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修羅の騎士団  作者: 翠嵐
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死神部隊、出動 2

「アオイ〜、まだか〜。」


「もう少し待ちなさいって。」


「さっきからそれしか言ってねーじゃーん。」


「二分ごとに同じこと聞いてくる奴に言われたくないわね。」



草木も眠る丑三つ時、私とレッドはある朽ちかけた古城の前にいる。




レンヤの報告によれば、盗賊の連中は、最初の二件で商隊を襲い金品を強奪したが、その後被害にあった所では目立った盗難はなかったとのこと。

完全に後半の狙いは殺しだ。




――出動前の話し合い。



「しかも連中はリシェス国から、さらに言えばナタール地方からもほとんど出ていない。」


「それなのに300人も死ぬもん?」


「ナタール地方駐屯の『兵士ソルジャー』及び、応援にきた他地方の『兵士ソルジャー』………まあ、ようはリシェス国の『兵士ソルジャー』全滅。死者の半分はこれだな。」


「なっさけな……。」


「まあ、盗賊の連中もなかなかの腕利きってことだ。」


「そういえばブルー、盗賊団の概要。」


「あぁ……。えーと、まずグループ名。グリム・リーパー。」


「まんま『死神』かよ!!」


「そ……。で、リーダーがアサヒって奴。けっこう若くて、なんかチャラチャラしてる。」


「人数は?」


「100か120。なんでも、そこらのごろつきを集めて作ったらしく、烏合の衆かと思いきや、まとまりがすごいらしいよ。裏の方じゃそこそこ有名。意外と情報集まったのよ。」


「そのアサヒってやつ凄いな。」


「そうね。あの荒くれどもをまとめるなんてなかなか出来ないわよ。」


「天性の才能だな。」


「こういうのを『無駄な才能』って言うのよね。」


「「「だな(ね)。」」」















「早くアサヒって奴と殺りあいてぇな……。」


隣で伏せているレッドが呟く。


今、私とレッドだけ、城の前の木の陰に隠れている。

理由はもちろん、この古城がグリム・リーパーのアジトだからだ。

レンヤとブルーは違うところで待機している。


もちろん作戦。今は二人からの連絡待ち。しかしそれにレッドが飽きている。


「あー、暇だ。これだから伏兵は嫌なんだよ……。さっさと突入して暴れてぇな。」


「人選ミスかな……。」


「さらりとヒデェ事言うなよ、アオイ。」


「少し黙って。」


「ヘイヘイ。」


やっと静かになった。本当なら敵陣の前で話をするもんじゃないけど、幸いにも古城の入口、古びた門の前にいる(武装した)見張りの男二人はおしゃべりに夢中だ。



――フクロウの声が時折聞こえる。

……隣のレッドがあまりにも静かなものだから寝てるんじゃないかと心配になって小突いてみたら案の定、半分夢の中だったようだ。

口をふさいでから頬をつねってやった。声を出さずに涙目になってた。


いい加減真面目にしろ。

そろそろだ。




『……こちらレンヤ、こちらレンヤ。準備完了。』


しばらくすると、無線機から声が入ってきた。これはレンヤとブルーの準備が整い、いつで出動OKということだ。


「こちらアオイ。了解した。作戦を開始する。」


返答をすると、短く返事が返ってきた。

その声を聞きながら見張りの連中から死角になる木の後ろで静かに立ち上がる。



                *                  *


草の隙間から双眼鏡で敵陣の視察。

まあ、視察といってもだいたい五十メートル先の銃を構えた野郎二人をみてるだけなんだがね。

いてて……。


視線を上にやると、木を背中にしてアオイが立っていた。


戦闘準備万端、って顔してる。



今のアオイは『騎士ナイト』の白いコートを着ていない。

戦闘時用の黒いノースリーブとショートパンツ、ベルトとブーツまで真っ黒という、完全闇討ちスタイルだ。

ベルトにはナイフとアオイ愛刀の仕込み刀。

この刀も黒いが、桜の絵が描いてある。普通の刀より少し短いがアオイにはちょうどいいらしい。


俺たちは夜目が利くが、今は月明かりもほとんどない闇だ。

肌だけが浮かんでいるように見える。




そんなことを考えていると、アオイが突然飛び出した!


木と草の陰から、草とすれる音も出さずに飛び出し、五十メートルの間合いを一気に詰める。


極限まで気配を消したアオイに連中が気付いたのは、もう、すぐ目の前に来たときだった。


下ろしていた銃口を上げた時にはもう遅く、アオイはすでに二人の後ろに立っていた。




――いつの間にか取り出していたナイフで奴らの喉笛と頸動脈を切り裂いて。




声を立てずに、鮮血を闇に撒き散らしながら二人は崩れた。




何時もながらの早業。


横に並んでいた二人の間を通り、左右の二人の喉を掻っ捌いた。


言葉にすれば簡単だが、ナイフ一本で、しかもほぼ同時に仕留めるなんて、並大抵の軍人でも出来ないだろう。

さらに相手は銃で武装していた。それを臆することなく突っ走るなんてなぁ………。


先代ナイトウォーカー……どんな教育を……。



呆れながら双眼鏡を覗いていたら、アオイが手招きしていた。


一応周りを警戒しながら立ち上がり、服についた土を払う。


傍らに置いておいた荷物を持ってアオイの元へ駆け寄る。



「クリア。行くよ。」


そう呟くとクルリとナイフを回して持ち直した。


俺も荷物から、消音器サイレンサー付きのハンドガンを二丁取り出す。



門の周辺を見渡すと、小さなランタンと死んだ二人が飲んでたとおぼしき酒ビンがあった。

そして、門を開けるものと思われるレバー。


ハンドガンを一旦アオイに預け、レバーに手をかける。


「おら!!」


力任せに、上に上がっていたレバーを下ろす。



ギィィイイ………



耳障りな悲鳴をあげて観音開きの門が開く。

ひどくゆっくりとした動きにじれったさを感じ、うるさい音にイライラする。


そんな俺に、ハンドガンを返しながら、顔を覗きこんできたアオイが微笑む。


その顔を見て、少し落ち着いた。


「……入ってすぐ二人。」


うるさい中でアオイがぼそっと言ったことは確かに聞こえた。


アオイの左側に立っているので、振り向いても右目は見えなかったが、



『天啓』か。





そんなやり取りをしていると、やっと門が人一人通れるくらい開いた。






―――始まるぜ。




「Let’s go.」




アオイの声を合図に地面を蹴り、門の中に滑りこむ。



小さな灯りがついた薄暗い部屋。元々は物置だったらしく、古びた木箱が点々と置いてある。


部屋の奥に通路がある。

そこから足音が聞こえてきた。


反響していて人数はわからない。

が、二人。



アオイがそう言ったのだから。




足音が近づいてきた。


片膝を立てて銃を構える。




通路から人が現れた。

人数は二人。

逆光で真っ黒に見えるが、背格好からどちらも男。

外で死んでいる二人とおなじように、安っぽいショットガンを構えている。




――連中が俺に気付く。



――銃を構えた。



しかし、



「!!侵にゅ「おせぇ。」


二丁のトリガーを引く。


狙いは頭。


ドカンとした発砲音はない。

バスッとくぐもった音と両肩に響く反動。



まぬけな発砲音とほぼ同時に吹っ飛ぶ二人分の脳髄。



どさりと倒れた亡骸は、半分なくなった頭の周囲に血だまりをつくる。





「……クリア。」


「よし。」


いつの間にか背後にアオイがいた。門も開ききって、耳障りな音はしなくなっていた。


背中を叩かれて立ち上がる。


空の薬莢がカランと転がる。



「休んでる暇はないよ。レンヤたちが動いた頃だ。」


「休んでねーよ。……わかってる。」



声をかけたアオイに顔を向けずに返事をして歩き出す。



死体をまたいで通路の先へと歩く。

通路はランタンがたくさん点いていて明るかった。

二人は横に並んで歩けそうだったが、俺が先に歩き、後ろにアオイが続く。



最前線を行くのは戦闘員の仕事だ。

隊長をかばいながら、石でつくられた無機質な通路を、気配を気にしながら進む。





「……上手くやってるみたいね。」


後ろでアオイが呟いた。

なんのことかと思えば、レンヤたちの事だとわかった。

歩みを進めるたびに大きくなっていく銃撃戦の音。


「いいな〜、俺もそっちがよかったな〜。存分に暴れられんじゃん。」


「文句は言わない。どうせすぐ暴れられるよ。」


ため息まじりにそう言ったアオイに笑いかけると、苦笑いがかえってきた。









――通路を抜けた。出た先は広いホールだった。

所々ヒビが入って欠けている柱、タイルが剥がれた床、散らばった酒ビン……

現役だった頃は知らないが、一目でわかるほど荒れ果てていた。



そして、さらに奥の方では銃声と叫び声が響いている。



「ヒデェな……。」


「そうね。」


さほどひどいとは思ってないようで、簡単にかえされる。


何かを探すようにキョロキョロしているアオイ。


俺としては、この広いホールに敵さんが誰もいないのにかなり不満。


どうしようかと考えながらハンドガンをいじっていたら、真面目な顔でアオイが言った。


「……戦闘準備。」


その言葉に反射的に体が動いた。

ハンドガンのトリガーに指をかけ、アオイの背中に立つ。



「……くる!」


その言葉とほぼ同時に、通路の向かい側にあった扉が勢いよく開いた。



人が流れ出てくる。

二十人くらいだろうか、目立った武装をしているのは半分。


真っ正面に立っている俺たちにほぼ全員が気付き、

銃を向ける者、

怪訝な顔をする者がいる。



「……貴様ら、何者だ。」


一人の男が、人のなかを掻い潜って前に出てきた。



淡い金髪、水色の目。

ネックレスやらブレスレットやらをじゃらじゃらと着けた軽そうな青年だ。



……なんか、チャラチャラしてるね。



「あなたがアサヒ?」


アオイの問いかけに全員が反応した。

ビクッと体を震わせて。


ビンゴか。

分かりやすいな。


「……美少女に名前を呼ばれるとは嬉しいね。そうだよ、俺がアサヒだ。」


軽そうな男が答えた。

気丈を保とうとしているが、あきらかに動揺がうかがえる。


「もう一度聞く。お嬢さんがた、何者なんだい?」



殺気が漂う。

いや、漂うと言うより、刺さるだな。銃を持っているからか、俺に強く感じる。


だけど連中は撃ってこない。


多分、アオイの不思議なプレッシャーに圧されてるんだ。




アオイが、クスリと笑った。


そして、左足を一歩下げた。

右肩が連中に見えるようにして。



アサヒをふくむ、ホールにいる連中がざわついた。


驚いているのだろう。









アオイの右肩に大きく描かれた『死神』に。








「死神だよ。」


拍子抜けするくらい軽く言ったアオイに、連中が戸惑う。


なにがなんだか訳がわからないのだろう。



だか、アオイの一言で、空気が変わる。



「ストラテウマのね。」




戸惑いの空気が消えた。

刺さる殺気がさらに強くなる。








――嗚呼ああ、やっぱりこうでなくちゃ。




頬が緩む。

抑えられない。


目が合った奴が小さな悲鳴を上げた。


きっとレンヤ以上の悪人面になってんだろうな。








――さあ、





「お礼参りだ。」








――狂おうか。


戦闘描写が難しいです。

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