射撃場
「スタンバーイ」
"ピーッ!!"
号令のタイマーの後、AKやM4ライフルなどの小火器の激しい銃撃に逆巻く砂塵。
5.56mm弾の強烈な発射ガスで砂塵が舞い上がり小麦粉をぶちまけたように真っ白になる。しかしそれ以上の7.62mmといった弾丸はそれ以上の砂塵と発砲音を轟かせていた。
M4タイプのアサルトライフルや主にAKと言ったプライマリーウエポンに加え、グロックが彼らの使用する武器だ。もちろん例外もあり、任務内容や状況により使う武器も異なるが、オペレーターの標準装備はおおよそ統制されている。
この日の気温は32℃に到達。Tシャツ1枚でも汗でビショビショになるほど。 ボディーアーマーをつけた彼らの体感温度はもっと高いはずだ。
点在するバリケードに走り、射撃。また別のバリケードへ走り設置されたターゲットを撃つ。流れる汗の量は尋常じゃない。
アサルトライフルによるシュートonムーヴ。いわゆる移動間射撃訓練。移動しながら射撃し、玉を当てるというのは難しい。まず歩くことにより姿勢が揺れ、狙いがぶれる。にも関わらず、オペレーターたちは移動間も強固に姿勢を保ち、彼らの放つ弾丸は的をほぼ全弾貫いている。その技術を体得するのには時間がかかる。オペレーター達はその事を充分に理解しているからこそ、訓練のひとつひとつを大切にする。
そんな感じで射撃場からはいつも乾いた銃声が響いている。
「何を、そんな…ずっと、見てる?」
アイスコーヒを片手にベンチから射座の方を見る俺にそれまでずっと一緒に射座方向を見ていたアーシャが口を開いた。
「射手の動きを見ている。参考になると思ってね」
アーシャはイマイチ理解していないようなので補足する。
「何事もそうだ。上達したいなら練習することも大切だけど、まずうまい人を見て小さな動きなんかを覚えること。それだけでも充分に意味はある」
「マスターの、動き…無駄、ない。迅速でかつ適切…」
一緒に訓練をするごとにアーシャも俺の動きを見ているのだろうか。
「そうかな。アリスからはまだまだって言われるけどね」
もっと早く。さらに高みを。アリスからそう言われてきた。そのためには訓練と実戦を重ねる。
「私は、早く…戦いたい。マスターと…一緒に…」