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愚者の異世界旅行録  作者: 紫水
旅路と邂逅
8/33

8話

暫く歩いているとやっと遠くに外壁がみえる。


少し開けた場所にでて、山から降りている途中ということもあり見下ろす形で街がよく見えた


まだ随分距離があるが、日がくれる前には着けるだろうとフールは適当に腰を下ろした


やはり歩き続けているせいか腹の虫が盛大に苦情の声をあげていた。


(ちょっと見ないうちに知らない生物が増えてる・・・)


フールの視線の先には三つの異なる茸が生えている。ただの茸なら無視もできただろうがそれらはひどくフールの好奇心を掻き立てた。


激しい抗議の声をあげる腹の虫を抑え手元に図鑑を喚びだした。


一つはシュッとしたシルエットに平らで少し反りかえった艶々した黒い笠を持った茸


もう一つはすらりとして真っ白で控えめな大きさの笠を持つ茸


そして最後にずんぐりとしたまるっこいシルエットのやけに大きな茶色い笠を持った茸だった。


図鑑の写真と説明を指で辿りながら特徴や説明書きを流し読むと、名前の欄をそれぞれ確認した


ナルシス茸。メンクイ茸。そしてクビッ茸。


それを見てああなるほど、とフールは納得する


なぜなら、その茸は見事にドラマばりの三角関係を披露していたからである。


メンクイ茸はナルシス茸にクネクネとモーションをかけ、クビッ茸はそんなメンクイ茸の気を引こうと胞子を出している。因みにナルシス茸は小さな水溜まりに姿を映してくるくる回っていた。


(これはあれだろうか、自分大好きなナルシスト系イケメン男子に引っ掛かった美人の気を引こうと一生懸命なフツメン男子的な)




ジーーーと茸界の茸模様を観察し、結局ナルシス茸とメンクイ茸が暗い森に消えるのをみたクビッ茸が悲嘆に暮れるようにブルブルと震えたあとキィーーと悲しみの声を上げ縦に引き裂ける悲劇の終演を見届けてから空腹を思いだし、バスケットを開いた


よく中をみると、手紙と一緒に何かの種だろうかやけに目に染みるオレンジ色の種が入っている


その小さな手紙には神経質な文字でこう書かれていた


『執事のメリーで御座います。ご主人よりこの種をフール様にお渡しするよう言付かりました。なんでも大変役に立つものが実るとか。受け取り次第すぐに土に埋め水を与えればすぐに使える位に育つ、だそうです。直接お渡ししようとも思ったのですがフール様も旅の準備で忙しそうでしたのでこのような形にさせて頂きました。』


何だか嫌な予感を感じたが、まあ受け取ってしまったし試さないとパンプキン卿が五月蝿いだろうからとフールはすぐ足元にその種を植え魔法で出した水を無造作にかけた


すると種からあっというまに芽が出、蔦が伸び実ができた



嫌な予感はどんどん大きくなり、その全貌が明らかになるにつれフールの血の気は引く


「ひほほほほーーっ!?」


それは奇声を発しながら土から根ごと抜けようとしてーーー失敗した。


フールが魔法で土を盛り上げそれを埋めたためだ


フール思った。



ーーあの南瓜、いつか()る。と





ーーーーーーーーーーーー


世界生き物大全~植物編~最新改訂版


P18、19、20から


ナルシス茸


分布地は広く、湿気の多い森に群生する。しかしある程度他のナルシス茸とは距離を置く。なぜなら彼らは自分と同じ姿の他のナルシス茸が嫌いだからである。自分が一番美しく高貴で美味であると信じているので嫌悪しているのだろうと推測できる。水溜まりに映った姿を前に奇行にはしるので、見付けやすい。因みに食用ではあるがあまり美味しくはない。


メンクイ茸


P18のナルシス茸があるところにだいたい群生する。メンクイ茸は同じ所に同じ個体が存在するためしばしば仁義なき戦いが繰り広げられることがある。毒があり、その毒は胴体の中に水分のように蓄積されており血のように赤い為、メンクイ茸同士の戦いは血で血を洗うおぞましいものに見える。食すとひどい頭痛、目眩などに襲われ死ぬこともある


クビッ茸


メンクイ茸の群生地に稀に確認されるが極めて珍しい茸。大変美味で数も少ない為に高値で取引される。メンクイ茸にアピールする為に胞子を飛ばし、その胞子には解毒成分が含まれている。前述したように大変美味だが、それはあくまでメンクイ茸に振られる以前の話であり振られたあとの個体は高い声で鳴き縦に引き裂けてしまい直後には萎び干からびて黒いゴムのようになり食せなくなる。※高値で取引されるのは萎びていないクビッ茸である



以下、前述より注意


▼世界生き物大全は植物、動物で大まかに分けられており動植物は未だに曖昧なものも多い為に割愛し、二つの分類で分けられています。


詳しく三種で分けられた分類を知りたい方は専門書を別でご用意下さい。


また魔素を持たない生き物は記載内容に含まれておりません





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