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第39部分 分け合えば余るもしくは遠慮の塊

今回の文字数は空白、改行含め4055字です

「ごちそうさま」


 俺はすり鉢を俺を見下ろす三人の目の前でひっくり返して見せた。


「ちょっと。あんた何やってんのよ! 勝負が台無しでしょうが!」


 桂木は俺の胸ぐらをつかんだ。


「いや。悪い。でも。グ、グ 苦しい」


 興奮する桂木。


「やめなさいって。綾乃。敗けたからってキレることないでしょ」


 篠原さんが桂木の肩を叩く。


「あーちゃん落ち着けって。それに篠原さん。今のは俺の勝ちだよ」


 村木が俺と桂木の間に間に入ると、桂木もなんとか手を離してくれた。


「な、なんだよ? 俺はそう言う風にならないように三人分まとめて喰ったんだぞ?」


「そう。だから私の勝ちだもん」


 篠原さんが鼻をつんと上に向けて勝ち誇る。


「え? どういうこと?」


 俺が尋ねると村木が説明してくれた。


「俺たち賭けたんだよ。お前が誰のを食べるかって。それで篠原さんはお前は全員のを食べる。に賭けたんだ」


「そうよ。だって山川。やさしいもん。絶対みんなのを食べてくれるって」


「え? 篠原さん。俺に必ずどれか選べって」


「ほら。インチキしてると思われても困るでしょ?」


「それにさ」


「うん。なあに?」


「山川は人の命令なんか聞かないってこと二人にもわかってもらえなきゃ。だったし」


「まあ。確かに俺はちょっぴりワルのイケテル男子だからね。人の言いなりになんかならないよ」


 篠原さんは村木と桂木の顔を交互に見比べて言う。


「ね。今朝のアレも私がやらせたんじゃないって。わかってくれたでしょ?」


「いや。やらされましたけど!」


 さすがにツッコんだ。


「まさか。わたしにやれって言われてもあんなことやらないでしょ。フツ―。よく考えてみて。山川」


 俺は彼女に言われてよく考えてみた。


 確かに彼女はおちゃめに俺に『山川ロボ発進』だとか『篠原、行きまーす』とか言っていたけど……


 なんか、耳とか乳首に触れられたけど……


 言われてみればその通り。


 なにも彼女は裸で教室を走れって言ったわけじゃない。


 ここは俺のヤバさを全面的にフィーチャーだ!


「ああ。ごめん。ごめん。ホラ俺ちょっぴりワルのイケてる男だから。教室の窓を割ったりなんかはしないけどあれくらいは……ね?」


 これでいい…… よな?


「いや。待ってくれ」


 村木だった。


 あ。やっぱりそうだよね。


 村木弁護士からもちょっと言ってやってださいよ。


 確かに彼女を怒らせちゃったけど。あれはやりすぎだよな。


 あの拳を上げてくれるフォローがなかったり篠原さんが俺のドラッグ疑惑を晴らしてくれなかったりしたら……


 下手すりゃ病院送りか退学もんだよ。


「今朝の事は置いておくけど。山川は最初に俺が作ったミートボールに手を付けたんだ。俺の勝ちだろ?」


 あら。いいみたい?


 今朝の俺の全裸紀行よりも賭けの結果が気になりますか? 


 村木君。


 村木は今朝のことに触れずに篠原さんに詰め寄る。


「待ってよ。あー君。一番多く食べたのは私の味噌汁だよ。私の勝ちだって」


 ですよねー。


 桂木さんはそうでなくっちゃ。


 今朝の事ガン無視。


 桂木が結構な勢いで篠原さんと村木が話しているところにに割り込んでいく。


 俺はそんな様子を心の中でツッコみながら呆然と眺めていた。


 まあ、俺の全裸紀行(教室編)はいつの日か武勇伝として語ればいいや。


 夜の校舎で窓ガラスこわして回るより笑いが取れるはずだ。 


 ところで誰が誰の弁当を持って来たかってことだけど。


 つまりこういうことか?


 重箱は篠原さん


 ダークマターは村木


 味噌汁イン ザ すり鉢は桂木。


 それにして俺の予想は全く外れてるじゃねぇか!


「なあ。桂木。お前あのすり鉢わざわざ持ってきたのか?」


「持ってこなきゃここにないでしょうが!」


「あんなのフツ―持ってこねえだろ。お前は仮にも女子高生なんだから」


「そんなのアンタの思い込みでしょ。うちのおばあちゃんが教えてくれたのよ! ヘルシーでおいしいくて栄養があって外でも簡単に作れるからって」


「ふーん」


 いい話なんだか笑い話なんだかわからない!


 だって、孫娘の遠足の弁当にすり鉢持たせるって…… おばあちゃん。


 重いだろ!


 桂木の事はまあいいや。


 コドモ女豹も健康に気を付ける。


 そういうことね。


 まあ、昨日はコイツ肉ばっかり喰ってたからな。


 それより篠原さんだ。


 彼女は外見より中身を褒めてほしがるタイプ。


 しかも……


 俺が誰か一人の弁当に決めずに全員分食べるって。


 わかってるぜ。


「篠原さん。すごいね。あんな重箱作れるなんて」


「私だって一応女の娘だからね。あれくらいはって……ウソ。ごめんね。みんなでいろいろ分けて食べると楽しいでしょ。お取り寄せしておいたの。今朝うちに届くように」


「いいね! みんなで分け合うって楽しいもんね」


 知らんがな。


 俺はメシを分け合って喰ったことなんてないんだから。


 ま、もちろんキャラを作ってでも篠原さんを褒めておく。


 お次は村木だ。


「お前。何だよ。あのダークマター。お前。喰えんのか?」


「山川。悪い。ダークマターってなんだ? 俺のはミートボールだぞ。一応手作りだ。昨日お前に肉食わせてやれなかったからな」


 え? こいつ。そこからかよ?


 ラノベや恋愛シミュレーションゲーム好きの奴なら一発で通じるのに。


 くそ。やっぱコイツとはわかりあえないかも‣……


「まあいいじゃない? ここは私の勝ちってことで」


 篠原さんが俺たちの顔を見くらべながら言う。


「いや。これは物言いだ」


「え? 物言いって?」


 篠原さん口元に人差し指を当てて首を傾げた。


「そうだぞ? 村木。俺は全部喰ったんだから全部食べるに賭けた篠原さんが勝ちだろ」


 物言いは確か勝負の決着にクレームを付ける的な意味だ。


 ならば。


 ここは全力で篠原さんを応援するに決まってる。


 村木は言った。


「いいや違うな。ミートンボールと重箱の料理はまだ残ってる。つまり。3人分食べたとは言えないな。俺も先に食べたという主張を引っ込める。あーちゃん」


「へ?なあに?」


 桂木はいつの間にか一人シートの真ん中に胡坐をかいて村木のミートボールをモグモグと食べていた。



 そしてそれに気が付いた篠原さんと村木は並べられた食べ物を囲むように座った。


 俺の右が篠原さんで左が村木。正面が桂木。


 まあ。悪くない位置取りだ。


 篠原さんが隣にいて、女子との話に疲れたら村木に援護射撃を頼みやすい。


「食べてるところ悪いんだけど。あーちゃんも量が多いから自分の勝ちって主張を引っ込めてくれる?篠原さんにも主張を引っ込めてもらう。それで水入りってことでいいかな?」


「村木。悪い。水入りってなんだ?」


 村木は主張だとか水入りだとかなんか難しい言葉を使う。


 こいつ。政治家になるつもりだからって。


 煙に巻くなよ。


 篠原さんだって眉間に皺を寄せて首を傾げてるじゃないか。


「ああ。相撲用語だ。勝負が決着が付かなくて一時中断することを水入りって言うんだ。悪いな山川」


「なんだ?」


「お前見てたら相撲用語がでてきちまった」


「別に。謝ることじゃないだろ?」


 篠原さんは俺の体をお相撲さんみたいだからって気に入ってくれてるんだから。


 むしろ誇りに思っている。


「ま。そうだな」


 村木はそう言うと篠原さんに尋ねた。


「篠原さんはどう? それともなにか主張する」


「あたしは別にいいわよ。村木君は議論の相手としては合口が悪いもん」


 村木と篠原さんはなぜか見つめ合って微笑みあった。


 なんだ? アイクチってなんかのギャグか?


 村木に聞いてみた。


「なあ。アイクチってなんだ?」


「ああ。ゴメンね。知らない人が多いよね。お相撲で勝負の相性が悪いことをそういうの」


 篠原さんが説明してくれた。


 やさしいな。


 篠原さんは。


 それに引き換え村木は。


 珍しい言葉を使いたがりやがって。


 お前は覚えたての流行語を使いたがるどこかの政治家か!


 失言には気を付けろよ。まったく。


 たかが一時中断を水入りだななんて。


 第一なんで水を入れるかわからない。


「なんで水なんだよ」


 村木に聞いてみた。


 桂木が反応した


 桂木が相変わらずモグモグと口を動かしながら水筒のコップ代わりに蓋を俺に差し出す。


 覗き込むとそのコップには駄菓子屋で売っているような粉末のコーラのパッケージが入っていた。


「お。サンキュ。俺結構これ好きなんだよな」


 桂木は頷くと相変わらずモグモグと口を動かしながらコップをシートの上に置き粉末コーラのパッケージを破って粉を入れると水筒から注いでくれた。


 湯気が立っていた。


「なんでお湯入れんだよ? コーラだぞ?」


 桂木は片手をあげてストップのサイン。


 モグモグを止めて食べ物を飲み込むとまくしたてた。


「だってあたしお湯しかもって着てないもん。飲みなさいよ。ホットコーラ。あんたもらったものは全部いただくんでしょ?」


「まじかよ。まあ、食べ物は無駄にできないから飲むけどさ」


「あ。それからさ」


「なんだよ?」


「トリュフ取って」


 俺は重箱を覗き込んだ。


「ねえぞ。そんなもん。あったとしてもわかんない気がするけど」


「あ。ゴメン。あんたならトリュフ見つけられかと思って」


「なんでだよ?」


「トリュフはブタに探させるもんでしょうが!」


 鼻息を荒くして桂木は言い切った……


 

次回予告

桂木が何やら青春トークを始めますが……

第40部分 『ゴメンですんでもトイレは必要』

4月21日(月)午前7時掲載予定です

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