問
問.
たこ焼きを賭けた勝負の夜、アキラは去り際にヒカリへヒントを残した。
『ヒカリ。俺は思うんだ』
ヒカリは不可思議な錯覚に陥る。アキラの声が残響して聞こえる。まるで彼は既に居ないかのように。
『物事を考えるとき、人は考えなくてもいいことまで考える。ときには、それが故に迷い果ててしまうんだ』
アキラの後ろ姿がだんだんとぼやけていく。
『そういったノイズをいかに早く、正しく取り除けるか』
そこで初めて、自分が現実と夢の境目に立っていることを自覚した。強いまどろみが、ヒカリを強引に境界線の向こう側へと引っ張っていく。
『着目する事実の取捨選択で、最適解により早く、より高い精度で辿り着くことができる』
アキラはドアに手をかけた。ガチャガチャと荒っぽい音を立て、ドアノブを捻っている。
『達は常に想像しなければならない。物事に対処するために、どれだけのコストがかかるのかを』
そこでアキラの後ろ姿に黒い霞がかかる。
『そうして決めていくんだ。何を考え、何を棄却するべ』
靄が晴れていく。アキラの後ろ姿は夕輝のそれへと変わっていた。夕輝はドアの補助錠を巨大なニッパーで切断しようとしていた。
『性の問題だ。知りたいことと知るべきことは、常にイコールとは限ら』
やがてさじを投げたのか、夕輝はニッパーを捨てた。ポケットから鍵を取り出し、補助錠を解除する。
『うして、死体に防御創が無かっ』
声が歪み、くぐもっていく。
『題のポイントは、『アリア』が何処に誰』
夕輝はドアを開けた。その向こう側には夜空が広がっている。
『ームで死亡推定時』
ドアの外側の空間へ、夕輝は身体を傾ける。落ちていくのはあっという間だった。
『断のときは新品が使われ、夕輝さんの時は藤堂家にあるも』
いつの間にか、ドアの手前に靴が綺麗に揃えてあった。
『屋が異常に綺』
ドアの向こうの夜空に、花火が一つ打ちあがった。破裂の衝撃が僅かに響いたが、ヒカリには何も聞こえない。
『が使われたんじゃないか。お前が言い出し』
ヒカリの意識は、その世界から完全に乖離した。
以下の問に答えよ。
一:藤堂朝陽の頭部は切断されていた。その理由を述べよ。
二:藤堂朝陽の右手は切断されていた。その理由を述べよ。
三:藤堂夕輝の頭部は切断されていた。その理由を述べよ。
四:藤堂夕輝の右手は切断されていた。その理由を述べよ。
五:藤堂朝陽を殺害した人物は誰か。以下の選択肢から選べ。
六:藤堂夕輝を殺害した人物は誰か。以下の選択肢から選べ。
<選択肢>
・日向ヒカリ
・藤堂朝陽
・藤堂夕輝
・藤堂美雪
・藤堂雨音
・藤堂蓮
・桐生晶子
・新部万里子
以上で出題篇は終了です。
問一から四を自由問題とし、五と六は必須問題とします。
ここまでお読み下さった読者様方に、ささやかながらヒントを提示させて頂きます。
一つ目。あり得ない可能性や、考えても不毛な可能性は、思い切って棄却してしまいましょう。ただし、劇中でアキラ達が考察し、棄却してしまった可能性を捨てるかは、貴方次第です。
二つ目。現時点で推理は完璧でなくとも構いません。大筋さえ掴めていれば、瑣末なことは棄却して頂いて結構です。
それでは、ご健闘をお祈りいたします。
解決篇でお会いいたしましょう。




