異世界平均身長
美華ちゃんの疑問。「私、こっちに来てみんなに小っちゃい小っちゃい言われてるけど、そんなに小っちゃくないんですけど……?」
暇なある日にとうとう口に出して言ってしまいました(笑)
なんてことない開店休業なある日の風景です♪
朝から患者が誰も来ない、開店休業なある日。
テーブルを囲みおやつタイムな私、ラルク、アン、シエルの四人。
手には私のリアルワールド土産の緑茶。お茶請けは煎餅。
リュンはベビーベッドでお昼寝中。
「私さぁ、みんなに『ちっさい』だの『かわいい』だの『華奢』だの言われてるんだけど、全く身に覚えのない言葉ばっかりなのよね~。そんな儚げな形容詞、今まで一度も使われたことないしっ!」
バリバリ、と煎餅を食べながら訴える。煎餅は、私がレシピを伝授してアンが作成してくれた。美味し。
「何だ? 急に」
「うん。いっつもみんな、小さい子を相手するみたいに私に接するからですねぇ」
「実際ミカは小さいだろ」
「いや、小さくないってば! これでも158cmあるんだよ!?」
「158cm?」
むむう、こちらではメートル法は通じないか。ま、そもそもこっちの長さの単位とか知らねーし? では。
「センチというのは向こうの長さの単位です。ああ、これこれ。ちゃらららっちゃら~ん♪ メジャ~♪ なんと2m50cmまで測れまーす!」
ポケットから取り出す、裁縫などの時に使う巻き取り式のメジャー。
「「「……」」」
「うーん、どうやって測ろうかなぁ? とりあえず柱に背を当ててもらって測ろっか」
ラルクのそばをうろうろして、測り方を考える。ラルクの手を引き、柱のところまで引っ張る。
「柱を背にするのか?」
私はラルクの身体をむぎゅっと柱に押し当てる。
「そうそう、そんな感じ。で、頭のてっぺんのとこらへんに印をつけてぇ……」
されるがままのラルク。その頭の上あたりに、筆記具で印をつけた。
「もういいですよー。で、これを測ると……ぬあっ?! 190cm?!」
でかっ!! でかいでかいとは思ってたけど、数字で見るとリアルに納得するわぁ。
「オレは190cmなのか?」
柱の印と私のメジャーを覗き込みながら、ラルクは尋ねてきた。
「そーですよ! ラルクはバレーボーラーか?! バスケッターか?!」
驚きで、どうでもいいことを口走ってしまったわ。つか、バスケッターとは言わないよねー。造語よねー。どうでもいいわ。
「何だそれは」
怪訝な顔をするラルク。
「背の高い人が有利な球技です」
「ふうん」
「どおりで、並んでたら自分が縮んだ気がしてたんだよな……」
「こちらの人間は大体これくらいだろう?」
「まあ、みなさんデカいですよね。ちなみにアンとシエルは?」
「「はい?」」
それまでにこやかに私とラルクを見守っていたアンとシエルに話を振る。二人してコテン、と小首を傾げる様が、やっぱりキュート。しかもシンクロしてるし。
今度は二人の手を取って壁に連れて行く。先程の要領で測定すると。
「立ってみて。うん、OK。……170cm……」
うん。充分デカい。
「これでも普通よね?」
「ええ、みんなもう少し高いですわ」
でも、ツインズは事もなげに顔を見合わせている。
「……某少女歌劇団の男役かい……」
また意味のないつぶやきを漏らしちまったよ。
「なんだそれは?」
「大きな独り言です。よし、今度から診療所に来た人の身長測ってみよう。んで、データをとってみよう!」
~しばらく後~
また開店休業な日に、それまで地道にとってきた『村人身長データ☆部外秘』を集計する私。
「女性平均172cm……男性平均185cm……。私、チビでいいです。ちっさくて可愛くて華奢っていう形容詞を甘んじて受ける覚悟ができました……」
今までそんな形容されたことないから恥ずかしいけどさ。数値がモノを言ってます。
私と同じくらいの身長って、こっちじゃまだまだお子ちゃまって言われる年齢の子しかいないのよね~。がっくし。
「うにゃ~」
「リュンが起きましたぁ~」
「リュン~」
私よりも早くアンとシエルがベッドに駆け寄る。ツインズはリュンにすっかりメロメロンだからね~。キャッキャとはしゃぎながらリュンを抱き上げてる。
リュンだって、ラルクの遺伝子入ってるから、今はちっさいけどあっちゅー間に追い抜かれるんだろなぁ。
う~。切ないわ。
短かったですが、今日もありがとうございました(^^)




