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第30部分 裸の付き合いは時と場所を選ぶべき

今回の文字数は空白、改行含めて1889字です

「ちょっとどういうことなの? 説明しなさい! その前に服を着なさい!」


 前川先生の声が響く。


「す、す。すいません! でも服がないんです!」


 俺は裸でしどろもどろに説明する。


もちろん分身は俺の両手の手のひらの中に隠してある。そして、かなりの前屈み。


「ここにありますよー! こっちこっち!」


 サーティーンがほがらかに教えてくれる。


 え?


 サーティーン?


 声のした方を見た。


 彼女は窓からこちらに体を乗り出していた。


 どうやらベランダにいたらしい。


 右手に焼きそばパン。左手にトランクス。振り回している。トランクスだけ。


 そしてなぜか制服の上から学ランを羽織っていた。


「今もってくからねー」


 彼女は焼きそばパンを小さな口を大きく開けてはむって咥えた。俺の服をわきに挟んでそれから窓の枠に手をかけた。左右を見渡し窓の桟に片足をかけた。


 まさか君は窓の枠を乗り越えてくる気じゃないだろうな……


 正気か! 君はミニスカートなんだぞ!


 絶対、瞬間、パンツがチラリ。


 俺の経験が語っていた。


 中学時代に数々のパンチラスポットを狩場としてきた俺だ。


 俺の経験が警告していた。


 あの頃俺のパンチラチャンス


 現在彼女のパンチラリスク


 あの頃ホントは攻めてた土下座タイム


 現在ホントに守護する仁王立ち


 俺は駆け寄って窓の桟の上でバランスを取る彼女の前で両手を広げて叫んだ。


「頼む! 彼女を見ないでくれ!」


「キャー!」


 黄色い悲鳴が上がった。


「そんなもの見せないで! 早く服を着なさい!」


 前川先生が怒鳴った。


 先生の顔を見ることしかできない俺の背中に何かの重みが加わった。


 ビミョーな三つの膨らみ。背中に二つと腰に一つ。


 俺の両脇から見える膝。


 つまり俺は彼女を背負っている。裸で。


 みんなが見ている。


 それがどうした! 


 両手は彼女の膝の裏を掴んだ。


 サーティ―ンが言った。


「山川ロボ、発進!」


「えっ? どこへ?」


「え? 発進してくれないの? どうしたらいいんだろう?」


 俺の耳にかかる吐息。彼女のつぶやきを差し置き俺の脳を刺激する。


 耳たぶに軽く振れた彼女の唇。


 鼓膜を震わす甘い囁き。


「サーティーン、行きまーす。って言えばいいのかな?」


 俺の乳首が弾かれた。


「うひょっ!」


 俺は颯爽と駆け出した。空飛ぶ戦艦のカタパルトから打ち出されたロボットみたいに。


 見てるだけの奴らが俺たちを見ながら椅子や机を前に後ろに引いていく。


 「あはははは! まるで割れる海の様だ!」


 思わず声に出した。


 爽快だった。


 俺と二人の進む道は今、開かれた。


 いざいかん! 


 大海原へ!


 呆気なく壁に閉ざされた……


 俺は彼女を背負いながら廊下側の壁を目の前にしながら立ち尽くしていた……


 何て狭いんだ。俺たちの教室は!


「村木君! 桂木さん! 後はお願い! 先生は二人を保健室に連れていくから!」


 前川先生がカツカツと足音を響かせて近づいてきた。


「先生!」


 村木の声だった。


「その必要はありません! 山川はドラッグなんてやってません!」


「どういうこと? 奇声をあげて教室で裸で走り回ってるのよ? それしか考えられないじゃない!」


「山川。説明しろ! 本当のことを言ってくれ!」


 そんな事言われても……


『俺はただ一時の快楽に身を任せただけだ』


 言えるか! そんなこと。


「先生! 私が説明してもいいですか?」


 彼女は俺の背中から降りると言った。


「その前にあなたは誰なの! どこのクラスなの! 言いなさい!」


「1年A組 篠原奈緒です。テヘ。ペロ」


 彼女は目元で裏ピース。


 もちろん片足はつま先立ち。


 腰を廻してぐるりと辺りを見渡した。


 違うよ。サーティーン改め篠原さん!


 テヘ。ペロじゃない! てへぺろ、なんだ……


 あの時ちゃんと指摘しておくべきだった。


 クソっ。


 涙なんか流していないでちゃんと言葉で指摘するべきだった。


 あの時から分かっていたことなのに!


 どうして人は人の間違いに気づいていながら何も言ってあげられないものなんだろう……


 俺のせいで彼女の高校デビューが台無しだ!


 いや、待てよ。まだ間に合う。


 俺は彼女を庇うように前に出ると叫んだ。


「みんな! 俺の話を聞いてくれ!」

次回予告

山川の訴えは届くのか?

第31部分 『信じるんじゃない! 信じるって決めるんだ!』

お楽しみに

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