第6話 今出来る事をするのである
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詳しくはあらすじにて( ^ω^ )
ヒデキに三番勝負で負けた次の日。
「んあー、よく寝た。腹減ったな。」
いつも通り昼まで寝ていたので空腹だ。
しょうがない、エノりんになんか作ってもらおう。
「エノりん、飯作って。」
「......ない。」
は?何言ってんだこいつ。
頭でもおかしくなったのか?
「おいおい寝ぼけてんのかエノりん?何言ってるのかさっぱり分からねぇよ。」
「アリスちゃんがいないんですぅ!私のアリスちゃんが!」
アリスがいないだと!
この小屋のアイドル、アリスちゃんがいない!?
お、落ち着け俺。
エノの勘違いの可能性もあるし。
「どこかに出かけているだけとかじゃないのか?」
「私も最初はそうだと思っていたんですけどぉ、アリスちゃんの部屋のベッドにこれが......」
そう言ってエノが取り出したのは何かが書かれたメモであった。
「なになに、『ヒデキ、殺される、助けて』か。ってかなりヤバめの内容じゃねーか!」
メモには血のような赤い文字でそう書いてあった。
かなり雑な字だったから緊急事態だったのだろう。
夜の間に何かがあったのだろうか?
ヒデキと書いてあるし厄介事であるのは間違いない。
ーーまさか!?ヒデキに誘拐されたとか?
あり得る、ていうか絶対そうだ。
アリスを誘拐するとしたら魔王レベルじゃないと吹っ飛ばされて不可能だしな。
「エノ......アリスが危険な目にあってるかもしれない。」
「危険な目ですかぁっっ!?」
「ああ、恐らくヒデキに関係してる事件だと思う。」
「じゃ、じゃあ今すぐ助けに行きましょうよぉ!」
「そうだな。俺はラノを呼んでくる。」
ーーアリス救出作戦が始まる。
俺達が考えた作戦はこうだ。
まずヒデキの魔城に馬車で向かい俺は正面から魔城に侵入し、中でヒデキ達と戦ってヒデキ達をを混乱させる。
その隙にラノとエノが魔城の窓から侵入してアリスを捜索、見つけ次第救助する。
となっている。
一見完璧な作戦に思えるが一つ問題がある。
「馬車借りる為の金がねぇー!」
「お金なんて稼げばいいじゃない。」
「そうですよぉ。ドラゴンでも倒してドバッと稼ぎましょうよぉ。」
「あのなお前ら......金よりも自分の命を大切にしろよ!ドラゴン倒すとか馬鹿じゃねぇのか!?」
俺が怒ると2人はムッとした顔をして。
「「いつもドラゴン倒すとかほざいてる奴が何言ってんだ!」」
まあなんて綺麗なハモリなんでしょう!
耳が痛い事言われちゃったな。
「そんな事より早く金になるクエストやろうぜ!」
「分かりましたぁ。マサキはドラゴン倒してきてくださいねぇ。」
「何でだよ!?」
「だってマサキは自称ドラゴンキラーなんですよねぇ?」
「というわけで私とエノりんは楽なクエストをバンバンやってマサキはドラゴン倒してきてね。」
「ドラゴン倒さなくても馬車代くらい稼げるだろ!」
「「いいから行ってこい!」」
「は、はーい。」
ドラゴン退治を無理矢理押し通されたのであった。
あの2人はたまに容赦無いところがあるんだよな......
俺は愚痴を思い浮かべながらギルドへと走って行った。
「こんにちはマサキさん......ってどうなされたのですか?そんな急いで。」
受付のお姉さんは首を傾げて聞いてきた。
可愛い......だじゃなくて今は急がないと!
「徒歩で行ける場所にドラゴンとかいねぇか?」
「は?も、もう一度お願いします。」
「ドラゴンはいねぇのか!?」
「い、いるはいるのですが......」
「じゃあそのドラゴンの討伐クエストを出してくれ!!」
「本気ですか!?相手はドラゴンですよ!」
「俺は本気だ!助けなきゃいけない奴がいるんだ。」
「分かりました。では、『ファスト近辺に位置する平原の奥地の洞窟に住む三頭竜アジ・ダハーカの討伐、報酬:100万ユキチ』をマサキ・イシカワに依頼します!」
「おう!さっさと倒してくるから100万ユキチ用意しとくんだぞ!」
そう言って俺はギルドから飛び出してアジ・ダハーカの住む洞窟を目指して走って行った。
どれくらい走っただろうか。
やっとそれらしき洞窟が見えてきた。
スキル『覚悟の剣撃』を発動し、いつ敵が来ても切り捨てられるようにした。
「お邪魔しまーす。アジ・ダハーカさんがいらしたら返事をして下さい。」
「そんなこと言われてひょいひょいと出てくるほど儂は馬鹿じゃ無いぞ!」
そう言って出てきた馬鹿は頭が3つあるドラゴン......
「かかったな!覚悟、アジ・ダハーカ!」
ふざけて言ったつもりだったがアジ・ダハーカは本当に驚いたように。
「な!何だと!」
こいつは天然キャラなのかな?
まあいい、さっさと倒して帰ろう。
「だが、儂はそんな簡単に倒される様な軟弱者ではないぞ!」
そう言うとアジ・ダハーカの周りを瘴気のオーラが包み込んだ。
「人化!」
人間の姿になったアジ・ダハーカを見て言いたい事が1つ。
ーーなんで一人称が“儂”なのにこんなに美少女なの!?
人化したアジ・ダハーカはツインテールで整った顔立ち、そして見事なまでの貧乳っぷりだった。
「あの......そんなに見られるとちょっとあれだな。」
「見る権利くらい俺にもあるだろ!なんか文句あんのか?」
「儂を見るな変態!もういい、ここで死ぬがよい!」
顔を真っ赤にしたアジ・ダハーカが手を鱗と爪で覆い、爪を俺に向けてきた。
俺もステルス・ソードを召喚してアジ・ダハーカに向けて構える。
最初に仕掛けたのは俺だった。
俺の振り下ろした剣をアジ・ダハーカが爪で受け止める。
すると俺のステルス・ソードが見える様になった。
しかもアジ・ダハーカの爪とぶつかった部分が黒くなって崩れてしまった。
「おいおいこんなの聞いてねーぞ!」
「お主は儂の能力を知らないのか?」
「んなもん知るわけねーだろ!初見だよ、完全初見!」
「え、そうなの?実は私……じゃなくて儂は結構有名なドラゴンのはずなのだが。」
アジ・ダハーカは不思議そうに首を傾げた。
こいつの仕草一つ一つが可愛いな!
「俺急いでるから早く終わらせたいんだけど……」
「わ、分かった。では正々堂々と勝負し……」
「もらったぁぁぁぁぁ!」
俺はアジ・ダハーカが話している途中にアジ・ダハーカにステルス・ソードを突き刺した。
手口が汚い?そんなの知るか!
戦いは油断した方が負けるものなんだ。
勝利を確信していた俺だったがステルス・ソードがピキピキと音を立てて崩れてしまった。
何が起きたのか理解できず、先程までステルス・ソードが突き刺さっていたアジ・ダハーカを見ると。
「貴方……随分と汚い手口で戦うのだな。」
あらまあアジさん怒ってらっしゃる。
今頃だが分かった事がある。
多分こいつには物質を腐敗させる能力があるのだろう。
ステルス・ソードはマナが尽きない限り何度も召喚できるが役に立ちそうにない。
こいつと戦うには魔法が必須なのだろう。
しかも先程の傷はもう全治してしまっている。
つまりこの戦いは完全な無理ゲーなのだ。
「あのー……俺達もっと分かり合えると思うんだ!」
「あ?貴様はさらに儂を怒らせたいのか?」
あ……逆効果だったみたい。
俺は既に10本以上ステルス・ソードを出して戦っているがアジ・ダハーカに決定的なダメージを与える事が出来ていない。
「お前の強さバケモノ級だな!」
「儂は神話級のドラゴンだからな。しかしお前は人間のくせになぜそんなに強い?」
俺は少し考えてから。
「それは!」
「それは?」
「守りたい人がいるからだぁぁぁ!」
俺は渾身の力でアジ・ダハーカを切った。
やったか?ってフラグ立てちゃったし!
すると、俺の立てたフラグに応えるように砂けむりの中から人影がゆらりと動いた。
「なるほど、これがお前の力か。」
「やっぱりまだ死なねえんだな。」
「これでもまだ儂は本気を出してないぞ?」
「またまたー、冗談きついぜ?」
俺が馬鹿にしたように言うとアジ・ダハーカはこちらをじっと見て。
「この目が冗談を言う者の目に見えるか人間?」
「見えませんね、はい。」
マジか!これで本気じゃねえのか!
俺はこれでも全力なのですが。
「ではトドメを刺してやろう人間。お前はなかなか面白い奴だった。だが儂を倒そうとした事が間違いだったな。」
「え!?ちょい待ちちょい待ち!」
「漆黒の我が身に宿る闇の力よ、今その力を解き放ち......」
アジ・ダハーカが魔法の詠唱を始めた。
やばいってこれ絶対必殺技的な魔法の詠唱だって。
ああ神様お願いします助けてください!
「詠唱完了。ダークネスメテオ!」
洞窟の天井から隕石が現れ、黒く光り出した。
絶体絶命の中俺の神への祈りが届いたのか救世主が登場した。
「オールスペルブレイクですぅ。」
聞き慣れた声が聞こえてきた。
うんエノりんだな。
エノの魔法によってアジ・ダハーカのヤバめの魔法は術式崩壊を起こして消え去った。
「貴方誰よ!今良いところだったのに!」
あらま!ドラゴンもそんな可愛い喋り方出来たのか。
「私達はマサキの仲間、つまり貴方の敵よ!」
ラノがかっこよくそう言った直後。
「ーーと言いたいところですがぁ」
するとラノとエノの顔色が変わり。
「「許してください私達3人を見逃してくださいアジ・ダハーカ様!」」
「「は?」」
思わず俺とアジ・ダハーカの声が揃う。
「おいおい2人ともどうしたんだよ?戦うんじゃないのかよ!?」
俺がそう聞くとラノが何かを企んでいるような顔で微笑み。
「私達は最初から馬車代を稼ぐ気もドラゴンを倒す気もないのよ!」
「というと?」
「アジ・ダハーカ様にアリスちゃん奪還作戦を手伝ってもらうの!」
「儂は手伝う気ないのだが。」
するとエノがアジ・ダハーカの前に出て来て。
「貴方に選択権はありませんよぉ。」
「はっ、はい!やらせていただきます。」
エノの殺気には誰も逆らえないようだ。
エノりん最強説......
「それでその作戦を手伝う代わりにお主達は何をしてくれるのだ?」
やっぱり代償が必要なのか。
俺が何かないかと考えていると。
「ではこの世で最強と呼ばれる魔王ヒデキと戦う権利を貴方に支払います。」
いやいやいくら何でもそれはないだろうラノ......
「分かった。それが代償だ。」
そんなんで良いんですかアジさん!?
まあこいつなりに何かあるかもしれないしほっとくか。
何故だか分からんがアジ・ダハーカはだいぶあっさりと仲間になってくれた。
しかし心強い仲間が出来たものだ。
これであのスカした野郎の魔城をめちゃくちゃにしてやるぜ!
「おい。マサキといったか、お主は何か良からぬ事を企んでいるようだが本当にアリスとやらを助ける気はあるのか?」
「そ、そ、そ、そりゃあ助ける気満々に決まってるだろ!別にヒデキをぶっ潰したいとかそういう理由じゃないからな!」
「「「はいはいそうですねー。」」」
くそ!また厄介な仲間が増えてしまった。
全員見た目は良いんだがな......
実に残念だ!
あぁオレっ娘のアリスちゃんが恋しい。
「目が覚めたかいアリスっち。」
ええと、俺は確か屋敷に忍び込んだヒデキに誘拐されて......
マサキ達メモに気付いたかな?
「あの......なんで拘束されてるの俺?」
「ん?そりゃあ拘束しないと逃げ出すでしょアリスっち。」
「加護で抜け出せないのだが何か知ってる事は?」
「アリスっちの加護はマナを使って空間を圧縮・拡大するんだけどこの部屋では特殊な術式によってマナの使用ができない。つまり魔法やマナを使う上位加護は全く使用できなくなってるんだよ。」
え!?それはだいぶまずくないか?
加護が使用できないという事はここから抜け出せないという事だ。
「ふふふ、アリスっち。君にはたっぷりと楽しませてもらうよ。覚悟してね。」
「え!?ちょっと待っ......」
俺はその時初めてヒデキが魔王であると確信した。
俺は祈った。マサキ達が助けに来る事を。
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