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第21部分 立場が変われば気持ちも変わる

 おかしなことは感じてた。


 あの白い衝動のニオイ……


 彼女は俺には関係ないって言ってたけど……


 わかんねぇよっ!


 言えなかっただけかもしれないじゃないか!


「おい、どうした? 大丈夫か? 山川!」


「あ、悪い。考えるのに集中しちゃって。なあ、村木。一つ聞きたいんだけどさ」


「何だ?」


「お前は俺を疑わないのか? 俺もサーティーンの仲間だって」


「いや全然。お前は覚えてないみたいだけどお前人質に取られてたんだぞ? 首絞められて気を失ったんだ。すぐに気が付いたからよかったけど。だからお前が彼女の仲間なんて全然考えなかったよ」


 俺は何気なくズボンの太ももの辺りに触れてみた。よかった。漏らしてはいなかったみたいだ。絞め落とされると漏らしちゃうこともある。彼女の前で漏らさなくてホントによかった。


 そうか……


 彼女は俺を絞め落としたのか……

 

 いや……


 待てよ。


 俺とトイレで会う前に彼女にはいろいろあったみたいだし……


 ただ俺にしがみついていたかった、という可能性は捨てきれない!


 村木に揺さぶりをかけてみるか。 


「なるほどね、でも俺、一応元カレなんですけど」


「もういいよ。そういうの。元カレを絞め落とすような元カノはいないだろ?」


 村木は冷静、というよりは冷たく言った。


「え? お前らだってさっきまで元カノ元カノ言ってたじゃないか」


「あれは盗聴されてることを意識してやった芝居だよ。そういう方が彼女は俺たちに連絡しやすいだろ? 彼女はスマホを取り返したいんだろうし」


「え? お前そんなこと考えてたの?」


「ああ。俺たちは拉致されそうになったなんてことに気づいてない。だからこの事で警察に相談したりしない。逆に力になりたいから連絡くださいってことを伝えたかった」


「でもなんでそんな面倒なことするんだ? 俺がお前の立場で考えたら警察に相談するぞ。お前は拉致されかけたって考えてるんだろ?」


「警察はこれくらいじゃ動かないよ。俺たちの証言しかないんだし。警察ならスマホのロックを解除して中身を見ることが出来るかもしれないけどお前も彼女を売るような真似はしたくないだろ?」


「なあ、村木。お前なんでそこまで考えてくれるんだ?」


「お前の力になりたいからって言ったら信じるか?」


「え?」


 俺は思わず村木の瞳を見つめてしまった。


 村木の言葉の裏側の本音を読み取りたかった。

 

 村木が真剣な目で俺の瞳を見つめ返していることしか分からなかった。


 照れたように笑うと村木は力を抜いてソファの背もたれによりかかって微笑みながら言った。


「ま、それはついでだけどな。敵を敵のままにしておくよりも仲間にできるならその方が安全だろ? まあお前らがホントにドラッグキメてたバカップルなら話は全然違ってくるけどな」


「しつこいな。俺も彼女もドラッグなんて手をださねえよ。そんなこと何度も聞くか? フツ―?」


「フツ―の奴はな。チャックを閉め忘れることはあっても人質にされてるときに勃起しないぞ? 覚えてないのか?」


「記憶にございません」


 政治家風に言ってやる。


「オシッコ漏らしたのも? まあ、丸出しだったからある意味、逆によかったけど」


 気が付いたら叫んでた。


「ある意味逆に、じゃねぇよ!」


 村木は子供に言い含めるみたいに言う。


「気にするな。俺もあーちゃんも絞め落とされて失禁しちゃった人を笑えない。それに彼女だってさすがにフォローしてたじゃないか」


 こいつや彼女が知ってるわけないか。


 『失神オニごっこ』


 俺の中学で流行った狂ったゲーム。


 捕まった奴には狂った罰ゲームが待っている。 


 追いかけられるのは俺しかいない狂ったオニごっこ。


「そっか。悪かったよ。いい加減お前らがいい奴ってのは認めてやるのもやぶさかではないのかもしれない事は認めてやってもいい」


 俺はそっぽを向いて呟いた。


 村木の笑顔を目の端で感じていた。


 村木よ。


 キレイな顔して微笑む村木よ。


『人を動かすにははいろんな方法があるんだよ。チミィ』とかって早く言ってくれ。

 

 その方がある意味逆に安心できるんだ。 


 クソっ。


 明日の遠足大会ではお前らなんか放っておいていろんな女子と仲良くなってやるからな!


 俺はリア充の中のリア充、リア王になる男なんだから!

お知らせ

次回からの3話はサーティンが語ります

山川の再登場はそのあとです

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