新たな可能性へ
ヒカリはベッドに腰かけた。
アキラは品の良い丸テーブルとセットの椅子を引き、腰かける。肘掛け付きである。
「アキラ。なにかわかった?」ヒカリは早速、アキラに切り出した。
「どういうことだ?」アキラは怪訝な表情を浮かべた。「俺が思い付いたことなら、和泉さんに話しただろう」
「あれから結構、時間たってるよね。なにか思い付かない?」
「意見は変わらない」アキラはため息を吐いた。「だが、和泉さんに話していないことはある。犯人に対する純粋な感想だから、特に言わなかった」
「感想?」
酷いことするなあとか、そんなことだろうか。アキラに限って、そんなありきたりな感想の筈がないが。
「何? 感想って」
「犯人は計画的かもしれないが、知能犯ではない」アキラは指を組んだ。「そんなところか」
「意味わかんない。犯人がバカってこと?」ヒカリからすれば、アキラの考えていることも、犯人と同じくらい理解しがたいことばかりである。
「馬鹿かどうかで言うなら、殺人を犯した時点で、明らかに馬鹿だろうが……」
「殺人者はみんなバカですか」もちろん、ヒカリは殺人を肯定するつもりはないが、アキラの極端な意見に、どうにも不服を感じる。
「どんな殺人にも、必ず目的ってものがある。金だったり、排除だったり。怨恨による殺人の場合は、自分や誰かの感情の整理という目的だ」アキラは背もたれに寄り掛かり、力を抜いた。「殺人はリスクが大きい。逮捕されるリスクはもちろん。将来的に後悔するリスクや、復讐されるリスク……。ちょっと物事がわかる人間なら、どんな目的があろうと殺人だけは避けるべきだと考える」
「復讐心だけはどうしようもないじゃん」ヒカリは水を差したくなった。この世には、死んだ方がいい人間がいること、人が憎しみで涙を流せることを、ヒカリは理解しているつもりだった。
「執着か」アキラは薄く笑んだ。「棄てるべき……、なんだろうな」
「よく簡単に言えるよ」
「そうだな。口で言うほど簡単じゃない。憎悪や屈辱をひたすら我慢するだけじゃ、心のコストがもたない」アキラは尊厳の略奪を耐え忍ぶだけのストレスを肯定した。「だが、殺人によって得られるものは、その人が本当に望んでいる『答え』とズレがあるんじゃないかと俺は思う。殺人という安直な手法から導かれる『近似解』ってところか。心のどこかで不合理だとわかっていても、『最適解』を得る困難性を目の当たりにして、つい目を逸らしてしまうのかもしれない」
語り出しちゃったよ。いきなり話が難しくなった。その上、アキラの言いたいことも、ヒカリには見えてこない。
「合理的でない人種は、心のコスト消費が低い殺人という手法によって『近似解』を得ようとする。だが、本当に頭の良い超合理的な人種であれば、心のコスト切れの前に『最適解』を得る手法を思い付けるんだろうな」
「殺人をする人は、頭が悪いから、ストレスの許容内で収まりをつける方法が殺人しか思い付けないってこと?」
アキラは頷き、肯定した。
ヒカリはようやく、話が理解出来た。『殺人は馬鹿のすることだ』と言っていたことも。
「自分のために、どのように考え、何をなすべきか、合理的に考えろってことだ」アキラはどこか遠い目をしていた。
ヒカリは心のどこかで、考えている。朝陽を殺した人物は、何か理由があって殺人に及んだ筈だ。何だろう。切断されたパーツに関係するのだろうか。しかし、ヒカリが思う切断の理由は、殺人の動機とは関係がない。
「少し脱線したな」アキラは脚をポンと叩いた。「とにかく、死体の切断の理由はわからないが、犯人はあまり賢い人物ではない」
「そうそれ。なんで言い切れるの?」
「頭部と右手だけ切断したら、警察はその理由を考えるだろ? 何で、頭部と右手なのか。その疑問が足掛かりとなり、逆に自分が追いつめられるかもしれない。警察がどこまで考えられるか、犯人は甘く見積もったのだろう。将棋で言うなら、自分の都合しか考えず、相手の次の手を読んでいない。理由は何だか知らんが、死体は遺棄すべきだった」
ヒカリは自分の考えた可能性を、アキラに検証してもらうことにした。
「ねえ、切断の理由、わたしも考えたんだけど」
「どうぞ」アキラはだらけた姿勢を正した。
「朝陽君の頭と右手が欲しかったんじゃない?」
「『セキュリティ破り』説のように、特別な理由はなく、ただ欲しかったということか」とアキラ。正確に意図が伝わったようだ。
「そうそれ」ヒカリは頷いた。
「朝陽さんが好きだからか」
「それはわからないよ。単に死体愛好家なのかも……」
「後者なら、また被害者が出るな」アキラは頭を掻いた。「ついでに言えば、犯人の特定も難しそうだ」
「そうか……」ヒカリは連続殺人が起きる可能性を指摘され、動揺した。気づかなかった。
「だが、その可能性は低そうだぞ。切断個所以外に、目立った傷はなかったんだろ?」
「……そうだった」
こともなげに放たれたアキラの一言により、ヒカリが小一時間ほどかけて考えた可能性の二つのうちの一つは、木端微塵に粉砕された。
切断個所以外に外傷が無いのであれば、朝陽は頭部か右手に致命傷を負ったことになる。犯人が狂気じみた人物で、死体のパーツを集める趣味があれば、その部位に傷を付けることは考えにくい。
「じゃあさ、犯人が痕跡を隠すために、頭部と右手を持ち去ったっていうのはどう?」気を取り直し、ヒカリは提案する。
「具体的に、痕跡とは何だ?」
「手形なんてどう?」ヒカリは言えば言うほど、この可能性が大きくなるように思えた。「朝陽君を扼殺して、きれいに手形が残った。その手形を隠すために、首を切った」
「右手の切断は?」
「朝陽君が抵抗して、右手で犯人を掻きむしったんだよ。爪に自分の皮膚片が残されてたら、まずいでしょ。だから右手を切って持ち去った」
アキラは顎を指先で触れ、何かを考えているようだ。手応えありか。ヒカリは緊張した。
「問題点が二つ」アキラは冷たく指摘する。
ヒカリはがっくりときた。
「まず、手形を隠す必要性がどれだけあるかは、置いておく」アキラは考えながら話しているのか、ヒカリを見ていない。どこにも焦点は定まっていないようだった。「一つ目。手形については、破壊すればいいだけだ。切断で手形を隠したあと、頭部を持ち去る理由はない」
「右手は持ち去らなきゃいけないよね。ついでだったんじゃない?」苦し紛れだ。自覚しながらヒカリは言った。
「二つ目」それをアキラは遮る。「犯人は斧という凶器を持ち込んでいる。計画的犯行だ。扼殺は考えにくい。斧を使って殺されたとみるのが妥当だ」
言われてみればそうだ。どうして、そんな簡単なこともわからなかったか。本日何度目の反省だろう。切断の理由に目が行き過ぎて、細部まで気が回らなかったのだ。わたしの小一時間返してよ。自分の頭の悪さに文句をたれる。
「はあ、やっぱ、わたしじゃだめか」ヒカリはため息を吐き、呟いた。しかし、目の前のクソ生意気な名探偵ならどうだろう。「アキラはどう? この際、警察の協力とかは考慮しないでさ。どんなに無責任で荒唐無稽な推理でもいいから、なにか言ってみてよ」
「それはただの出鱈目であって、推理とは呼べないんじゃ……」
「いいの、いいの。まずは、仮説を立てることが大事なんでしょ?」
「わかったよ」アキラがぽんと肘掛けを叩いた。やはり、何か思い付きを隠していたらしい「面白い話じゃないぞ」
「いいよ」
アキラは組んだ脚をほどき、姿勢を前掲させた。右手の握り拳を、左の手のひらで包み込む。
「犯人は、夕輝さんだ」
具体的に名前が挙がったことに、ヒカリは驚く。
「動機は藤堂家の遺産。ないし、宝物庫にある朝陽さんの美術品だ」
確かに、朝陽は藤堂家の長男だ。朝陽が死ねば、藤堂家を継ぐのは必然的に夕輝になるだろう。朝陽の美術品が狙いであることも、否定する材料が見当たらない。
「夕輝さんは昨晩、夕食を終えた後、自室に籠ってたという。だが、それを証明出来る者はいない」アキラは話を続ける。「頭部と右手を切断した理由は、彼自身が最初に和泉さんに提示した可能性である『セキュリティ破り』説を、警察の捜査方針としてしまうためだ。『アリア』は実は彼が持ち去り、今は誰にもわからない場所に隠したか、朝陽さんの部屋に置いた。以上」
にわかには信じられない話だと、ヒカリは思う。しかし、否定する材料もぱっとは思い付けず、そこが恐ろしい。
「アキラ。それ自己採点してみて、どうなの?」満点と言われたらどうすればいいのか。ヒカリは若干、聞くのが怖い。
「丸か罰点かでいうのなら、罰点だ。甘くみて三角四角が関の山」ヒカリの恐れを払拭するように、アキラは自身の推理を否定した。「捜査のかく乱という目的ならば、死体の頭部と右手だけを持ち去るという手口は、どうなんだという話だ。『セキュリティ破り』説は、正直言って警察が本気で信用するには弱過ぎるだろ。まともな思考回路の持ち主なら、中途半端に意味深なことをするより、頭部と四肢を全て切断したほうが合理的だと判断する。つまり、やってることがアクロバティック過ぎる。それから、夕輝さんなら朝陽さんの部屋の鍵くらい持ち出しそうなものだ。ついでに言えば、専攻は違うとはいえ、夕輝さんも工学系の大学院生だ。死体で生体認証が通らない可能性は、実は言い出した彼自身、薄々感づいていたんじゃないかと俺は思う」
「全然だめじゃんか」ヒカリは苦笑した。よくもこんなに完膚なきまでに、自分の考えを葬ることが出来るとヒカリは感心するほどだ。そういった、厳しいものの考え方が彼の大きな強みではあるのだが。
「面白い話じゃないと言っただろ」
「わたしは面白いと思うけどなあ」
「相変わらず、不謹慎なんだな」アキラは薄く笑った。呆れているようにもとれた。
「そう? でも、わたし達は結構真面目に考えてるじゃん。こういうことをうんぬん話し合えるって、なんかよくない?」
「真剣に話し合える楽しさか……」アキラは遠い目をしている。「現実を忘れてる間は、そういうのもいいかもな」
「現実……。現実かぁ」ヒカリは頭を抱えた。
議論の楽しさが問題の深刻さに比例するのはよくある話だ。逆に言えば、真剣に考えられる議論の先に、その分だけ残酷な現実が待ち受けているとも考えられる。例えば、先ほどのアキラの推理は、ミステリーやサスペンスとしてはストーリーが成立しているかもしれない。だが、これは現実の事件であり、身内が犯人という結末は誰にとっても望ましいことじゃない。
「……推理を語り合うのは楽しい。でも、真実はあまり面白い話であって欲しくないよね」
「まあ、殺人事件なんて、フィクションでも面白くないけどな」アキラはいつの間にか冷めた目になっている。
「一切読んでないくせに」そんなことを言われては、心外である。
「……なあ、コンビニ行かないか?」
「……コンビニ?」突然の提案に、ヒカリは面食らう。
アキラは立ち上がった。
「ここから歩いて十分しないくらいに、コンビニがあるんだよ。二十分くらいで帰って来れる」
「なに? なにか欲しいの?」
「ちょっと将棋盤が欲しい。マグネットのやつ」アキラは伸びをしながら言った。「一局付き合ってくれないか」
「いきなり、なにわけわかんないこと言ってんの?」ヒカリは心中でアキラの神経を疑った。「なんで今なのさ?」
「指したい気分だからだよ」アキラはあっけらかんとしている。「指しながら考えたい」
何言ってるんだ、この男は。
「将棋を指しながら考え事なんて、できるわけないじゃん」
「俺もそう思う」
ヒカリはため息を吐いた。言葉とは裏腹に、アキラはどうあっても将棋を指すつもりのようだった。
ならば、ヒカリはそれに付き合うまでである。
***
丸テーブルに置かれている盤面を、無表情で見続けているアキラをちらりと見やる。
もう勝負はついた。将棋にあまり明るくないヒカリでもわかる。腕時計を見ると、コンビニに出かけようとアキラが言い出してから、既に一時間以上も経っている。
「負けました」アキラが持ち駒に右手を置いて、投了を宣言した。
中盤までは盤面五角の形勢で進んでいたが、あるタイミングからアキラの手が随分と悪くなった。
「やっぱり、将棋やりながら考え事なんて、無理だよ」
「かもな」アキラは駒を片付け出す。
「なにか思い付いた?」ヒカリも自分の駒を袋に仕舞う。
「着眼点が間違っているかもな」やがてアキラはぽつりと言った。
「着眼点?」
「何故死体の頭部と右手が持ち去られていたのか。最初からそれだけを考えようとするから、駄目なのかもしれない。色々と切断の理由の候補は挙がったが、いずれも可能性は完全にゼロとは言えないし、決め手にも欠けるだろ? もっと先に考えるべきポイントがあるんじゃないか」
「先に考えるべきポイント?」
「要は、切断の謎を解くための取っ掛かりだな」アキラがヒカリの顔を見る。「何か見落としてないか」
ヒントがどこかに隠されているかもしれないということか。もっともだとヒカリは思う。確かに、そんなものがあれば、切断の謎の答えが導き出せそうだ。
「で、その取っ掛かりって?」高揚感を抑えて、ヒカリは訊く。
「ないな」即答するアキラである。
「ちょっと?」
「そんなすぐに思い付けるか」アキラは非難めいた視線をヒカリに送る。「お前も和泉さんも、俺を何だと思ってるんだ? 俺は神か」
「……ぐう」
言われてみれば、確かにアキラに頼り過ぎている感はある。少しは自分で考えなければ駄目だとヒカリは思い直す。
「切断の他に、気になるところを探せばいいのね?」
「そう。何かないものか」
そう言われても困ってしまう。ヒカリは腕を組んだ。変わったところ。思い出そうとしても、どうしても切断された死体のインパクトが強く、そちらに気をやってしまう。
失われていた頭部。
血塗られていた服。
放置されていた斧。
咽かえるような死の臭い。
「あ」ヒカリは声を上げた。あることに気が付いたのだ。
「どうした?」アキラが尋ねる。
そうだ。ヒカリが発見したとき、あの死体は。
「仰向けだった」
「死体が、か?」
「そう。死体は仰向けに倒れてた……」言いながら、ヒカリは口に手をやる。
「被害者が仰向けに倒れていたということは、後ろから襲われたという可能性は低いな」アキラが考察を述べる。「逆に正面から襲われたと考えると、朝陽さんは犯人と向き合っていた格好になる。当然、反射的に抵抗するだろうな。だが、死体に防御創は」
「なかった……」ヒカリは自分の頭に神が降りてきたような錯覚に陥った。
和泉達と議論をした際、朝陽はバスルームで殺害されたのではないかという話になった。殺した場所から、わざわざ死体を移動させて切断をする必要はないだろうという考えからだ。だが、朝陽が仰向けに倒れていたという事実を考察すると。
「死体が運ばれた可能性が出てきたな」アキラは腕を組んだ。「もちろん、背後から襲われても、何かの拍子で仰向けになることはあるだろうが」
ここからだ。ヒカリは徐々に思考の調子が上がっていくのがわかる。死体が運ばれたと仮定すると、何がわかる?
「わざわざバスルームまで運んだ理由はなに?」
「ないな」アキラが頬杖をついて言い切った。
「ちょっと?」
先ほどからどこか投げやりなアキラに、微妙に腹が立つヒカリである。
せっかく何かを掴みかけているのだ。もっと突き詰めれば切断の理由に辿り着けるかもしれない。ヒカリは考えた。こうなれば、いっそ再現をしてみてはどうだろう。
「アキラ。身長いくつ?」
「身長?」アキラが怪訝な表情をみせた。「……百八十三センチだけど、一体何だ?」
「体重は?」
「七十くらいだ」そこでアキラはヒカリの考えに感づいたようである。露骨に渋面を作った。
「ちょっと寝そべってみてよ」ヒカリは床を指さした。
「マジか、お前……」
アキラはいかにも億劫そうに立ち上がる。そのまま広いスペースに移動し、体育座りをした。後ろに気を付けているのだろう。ゆっくりと背中を床に付けていく。
「はい。ぐったりして」
「はいはい……」アキラがだらんと力を抜いた。完全に仰向けに寝そべった状態になる。
ヒカリはアキラの頭の方にまわった。そのまましゃがみ込み、アキラの両脇を羽交い絞めの要領で掴み、持ち上げる。
「重たい……」アキラの上体を起こすだけで、限界を迎えそうになる。
起きている人間は、完全に力を抜くことは出来ないと聞いたことがある。アキラもヒカリに百パーセント体重を預けているわけではない筈だ。それでもなお、唸るほど重たい。
「うがああ……」アキラを抱えて立ち上がろうとすると、奇声が出た。
「痛い痛い痛い」持ち上げられているアキラの方も、悲鳴を上げる。
ヒカリはアキラの胸の上で両手を組み、無理やりに引っ張った。どこかで筋肉のリミッターが外れたのか、一気にアキラが引きずられていく。
「あてててて!」ついにアキラが叫び出す。
「力が奏でる三重奏ぉ!」ヒカリは構わず引きずった。
ついに入り口のドア付近までアキラを運んだ。
「はあぁ……、はあぁ……。は、運べるもんだね……」ぜえぜえと息を切らし、ヒカリはようやく言葉を発した。
「もういいだろ……? 下してくれ……」アキラがげんなりした声を出す。
ヒカリはアキラの拘束を解いた。放り出されるように、アキラが床に激突する。
だが、死体をバスルームまで運んだということは、脱衣所との微妙な段差を乗り越えたことになる。それは可能だろうかとヒカリは確かめたくなった。そのまま振り返り、入り口のドアを開けた。
「何だ?」アキラが寝そべったまま、ヒカリを見上げる。
「もうちょっと運ぶ」
「おい。腰痛めるぞ。というか、俺が嫌だ」
「ふんっ」
アキラが言い切るか切らないかというところで、再びヒカリはアキラを持ち上げた。今度はスムーズにいった。
「勘弁してくれ……」
肩でドアを支えながら、泣き言をたれるアキラをずるずる引きずる。上手く部屋から脱出することが出来た。
「いけた……」
アキラの足が部屋から出て、ドアが閉まったのを確認する。ヒカリは力尽きたようにアキラを放り出し、自身も床に倒れ込んだ。
荒い息が上がる。目を固く瞑ると、心臓がばくばくと音を立てているのがわかった。
「何、してるわけ……?」
冷たい声が聞こえた。
目を開けると、蓮が引きつった表情でヒカリを見下ろしていた。
「ちょっと……」ヒカリは呼吸を整えながら言った。「SASUKEの練習?」
蓮の視線がアキラに移る。
「罵れ。俺達を」慙愧に堪えないという風に、アキラは顔を右腕で隠した。




