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父からの最期の贈り物  作者: 葵音
1/9

第一話 父との別れ

初投稿です。

小説を書いてみたいと思いペンを手に取りました。実際使っているのはほぼパソコンですが…

小説を書くのはこれが初めてで色々と緊張していますが、少しでも楽しんでいただければ嬉しいです。

よろしくお願いします!

目の前には顔に白い布がかけられた遺体。

今日、私の父が死んだ。今朝までは普通に会話をしていたのに。もう二度と父の声を聴くことも、あの笑顔を見ることもできない。




 

「お父さん!早くしないと遅れるよ」


その呼びかけから少しして父が2階から目をこすりながら降りてきた。


「おはよう唯。今日も元気だね。」


お父さんはふにゃりと締まりのない笑顔をこちらに向けながらリビングの椅子に座る。まだ眠そうだ。


「元気が取り柄ですから。それより急がないと電車の時間に遅れるよ?」


苦めのコーヒーを差し出しながら急ぐように言う。

父は有名な発明家。今までにいくつもの発明品が世の中に出回っている。

おかげで私は金銭面では何不自由ない生活を送っている。


「今日も遅くなる?晩御飯はどうするの?」


父は毎日忙しく、家にいないことが多い。晩御飯を作っても食べてくれる人がいないと意味がない。


「今日は早く帰るよ、やりたい事もあるからね。晩御飯は家で食べるから、美味しいものよろしく。」


さりげなくプレッシャーをかけてくる。父と晩御飯を食べるのは1週間ぶり。腕によりをかけて作らなくは。

そんなことを考えていると父が玄関に向かうのが見えた。毎回お見送りだけはきちんとしている。


「そうだ、唯。これ書斎のカギがしてある棚にしまっておいてくれないか?大事な部品が入っているから。」


 そういって渡してきたのは中くらいの箱だった。大きさの割にずっしりとしている。中を見ると手のひらより少し大きくて変な模様が描かれた部品と小さな基板、それと何本かのねじが入った袋が入っていた。


「わかった。気を付けて行ってらっしゃい。」


その返事を聞いた父は満足そうにまたふにゃりとした笑顔で手を振りながら出て行った。

その会話が最期になるなんて、思いもしなかった。











「大丈夫ですか。」


急に聞こえてきた声にハッとした。目の前には変わらず父が横たわっている。声がする方をむくとそこには父の助手の栂野善昭とがのよしあきさんがいた。大丈夫と言いたいところだが、声が出ない。もどかしくなって唇を噛み下をむく。栂野さんはゆっくりと近づいてきて重々しく口を開いた。


「今日は少し難しい発明をしていたんです。今日は時間があるから没頭できると言って。でも実験段階でラボが爆発して、先生が…」     


そこまで言うと栂野さんは口を閉ざした。今日は早く帰ってくるって言っていたのに。

ふと疑問に思ったが、すぐに考えることをやめた。

目の前の事実から目を背けるかのようにきつく目を閉ざした。










お父さんの葬儀はスムーズに行われた。全て栂野さんが手配してくれたのだ。

私はというと魂が抜けたようにぼーっとしていた。これからどうして生きていけばいいのか。

淡々と葬儀が行われていく中、ふと父の遺影に目をやった。優しそうに微笑んでいる。

胸が苦しくなり思わずその場から離れた。

泣いているところを見られては心配をかけてしまう。

誰もいない廊下の隅でしゃがみ込み必死に呼吸を整える。


「大丈夫…?」


 突然後ろから女性の声が聞こえた。後ろを振り向くと喪服姿の女性が心配そうにこちらを見ていた。


「ごめんなさい、少し気分が悪くなっただけ…。でも大丈夫です。」


誰かわからないが心配をかけてはいけない。

そう思って必死に笑顔をつくる。


「あなた、唯ちゃんよね?柊先生の娘さん。」

「はい、あのあなたは?」


この女性、私の事を知っているようだ。


「私は望月真緒。昔柊先生にある事件でお世話になったの。そこからよくしてもらっていたのよ。」


 望月さんは懐かしむような、それでいて少し寂しそうな顔をした。


「何ができるかわからないけど、何かあったらいつでも連絡を。私こう見えて刑事なのよ。」


 そう言って望月さんは連絡先が書いてあるメモを渡してくれた。


「刑事さん…ありがとうございます。」


メモを受け取ると少し安心した表情を浮かべ私の頭をポンポンと二回優しく撫でてくれた。


「遠慮しないでいいからね。じゃあ私は戻るけど、大丈夫?」

「はい、もう少ししたら戻ります。ありがとう。」


望月さんは数歩歩いたところで一度私の方を振り返り、会場から出て行った。

それから何の問題もなく葬儀が終わり、納骨も済ませた。










数日がたち、私は父と母が眠る墓の前にいた。幼い頃に母を病気で亡くした私には父が唯一の肉親だった。ついに一人ぼっちになってしまった。

本当にこれからどうして生きていけばいいのだろう。考えてもいい案は一向に思い浮かばない。


「…帰ろう。」


いつまでもこうしてはいられない。岩のように重い足を引きずりながら帰路についた。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

次回はついに贈り物と出会います。

次回も読んでいただけると嬉しいです。


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