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泉の女神  作者: 徒然花
番外編*2
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お月見

こないだの満月は台風ですっかり台無しでしたねぇ……

こちらの世界の食べ物は、リアルワールドの食べ物によく似ている。肉や魚も似ているし、野菜も結構似たものを見つけられる。モドキとかなんちゃってみたいな感じかなぁ?

前にハンバーグモドキを作ったけど、結構正統ハンバーグを再現できてたしね。

小麦粉モドキがあるからパンもあるし、なんと米モドキもある。

私の次なる野望は和食の再現よ! 出汁の昆布が欲しいところだわ。




「という訳で、今日は満月です。お月見なのです」

私は言い切った。

美味しいアンのお昼ご飯をいただいた後のまったりした時間。食後のお茶を待って、ダイニングテーブルを囲んでいた私、ラルク、シエル。リュンはご機嫌で私にだっこされている。

「何がどう言う訳で、どうなってそのお月見になる?」

「なんですか? それは」

ラルクとシエルが顔面に『?』をつけている。

「秋の夜長に綺麗な月を愛でる日本古来の風習です!」

びしり、と人差し指を立ててドヤ顔。でもみんなはキョトン。あれー? このビミョーな温度差は何?

おっかしーなぁ、と思いながらもリュンを抱き直していると、

「まあ、それは素敵な風習ですわね、くすくすくす」

アンがお茶を運びながら言ってくれた。でもアンも笑ってるけどね。

「そうですよ! その綺麗なお月さまを愛でながらお団子を食べるのです!」

温度差にめげない私は、さらに言い募ったさ!

「要するにミカは団子なるものが食べたかっただけか?」

ラルクが若干呆れ顔してるのはこの際スコ無視することにしよう。

まあ確かに、色気より食い気ですよ。ええ、否定はしません!

でも日本人の私としてはお月見団子が食べたいのです!!


そーいや以前、お月見団子を食べようとしたところで召喚されちゃったよねー。食べそびれたよねー。遠い目……。


「ミカ? おい、ミカ! 大丈夫か?!」

ラルクがいつの間にかリュンを抱き、私の目の前で手をひらひらさせている。おおっと、私としたことが、意識はさらなるトリップをしでかしていたよ!

「大丈夫です。で、団子ですが」

「まだ団子か」

「はい。ワタシ的最重要課題です!」

「……好きにしろ」

「はい! で、こちらの米モドキを粉にしてみました。小麦粉屋さんで特別に作ってもらったんですよ~!」

またもやドヤ顔の私。その手には『粉もん屋主人特製☆米粉』! うるち米とかもち米とかそういった種類はよくわからないから、とりあえず粘りっこい品種の米を粉にしてもらってみたのだ。

市場で、小麦粉を取り扱っている店のご主人に聞いたら『女神様のご注文なら喜んで~』と作ってくれたのだ~! 女神様特製米粉モドキ~!!

「じゃあ、月が出るまでにお団子作っておきますね~!」

私は上機嫌で早速キッチンへと向かった。




リュンはアンに任せて、私は早速お団子を作る。

米粉と砂糖少々、水を少しづつ混ぜて耳たぶくらいの固さに調節する。この捏ねる作業が泥遊びみたいで楽しいのよねー。って、粉が手に一杯こびりつくから後が大変だけど……。

しかし。

捏ねてる最中から、外の天気が崩れ出した。

「あー、曇ってきたねー。雨降っちゃうのかなぁ」

私が窓の外を伺いながらポツリとこぼすと、

「にわか雨じゃないですか? きっと夜には晴れますよ」

にっこりと笑いながらアンが言ってくれる。うん、美少女アンが言うんだから、きっと晴れるんだよ!

と、訳の分からない確信を胸に、私は再びお団子を作り出す。

捏ねた生地を丸めて、グラグラ沸騰したお湯の中に投入!!

どぽん、どぽん。

「きゃー!! はねるー!! あついー!!」

決して投げ込まないように!! って、私か!

「お義姉さま!! 投げ込んでは危険です!!」

アンが熱湯飛沫から逃げながら言う。うん、おっしゃる通りです。

2~3分茹でたらあら不思議(全然不思議じゃない)、お団子ちゃんがぷかーんと浮かんできたら茹で上がり~☆ 冷水にとって冷やせば出来上がり!

つるつる☆ てかてか☆ まるまる☆ もりもり☆(違う!)上出来ですよ~!

「まあ、なんてツヤツヤしていて美味しそうなんでしょう!」

アンがニコニコしながら言ってくれたよ!

「でっしょう! これをピラミッド状に盛り付けたら出来上がり! ……後は雨が上がるのを待つだけね」

すっかり本格的に降り出した空を見上げながら、私は言った。




夜になっても雨は一向に止まず。暗雲垂れ込めたままだよ。満月返せ~!

「う~う~う~」

恨めし気に空を見上げながら唸る私。

「そんなところで唸っていても雨は上がらないぞ」

呆れながらラルクが言うけど、せっかく作ったお月見団子、綺麗な月を見ながら食べたいじゃないか~!

誰か雨を止ませてくれないかなぁ? 神様仏様~! って、神様? 神レベル?

はっ!!

「シェンロン!」

「はあ? シェンロンがどうかしたのか?」

いきなり素っ頓狂な声を上げた私に驚くラルク。いや、ごめん、驚かせるつもりはなかったんだよ。突発的に思いついただけであって。

「シェンロンならこの雨をどうにかしてくれるんじゃないかなぁ何て思ってしまって」

「……」

あ、すっかり呆れられてしまいました。今日何回呆れられてるんだろ、私。ま、でもやってみなくちゃわからない!

「シェンロ~ン! この雨なんとかなりません~?」

森の方に向かって問いかけてみた。

『雨は恵みをもたらす。勝手にどうこうするものではではないぞ』

するとすぐさま頭の中にシェンロンの声が響いてきた。……うう、ゴモットモデス。

「デスヨネー。わがまま言いました。ごめんなさい」

『ああ、でももうすぐ止むぞ? そんなに落ち込むな』

「え? そうなんですか?」

『ああ。一時もすれば止む。それまで待て』

「止んでも曇ってますよね?」

『雲なら何とかしてやろう』

「ホントに~?! さっすがシェンロン! ありがとう!」

さっすが神レベルだ!




シェンロンの言った通り一時ほどで雨が止み、止んだと同時くらいに雲がなくなった。

「う~ん、シェンロンいい仕事してくれたわ~」

「その使い方はどうかと思うが……」

「はい、確かに」

夜空には真ん丸お月様。綺麗にうさぎさんが見えるぜ☆

「ま、それより団子です。花より団子です。みなさん、食べましょう!」

こちらに(つーか、リアルワールドでも一般家庭にはないな)三方はないので、フツーのお皿にてんこ盛りしたお団子をみんなでいただいた。


しかし綺麗な満月だ。

そーいや最近あっちに行ってないなぁ、とお団子をモグモグしながら一人感慨に耽る私だった。


今日もありがとうございました(^^)


すっかり台風に気を取られて忘却の彼方だったのが、今頃になって……あはっ☆

ちょっと旬は過ぎちゃいましたが、せっかく書いたので読んでいただけたらな~と思います(^^)

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