天使はメドゥーサに進化した!
【9月14日】
艶のある髪の毛がメドゥーサ化して早2週間。
今度は化粧すらして来なくなった。
【9月21日】
さらに1週間後には・・・
目の下に青色が沈殿し、心なしか最初より痩せていた。
や、やばいぞ……。体中から負のオーラを放ち始めている。
その只ならぬ様子に、姉御が落ち着きなく自分の茶髪をいじくり回していた。
動揺しているのは姉御だけではない。
あのダンディーなオジサマが、起きていらっしゃる....!
オジサマは、いつもカバンを膝の上で抱きかかえるように眠っていた。俺らが対抗心の火花を飛び散らせようが、吹雪で電車が止まろうが……決して体制を崩すことなく安眠を貫く超マイペースなお方なのだ。
なのに……
再確認させられる、始発列車の奇妙な連帯感。
少なからず良い空気を入れてくれた彼女が、黒く黒く…濁っていく。
皆、心配で仕方なのだ。
俺だって、彼女の姿勢に触発されて今の自分がいる。
だが所詮、赤の他人。
話しかけようなどという気は皆無、顔すら滅多に合わせない。
それが暗黙のルール。
それに、彼女には変わっていないものもある。
俺は黒髪ちゃんを一瞥すると・・・・
――容姿を整えるより先に、予習復習に時間を当てていた。
大丈夫だ、彼女は強い。
結局誰一人、声をかけることは無かった。
……その月の終わりの事だった。
仕事を終え、駅のホームへと向かうと――
帰りの列車が、運転見合わせになっていた。