御令嬢は旅に………
「御令嬢は旅に出たい」「公爵様は旅に出したくない」のその後のお話となります。
よろしくお願いします☆
皆さまごきげんよう。ワタクシはフローラル・ガーベル、16歳。
普通のOLをしていたと言う前世の記憶を持っています。そして、前世で憧れていた素敵な世界に胸が踊って幼少の頃、成人である16歳から他国に旅に出ると夢を膨らませていました。
ですが、未だに旅に出られません…。
「ローラローラローラ、ローラ!あぁ、可愛い。何て愛らしいんだ!!本当に綺麗だよ、ローラ。私はどれだけこの日を待ち焦がれた事か!愛してる…ローラ……!」
それと言うのも、日の光を浴びてサラリと流れながら金色に輝く髪に蒼く煌めく碧眼の瞳を細め柔らかくワタクシに微笑むこのお方こと、代々続く由緒正しい公爵家の現当主で、婚約者様のセリシア・ヴァイース様がワタクシを公爵家に監禁(…庭や家の中は歩けるので、軟禁でしょうか?)していて離してくれないからです。
そして只今、厳正な教会の控え室で婚約者様に押し倒されています。もうダメかもっっ!?
ワタクシが16歳の誕生日を迎えたあの日、婚約者である公爵様にお別れのご挨拶に伺ったあの日。抱きかかえられて公爵様のお部屋に連れ込まれました。
もちろん、貞操は泣き落としで守りましたよ?本当に危なかった…!
普段は柔和な表情の公爵様が、ギラギラと獲物を狙う猛獣のようなお顔でしたもの。いつものお顔に戻った時、ワタクシはヘロヘロで起き上がれませんでした。
そして、貞操を守れたと安堵したのもつかの間。あの日から数週間、何かしら理由をつけて実家に帰る事はおろか、街に出る事さえ出来ませんでした。お父様とお母様はお元気かしら?
公爵様はとてもワタクシを大切にして、愛して下さいます。
それこそ、他国の珍しい料理をワタクシの好みに合うよう作らせたり、見たことも無いくらい美しい装飾品や毎日楽しめるようにと整えられたお庭でのお茶会やらと何不自由なく生活できるようにして下さいました。
でもっ。でも、ワタクシは旅に出て実際に物を見て聴いて触れて、全身で感じたいのです。
ただこの世界を感じたいだけ。それだけなのです。
けれど、初めは少し(?)ヤンデレでストーカー気質な公爵様が怖くて震えていたワタクシの頭をそっと撫でてくれたり、一緒に過ごす時間が増えて公爵様を知るようになったり、門から出ようとしたり旅に出ますと伝えると「それは許可出来ない」と、くしゃりと寂しそうに笑うお顔を見る度にワタクシは心臓のあたりを締め付けられたり、お留守の時に執事長様にお願いしてこっそり抜け出して街に出掛けた時も血相を抱えてワタクシを探していらしたりと、公爵様の柔らかく笑ったお顔を見るとドキドキと胸が高鳴りました。
それからは公爵様が嫌いなわけでも、結婚がイヤなわけでもなくなっていったのです。
「…っ…公爵様、これからお式が始まるので離してくださいませ〜っ!」
「ローラ?セリシアだよ。その可愛らしい声で私の名は呼んでくれないのかい?」
ぎゅうぅぅっと抱きついて離れない公爵様の肩をポカポカ叩くけれど、一向に離してはくれません。もう口紅はとっくに取れている事でしょう。うぅ…。
「あぁ、髪がっ!ドレスがぁっ!公爵様〜っ!」
ワタクシの叫び声が控え室の外まで聞こえたのか、ワタクシの両親と公爵様のご両親(前公爵様)が助けて下さいました。お二人はとってもお似合いの美男美女なご夫婦でした。ワタクシも……。
「ーー…リ……様……大好きです」
「…っ!!ローラローラローラ、ローラ!!」
「きゃぁぁっ!」
いつか、ワタクシと一緒に旅に出て下さいね?セリシア様ーーーーー
了
ここまで読んで頂きましてありがとうございました。
ローラちゃんが絆された…だと…!
しかも自分の首を絞めている!(笑)
誤字、脱字などございましたらご指摘下さいませ。