だった。


「…大丈夫か?ぼーっとして。」


気づけば涼がこちらをじっと見つめていた。


「ううん、少し考え事してただけ、大丈夫だよ。」

「悩み事?どうした?」


聞いてもいいのだろうか、でもこのままモヤモヤするのは嫌だった。意を決して口を開く。


「涼はさ、私の言うことはどんなことでもするでしょ、どうして?」

「どうしてってそうプログラムされているからだよ。」


当たり前だとでも言うような顔でそう返事をした。


「嫌なことは嫌だって言っていいんだよ?全部に従わなくったって。」

「そういうわけにはいかない、僕はアンドロイド。プログラムには逆らえない。」


プログラムと言うのは複雑そうだ。でもそれをどうこうする技術は私にはない。


「じゃあ涼はプログラムされていることなら何でもやるの?私のそばにいてくれるのもプログラムされているから?」

 何気なく聞いてしまった。すぐに後悔した。


「そうだな。僕には唯のそばにいるようにプログラムされている。」


心が冷たくなるのを感じた。彼は彼の意志で私の隣にいてくれているのではない、お父さんにそうプログラムされているからそばにいるだけ。

その事実が悲しくて、そっかと一言返し味のしなくなったご飯を無理やり飲み込んだ。

ご飯を食べた後私は涼を避けるように自室にこもった。


―気まずい感じになっちゃったな。涼は気にしてないかな。


プログラムがあるから涼は私のそばにいる。もしそれがなくなったら涼は私から離れていくのだろうか。

また一人ぼっちになるのだろうか。少し悪い方に考えると妄想は止まらず、どんどん悪い考えが浮かんでくる。


「あぁ、もう。」


心がモヤモヤして机に額をぶつける。


「うっ!」


ゴンっという鈍い音と共に額に鈍い痛みが走る。思ったより痛くて思わずのけぞり額をおさえる。

するとのけぞりすぎたのか椅子の前足が宙に浮いた。


「痛った!」


ガツンと大きな音をたて椅子ごと後ろにコケた。後頭部が痛い、たんこぶができていそうだ。

痛む頭をおさえていると、バタバタと誰かが走ってくる音が聞こえてきた。

そして勢いよく扉が開いた。


「どうした?!大丈夫か?!」


 焦ったように入ってきたのは涼だった。いや、涼以外の誰かが入ってきたらそれはそれでやばいのだが。


「ごめん、椅子ごとひっくり返っちゃって。」

「けがはないか?」


涼は私の手を引っ張り起こしてくれ、私の頬を大きな手で包みながら怪我の確認をしてくれた。


―今の、本当に心配してくれたのかな。


涼が行うことは全てプログラムによって行われている。わかっているのだが、今、本当に心配そうな顔で聞いてくるものだから。

なんだかプログラムだとか、もうどうでもよくなった。涼がいてくれて、プログラムの一環だとしても心配してくれている。それで充分じゃないか。我ながら単純である。


「…ごめんね。」

「けががないならいいんだ。気を付けて。」


そういうと彼は少しだけ私から離れた。

うじうじしていても仕方ない。モヤモヤはまだ残っているけど、気にしすぎて涼とギスギスするのは嫌だ。せっかくそばにいてくれるのだからその時間を大切にしないと。

いつか涼が自分の意志で私のそばにいてくれたらいいな。彼の顔を見ながらそう思った。

気持ちを切り替えるため自分で自分の頬を両手で叩く。ぺちんといい音がした。


「何してるんだ?」

「気合い入れたの!もう平気。ごめんね。リビング行こ、コーヒー飲みたい。」


もう一度謝り彼の手を引きリビングに戻った。涼は何も言わずに私の手を握り返してくれた。

後ろで彼の様子が少しおかしかったのを私は知らなかった。

 





ここまで読んでいただきありがとうございました。

次回は涼に変化が…?

続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ