森の奥でドラゴンに出会った
サブタイトルは、『ウルルン滞在記』のOPのMC調で♪
・・・わからなかったらごめんなさい。
リアルワールドに帰れる満月の日まで後2週間。
供物(と言う名の私の食事)は、3食しっかりとお供えしてくれるし、服も毎日洗濯されて清潔なものを提供してくれているけど、何もしないのに(いや、充分したか?)生活させてもらうのもなんだか申し訳ない。
基本、私は小市民だからね☆
どんな世界でも『働かざる者食うべからず!』だ。
「やることもなく暇っていうのもどうかと思うので、私のできる範疇で治療できる人がいれば診ます。」
と、巫女ツインズに申し出た。
私のできる仕事を考えたら、これしかないということにたどり着いたのだ。
「それはとてもありがたいことでございますわ!おばばさまもお年を召してきて、ちょっと診断がびみょーな時などもございまして。」
と、にっこりアン。って、村の薬師はおばばさましかいないのか!しかもやぶかい!
「では、私が村に伝えてきますね!」
と、シエル。元気よく走って行ってしまった。
そうと決まれば薬草を採りに行かねばなるまい。
「じゃあ、私は薬草を採りに行ってきますね~。後はアンさんよろしくね!」
私は薬草を入れるための袋を持って、一人で森に向かおうとした。
が。
目の前にラルクが立ちはだかる。
「あ、ラルクさん。おはようございます。私、ちょっと薬草採りに行ってきますね!」
森の奥深くまで行くつもりはないから、一人で行ってきまーす!って言おうとしたんだけど、言えない雰囲気、飲まれるチキンな私。
目、怖いです。
ラルク、オニ睨みです。
美形が睨むと凄味あるんですよ~!!
「一人で何かあったらどうする。そのためにオレがいるんだ。一緒に行く。」
口を開いて一言。
なーんでそんなにぶっきらぼうなんだ。
気まずく行くよりは一人お気楽で行く方がいいんだけど。
「すみません。オネガイシマス。」
多分、今、私、引きつってるわ。
断れない私がいた。
薬草の森まで、神殿から約10分。
ラルクの先導で黙々と歩く。
気分重いです。前にも思いました。いや、毎回思います。
でも、何も楽しい話題なんて見つからない。
ラルクは気にならないのかしら?
「そっちは危ないぞ。行かない方がいい。」
「この薬草ならあっちにたくさんある。」
時に先導されたり、時に私がふらふらと迷い込みそうななったり。
決して楽しそうではないけど不満は言わず、黙々とついてきてくれるラルク。
そんなラルクがぽつぽつと話す言葉は素直に聞くことにする。
睨まれたら怖いので。っつーか、これ以上空気を凍らせたくないので。
「薬草の自生しているところをよくご存知ですね。」
風邪薬用の薬草を摘みながら私は言った。
何気におばばさまより頼りになるのでは?と思ってみたり。
「小さいころからここにはよく来ていた。庭も同然だからな。」
それが何か?と続きそうな雰囲気。
ラルクは私が作業しているのを、近くの倒木に座ってじっと見ていた。
「そ、そうですか。すごいですねー!」
何がすごいのかよくわからないが、ここで会話を終わらせることにした。
ああ、噛んじゃったよ・・・。
無駄話してすみませーん。薬草採取をさっさとおわらせます!隊長!
「はぁ・・・」
ラルク、溜息ついた?
すみません、護衛なんて面倒な仕事ですよね!さっさと終えますから!
また私は薬草採りに専念する。
風邪薬用の草、怪我用の草、アロマ用のハーブなんかも数種類。
消毒用、解毒、うがい用など。
目先に必要と思われる物を揃えておいた。足らない物はまた摘みに来ればいいし。
「ありがとうございました。今日はこのくらいで大丈夫です。帰りましょう。」
私はラルクに言いながら、よっこいしょっと薬草の入った袋を背負う。
そして歩き出そうとしたら、また不機嫌なラルクに袋を奪われる。
うう・・・怖いです。でも、それ以上に「持ってください」なんて怖くて言えねえって!
はい、そこ!睨まないで!チキンだから気安く頼めないんだってば。
「・・・いつもすみません。助かります。」
怖くてもお礼はキチンと伝えましょう。引きつりながらでも笑顔を添えるとベストです☆
「行くぞ。」
ビビる私をちらりと見てから、ふいっと顔を逸らされた。
すんませんなぁ、私なんかのお守りなんて嫌でしょうに。
早く王都に帰って、騎士の仕事にも戻らないといけませんよねぇ?
ああ、ラルクの騎士姿って、萌えなんだろなぁ~。と、この世界の騎士服を知らない私は、勝手に中世風の衣装を想像して・・・デレた。
かっこよすぎる~~~!!鼻血でる~!
ラルクの騎士姿を妄想して悶える私を怪訝な目で見ているラルクだった。
その時。
ギャオォォォォォ!!!!
聞いたことないような咆哮が辺りに響いた。
「なっ?!なにぃ????」
森の奥から聞こえてくる。
得体の知れない恐ろしさに竦んでしまう。
某ジュラ紀の公園っつー映画で聞いたような咆哮だよ。
普通の動物のモノじゃないよね?
ここって、恐竜がまだ生きてるの??
そう言えば、村長さんが野ドラゴンとか魔獣がいるって言ってたよね?まさかの登場?!
今度は巨大な何かが歩くのか、地響きもしてきた。
「なになに??なんなのぉ??」
プチパニックになる私。
やがて。目の前に野ドラゴンが姿を現した。
緑色の体と思しきは、びっしりと鱗。
頭から生えた、二本の角。うねうねとカーブを描き、天を衝く。
金色の鬣と髭。
燃えるような真紅の瞳。
そして、口元には鋭い牙が見えていた。
あわわわわ・・・!!
目!!目が合った!!
すっかり腰を抜かした私。へなへなとその場にへたり込んでしまった。
そんな私の前にラルクがかばうように立ちはだかり、ドラゴンに対峙する。
「ドラゴンだ。こんな時に出てくるとはな。」
鋭い眼光でドラゴンを睨みながら、しかし静かな低い声で言うと、おもむろにドラゴンに向かって左手を翳した。
その左手の中指にはごつい指輪が嵌っている。
「失せろ。」
というラルクの言葉に反応して、指輪が閃光を放った。
その刹那。辺り一面、真っ白。
まっ、まぶしっ!!明るすぎて目がつぶれるっ!!
ぎゅっと目をつぶった。
まぶしさに耐えられないのか、またドラゴンの咆哮が聞こえた。
どれくらい目をつぶっていただろう。
「もう、大丈夫だ。」
というラルクの言葉に、恐る恐る目を開ける。
すっかり元の森に戻っている。
「・・・ドラゴンは?」
ようやく絞り出した声は掠れていた。
「ああ、戻って行った。」
立てるか?と言いながら私の腕を引くラルク。
「退治したんですか?」
「いや、ドラゴンは神聖な生き物だから傷つけることはできない。森の奥に追いやっただけだ。当分は近寄ってこない。」
よかったぁ!!
ラルクが腕を引っ張ってくれてるけど、腰が抜けて立てない私。
「・・・すみません。ドラゴン初体験なもんで・・・。」
「・・・。」
間抜けなことを言ってしまいました、私。
「大丈夫。這ってでも帰りますから、先、戻っててください。」
ちょっと落ち着いたら帰れそうだと思っていたのに、
「置いていくわけにはいかない。」
と一言。
抱き上げられてしまった。
「ふわぁっ!!大丈夫ですから!」
慌てる私にお構いなく、ずんずん進んでいくラルク。
抱き上げられたことに動揺して、さっきまでのドラゴン邂逅の恐怖をすっかり忘れ去ってしまった私だった。
そして神殿に戻ると、もう診察の話を聞きつけた村人が何人かやってきていた。
受付嬢をアンにしてもらい、助手をシエルに頼む。
紙と筆記具(存在していた!!)をもらい、カルテを記す。
診察代は・・・供物。
ああ、やっぱりカミサマになった気分だ。
じゃあ、私の書いたカルテはカミサマのカルテ?!←違います。
お気に入り、増えててすっごいうれしかったです♪
今日もありがとうございました!