騎士様ラルク様
騎士時代のラルク。他国のお姫様にも気に入られちゃった?
ドリィくんの証言です(^ω^)
ドリィの証言
ラルクってば無愛想だけど美形なんだよね。男のオレが言うのもなんだけど、きれーな顔してるんだよね。最初に目を惹く眼光鋭いラピスラズリのような深い藍の瞳が印象的だが、それ以外のパーツも上手いことできてる。スッと高い鼻、いつもぎゅっと引き結ばれた薄い唇。すべてが絶妙のバランスだ。そんな整った顔の男が、きらっきらの金髪を煌めかせながら颯爽と歩いててみ? 見惚れないヤツはいねーよ? しかも騎士服着てるんだぜ。萌えちゃうよね。
という訳で、ラルクファンの女の子は王都中で掃いて捨てるほどいる。
かくいうオレの妹のルゥもその一人だけど。ルゥに至っちゃ『ラルク様は私のものだからねっ!! 近づかないでよ!!』と息巻いている。当のラルクは知らん顔だが。
オレとラルクは今、騎士団の中でも城下町を警備する城下警邏隊に所属している。
16歳で騎士団に入団してから4年。オレとラルクと、後二人同期のムズカとムトゥ、がずっと一緒。そろそろ異動したいなぁ。オレの希望としては近衛兵なんだけど。
二人一組で城下を巡回するんだけど、どこに行っても女子の視線がすごい。
オレもなかなかイケてる部類に入ってるんだけど、ラルクの横に並んだら霞んじまうんだよな~。けっ。
周囲に異常はないかと気を配りながら歩いていると、オレたちを待っていたのか、
「あの、ラルク様。これをよろしければ……」
ちょっとほっぺを赤く染めたかわいい女の子が、手作りのお菓子を渡しにやってきた。
赤毛でくりくりとした目が印象的な可愛い子だ。
横にいるオレは『かわいいな~』と脂下がっているのに、当のラルクはそんな彼女を一顧だにせず、
「今は勤務中なので結構です」
にべもなく断ってしまう。そんな愛想なしのラルクなのに、彼女はなおも、
「では勤務が終わられた後にでも」
そう言ってすがってくる。むむ、なかなか頑張るね、キミ。
それでも彼女すら見ないままのラルクは、ますます不機嫌になり、
「職務中に物品を頂戴するのは職務規定違反になるので」
また取り付く島もない。
「そうですか……」
さすがにしゅんとなり、涙目になる彼女なんてお構いなしに、
「では失礼」
無表情のままその場を去るラルク。あら~、彼女が固まってるよ。
オレがどうこう言っても仕方ないので、その場に彼女を遺したままラルクを追う。
「あの子、かわいそ~。貰うくらいいいじゃん。つか、貰っちゃだめっていう職務規定なんてあったっけ??」
スタスタと歩くラルクの横に並んで、オレはちらちらと彼女の様子を気にしながら、代わって文句を言うも、
「かわいそうも何も、知らないヤツから物を貰ったりして毒などが仕込まれていたらどうするんだ」
冷たい一瞥で睨まれてしまった。うわ。ブリザードが吹いてる!
「そ、そーだよな。ははは」
怯えた笑いになるのは許してくれ。
ま、そんなことは茶飯事。
しばらくしてオレは近衛隊に、ラルクはドラゴン騎乗部隊に異動になった。
配属先が変わって勤務シフトは違うけども、宿舎では同室のままだったから寝食は同じだった。
そんなある時友好国の王族が来訪することになった。
近衛兵は言うまでもなく騎士団全体の中から精鋭が選ばれて、お客の護衛についたり警備にあたることになる。
オレは通常勤務の城内警備だったが、ラルクは精鋭選抜であちらの王族の護衛につくことになった。
そこでちょっと問題発生。
向こうの王族、詳しく言えば国王夫妻とその娘(ま、王女様ね)が来てたんだけど、その王女様ってのがラルクを気に入ってしまったんだよね。別にしゃべったりしたわけじゃないんだよ? 遠巻きに警護してただけなのに、あの容姿にね、一目惚れをしたそうだ。
でもって、
「あの騎士様をうちの国に連れて帰る」
とか言い出したそうな。
「という訳なんだけど、どうだろうラルク」
困り果てたという顔で、うちの王様がラルクに聞いている。
ここは陛下の執務室。
オレは警備でここの入り口に立っていたから、話はまる聞こえ。つか、立ち会ってるに等しい。
うちの王様のいいところは高圧的でなく、ちゃんとこちらの意見も聞いてくれるリベラルなところだよな~なんて考えながらラルクと陛下の様子を見守っているオレ。
陛下の執務机の前に畏まって立つラルクはいつも通り無愛想。陛下の前でもそれは崩れないし、陛下も気にしてない。
「どうと言われましても、お断りするしかありませんね」
きっぱりと言うラルク。まあ確かに。お姫様と騎士って、ベタなおとぎ話じゃあるまいしな。
「だよなぁ。しかしどう処理したものか」
またまた困惑顔の陛下。やれやれあのわがまま姫さんにも困ったもんだ~とつぶやきながら、深々と椅子に身をもたせ掛けた。
と、そこに。
「国境付近で群衆が暴動を起こしているとの報告が入りました」
伝達の近衛兵が慌ただしくやってきた。
他国の王族が外遊に来ているこの時期だから、何か異常があれば些細なことでもすぐに報告するように徹底されているからね。
「何?!」
「まことか?!」
俄かに緊張が走った。
驚き、玉座から腰を浮かせた陛下を手で押し止めて、
「仕方ない、私の部隊で制圧してきます。私の代わりは名誉隊長殿にお願いするとしましょう」
ラルクはサクッと決断した。ラルクはドラゴン騎乗部隊の中でも小隊を任されているからね。しかし、全然仕方なさそうに思えないのはオレだけか?
そしてラルクがサラッと後任指名した名誉隊長だけど。
『名誉なんちゃら』と付く役職に実力は伴わないんだよ。要するに腰掛け? みたいな?
お貴族様のご子息が、「こいつ使えねーから肩書だけやっとけ~」的に就任しているもの。剣術や体術、その他諸々軍で必要とされる技術は皆無に等しんだけど、彼らは腐ってもお貴族様。金と地位だけはある。そして中には顔の造りのいいのもいるわけで。彼らは軍事よりも社交界での動向に詳しい。そりゃあ色恋沙汰も含めてね。
だから、稀に起こる『女性関係のトラブル』的なことの解決に投入するのが使い道と言われている人たち。
「ああ、そうしようか。彼ならもってこいの人物だ」
「では、私は急ぎますので。そのまま通常任務に戻らせていただきます」
真面目な顔に戻った陛下と、今すぐにも部屋を飛び出していこうとするラルクに、
「って、ラルク様! 暴動とは言いましても、酔っ払いが大勢で暴れているくらいでして」
伝達兵が慌てて付け加えた。
そんな些細な暴動を慌てて報告しに来たのかよ?! と突っ込みそうになったオレだが、そもそもそういう命令出てたんだよな。うん、忘れてた。しかしラルクは、
「いや、酔っ払いと見せかけて不穏分子やも知れぬ。ここは私が行こう」
引き締めた表情のまま言う。
「しかし……」
どこか手すきの小隊を鎮圧に向かわせるつもりだったのだろう伝達兵は、まさかの精鋭ドラゴン部隊が出動することになるとは夢にも思わなかったのだろう、動揺が見られる。
そんな伝達兵の様子などお構いなしにラルクは陛下に向き直る。
「では、陛下。私はこれで。名誉隊長にはよろしくお伝えください」
「あ、ああ。わかった」
ちなみにラルクが指名した名誉隊長はドラゴン騎乗部隊の名誉隊長。その人、見た目はラルクとタメが張れる。そして公爵家の三男。金も地位もある。お姫様のお婿さんにでもなれちゃう身分だ。
その方を自分の人身御供……もとい、代わりに指名して、ラルクは颯爽と謁見の間を後にした。
それを唖然と見送る陛下と伝達兵。
どう見てもラルクが名誉隊長にめんどくさいことを押し付けて逃げたようにしか……。
ま、でもこれが最善の策だよな。うん。オレもこれには賛成する。
お姫様はかなりごねていたらしいが、国境付近の不穏分子の一掃という重要な任務(って、タダの酔っ払いの暴動の鎮圧だけどねー)だということと、名誉隊長の甘い言葉と甘いマスクに慰められて、帰る頃にはすっかりラルクを諦めていた。つか、名誉隊長を気に入っていた。すげー、変わり身はえー。まあ、そんな尻が……げほげほ、移り気なお姫様の相手をしなかったのは正解だな。
そしてラルクはまんまと逃げきったわけだが。
「ミカ、そろそろ休め」
「はーい。お茶、淹れてくれてありがとう。あ、ドリィさん、リュンと遊んでくださってありがとうございます~」
一生独身なんだろうなぁと思ってたのにな。お前、むしろ女嫌いだったよな。
まさか結婚するなんて思わなかったよ。
眼の前で展開されるのは、仕事で疲れた奥さんを気遣う優しい旦那というほのぼの微笑ましい夫婦の会話。
それがあのラルクとは!
たまに笑うんだよ?! これこそありえねー。今だに自分の目を疑う時があるわ。
「ばー」
そしてオレが抱いてるのはラルクと女神様の子供。な、お前もそう思うか。
コクコク
肯いたように思うのは錯覚?
「オイ、コラ、いつまでここにいるつもりだ」
ゴン、という鈍い音とともにテーブルに供されるお茶。しかもブリザードつき。オレには相変わらず冷たいよな~。
「まあまあラルク。せっかく遊びに来てくださってるんだから」
苦笑しながらラルクを宥めてくれる優しい奥さん。
「ここで油を売ってるだけだぞ。さっさと帰れ」
しかし、そんな優しい奥さんのとりなしなど全くスルーして、リュンをオレから取り上げるラルク。
「ひどいなぁ、わざわざ遊びに来てやってるのに」
「頼んだ覚えはない」
やっぱり俺には素っ気ない。
それでもラルクの変わり様が面白くて、また邪魔しにきちゃうんだけどね~。
今日もありがとうございました(^ω^)
リクエスト、ありがとうございました!
他国のお姫様に気に入られたラルク(笑)厄介事は専門家に処理を任せました(笑)
遅くなってごめんなさいですm(_ _)m




