私があの世界に転生する少し前のお話
「『その1
むやみやたらに人に近付かない。』
『その2
出来るだけ敬語で、笑みを心掛けて。』
これ、約束ね?破ったら…そうだなぁ……ケーキでも奢って貰いましょうか(笑)」
は?それより貴女?貴方?誰ですか?
「あぁ……私です?神様です。」
「ふーん神様なんですか?いきなり何なんですか?失礼ですよね?」
何処までも白くシミ一つない純白の髪。
その髪は広く長く何処までも伸びていて、ボクの腕に逃がす物かと絡み付いている……
穢れなき純白の髪とは、裏腹に何処までも暗く濁りきった宵闇色の瞳。
そこ瞳はボクを見ていて、ボクを見ていなかった……
陶磁器の様に白く、少しでも触れてしまえば其処から壊れ切ってしまいそうな程脆く儚そうな腕や首
その華奢な身体を包む緑色の手術着その手術着が彼……彼女……神と名乗る人物が病弱である事を示している様だった。
「あっ……この格好気になる?なら、姿変えよっかな……そろそろ飽きてきたし……」
「そんなにあっけらかんと言っていい物なんですか?容姿って大事じゃないですか?」
「アハハ〜大丈夫。ところで転生って興味無い?」
転生……ッ……なるほどねボクは死んだのか……死んでなかったら転生なんて言葉は使わないもんね。
「そう!大正解!どう?このまま私の元で永遠に一緒に居るって手もありますけど?」
「転生します。」
転生オモシロソウ。決シテ自称神様ガ胡散臭イ訳ジャナイカラナ!
「即答ですか!?まぁ、良いですけど。次の世界で死んだら問答無用で私と永遠に一緒に居て貰いますからね? 」
「嫌ですよ。なんでワザワザ自称神様とか胡散臭い人から離れるのに一緒に居ないと行けないんですか!?」
絶対やだよ。だってこの人危なそう。なんか腹の底に闇とか飼ってそうなんだもん!
危ないよ!危険人物反対〜!
「まぁ良いです。君の作った趣味作品の世界に転生させて上げますよ。ヒロインとしてね?」
「ボクが作った趣味作品は数ありますけど?どれですかね?」
どれだ……『daiyarii』か?『Colours』か?『君に恋して三年目』か?
『君に恋して三年目』は一番最初に作った奴で当時ヤンデレにどハマリしてた時期だからヤンデレのオンパレードなんだよな……
「『Colours』か、『君に恋して三年目』か、『愛と言う名執着を君に……』ですかね……どれが良いですか?」
あぁ〜そういや完成しなかった作品が有るわぁ……世間でいう処女作の前に書きかけで辞めた作品があったわ。
思ったよりグロくなって友達に見せるの辞めたんだわ。まぁ所詮お蔵入りってやつね。あの時のボク病んでたから〜
ところでボクの趣味作品に散々付き合わせた彼女はどうなっただろうか?
彼女には言ってなかったけど、ヒロインのモデルは大体彼女だったんだよね。
何者にも縛られず、それでいて寂しがり屋で情緒不安定気味だけど、優しくボクを包み込んでくれた彼女……
「お友達の安否が知りた?のかい」
「知りたいに決まってます。」
「ふーんそう。じゃあ見せたげますよ。」
そう言って自称神様は如何にもアンティークな鏡を出してきました。
枠の中央上部に、乙女をもしたモチーフから始まり、乙女の髪に絡まる蔦や、蔦から咲き誇る薔薇や菫の花。
凄く精巧で触れると壊れてしまいそう……
鏡の部分は濁りきりとても何かが映る気がしなかった。
「まぁ見てて下さい。彼女面白い事になってますから。」
そう自称神様……メンドイから彼で良いかな……が鏡に手を翳すと濁りきった鏡が輝き始めた。
眩しくて思わず目を瞑ってしまう。
「んん〜もう目を開けても良いですよ。すみません言い忘れてましたね。」
「そうですか……っ……なんで、エメラダが映るんですか?」
そう、鏡には、ボクの娘と言っても過言では無いエメラダが写っていた……
でも……エメラダがオーパルに迫られてるシーンなんて作った覚えはない……ましてやパルシアンとオーパルがエメラダを取りあってるシーンなんて無いのだ……
「なっ……なんで……オーパルとパルシアンが取り合うのはヒロインのはず……」
「その、ヒロインのモデルは誰でしたっけ?」
「彼女……リーちゃん。」
嘘っ……彼女がエメラダに転生したの?
もっとエメラダが救われるストーリーを増やしとけば良かった……
「大丈夫ですよ。彼女……ヒロインですから。」
「えっ?エメラダは悪役令嬢……」
そう。エメラダは紛うことなき悪役令嬢なのだ。
幾つかエメラダがオーパルと結婚するストーリー……ヒロインbadENDが有るけれど……
ヒロインはbadENDを進んだのか!?
それは、それで彼女がモデルなだけあって悲しいが……まぁヒロイン死んでないけどね!?
「いいえ?ヒロインはまだ登場してないんですよね。」
「イレギュラーストーリー……」
「そう。君の大好きな彼女が考えたイレギュラーストーリーですよ。」
イレギュラーストーリー……大好きな今はエメラダの彼女が考えたストーリー。
いや、二次創作と言っても過言では無いかな?
まぁ簡単に言えば一度死にかけたエメラダが別の人格と融合し、エメラダが逆ハーもしくは、彼等攻略対象を攻略すると言うストーリーだったはず。
「彼女は幸せなんですね。なら、良いです。思い残す事は有りません。さっさと転生させて下さい。」
「人使いが荒いですね……行きますよ。また合う日まで……待ってるから。それと、最初の条件忘れないで下さいね。忘れたら魂を狩りますから。」
なんか、彼が意味深っぽいこと言ってるけど気にしなくても良いよね?
彼ってば、神様でも死神なんじゃない?
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「フフフ……私の可愛い可愛いヒロインちゃん、待ってたから。待ってるから。ずっとずっと永遠にね?でも、そろそろ行動に移してもいいと思いますよね……」
そう、ポツリと彼は呟いて彼女が前世息子の様に可愛がった、特にお気に入りだったキャラに姿を変え彼女の後を静かに追った。
勿論この事は彼女は知らないし、彼は彼女に知らせるつもりも無かったと思う。