家族会議
「たーだーいーまー! 何だかわからんけど疲れたよ~!」
ラルクにお姫様抱っこで夜更けに帰宅。風呂直行で、そのままばたんきゅー。
ラルクが、私のあまりの長風呂に様子見に来てくれなかったら、お風呂で溺れるところだったわよ! あっぶねー。
血相変えながら私を湯船から引き起こし、そして、
「明日は休診だ」
はい。一言で休診決定。大人しく疲労回復に勤めます……って、私そんなに歳? 歳なのか?!
『ファイト―! いっぱぁぁぁっつ!! 滋養強壮に○ポビタンD!!』的な薬汁作ろう。
やっぱり昼前まで惰眠を貪ってしまった私。うわ、グータラ主婦みたいだ☆ でも、グータラ万歳!
しかしこんなに寝たのにまだ眠い。いや、これは逆に寝すぎて眠いっつーやつだな。認めたくはないけど、疲労の回復が遅くなってるのもあるわ。やっぱり薬汁作ろう。
そんなことをうだうだ考えながらベッドでゴロゴロしてたんだけど、
「ミカ? 起きたか?」
と、ラルクが部屋に入ってきた。
こちらは昨日の事なんてどこ吹く風。いつも通りのクールっぷりですわ。
う~、基礎体力とかが違うんだよ! 男子の20代後半なんて、まだまだ元気ハツラツゥだもんね。それに毎日欠かさず鍛錬もしてるみたいだし? そりゃ違うわな。
まだぼんやりしている頭を無理やり始動させ、ゆっくりと起き上がる私。急には起きれませんから!
「あ~。おはようございます。すっかり朝寝坊しちゃいました。朝ごはんはアンが用意してくれてたんですよね?」
ベッドに寄ってきたラルクにニッコリと笑いかける。
「ああ。アンも心配してるぞ。起きれるか?」
ラルクが私の方に屈みこんで、顔色を見ている。そして、私の頬に手を当て、少しく心配そうな表情をする。あーこれ、キュンってしちゃうじゃない!
「大丈夫ですけど、まだお腹が空かないのでご飯は後でいいです」
「わかった。……ご飯を食べた後にでも父さんのところへ行こうと思ってたんだが、またにするか?」
「いえ、大丈夫ですよ? せっかく休診なんだし行ってみましょうよ」
私は『ダイジョウブ』アピールのためにも、頬に添えられているラルクの手に自分の手を重ねてもう一度にっこりと微笑んでみる。
そんな私の行動にちょっとびっくりしたような顔をしたけど、すぐに目を細め、
「無理はするな?」
軽くおでこにキスをした。
「はい。じゃあ、支度してから行きますね」
そんな会話をして、ラルクは静かに部屋を出、ドアを閉めた。
「ほう! これはまた見事な石を見つけてこられましたなぁ!!」
ラルクの実家、つまり村長さんちのリビングで。
背の低い丸テーブル(ちゃぶ台って観念、こっちにゃないよね?)を囲んで、ラルク、私、アン、お義父さま、とぐるっと座っている。お義母さまはお茶を淹れたりお菓子を出したりと忙しく働いて下さってます。 嫁、座ったままでゴメンナサイ☆
お義父さまは、ラルクから昨日見つけた石を受け取るや否や感嘆の声を上げた。
手の上で転がしたり、日に翳したり、矯めつ眇めつ見ている。
「古文書に書いてあった通り、神域と言い伝えられている坑道から出てきた」
そんなお義父さまの行動を見ながら、ラルクが発見した時のことをかいつまんで説明した。
って、端折りすぎじゃね?
「そうか。……大きさ、重さは申し分なかろう。後は瑕と内包物、純度、だな」
穴が開きそうなほど石を見つめるお義父さま。傷とかゴミとか探してるんだろなぁ。お義母さまに淹れていただいたお茶をすすりながら、呑気に考える私。
「ああ。昨日は暗かったからよく確かめられなかったけど、かなりいい線はいってると思う」
ラルクも、石を見ながら言う。
「そうか。お前が言うならそうなんだろう。ちょっと待っておれ。確認してくる」
「頼みました」
ああ、昨日ラルクが言ってた4Cだね! カット(Cut)はないから3Cか!
お義父さまは立ち上がり、隣の部屋に石を持ち込む。何かお道具とか置いてるんでしょう。
しばらくしてから、お義父さまが部屋から出てきた。
「これはなかなかに素晴らしい石だぞ!」
若干興奮してらっしゃります? 顔が少し赤らんでる。
いそいそとラルクの元へとやってきて、石とルーペ的な道具をラルクに渡しながら、なおも一人でしゃべり続けている。
「色もほぼ無色透明。外に瑕はない。中にも確認できる瑕はない。もちろん内包物もなし」
そんな言葉を聞き流しながら、ラルクは熱心に石を見ている。
そういう時のきりりとした顔はやっぱり萌えポイントだわ。
石よりもラルクの真剣な顔に見入ってしまった私。
アンもお義母さまも、お義父さまの言葉を右から左に受け流してるわ。みんなでラルクの手元を注視している状態。
「ああ。瑕も見当たらなければ内包物も見当たらないな」
ラルクが顔を上げて、一言。
いきなり顔を上げるから、ラルクをガン見していた私とばっちり目が合ってしまった。うわっ、恥ずかしー。
しかし、さすがはシェンロンというべきか。だって神様が見つけてくれた石だもんね。素晴らしいに決まってるよ。もしかしたら先代の石より素晴らしいかもよ?
「まあ! 素晴らしい!」
ラピスの瞳をキラキラさせて、石を見つめているアン。
「そうかい、なら希望が持てるじゃないか」
ニコニコしているお義母さま。
「わし、さっきから言ってるし……」
若干拗ね気味のお義父さま。
でもさ。
「どうやって『月の石』って確認するんですか?」
私は素朴な疑問をぶつけてみた。
「……」
「……」
無言で顔を見合わせたラルクとお義父さま。ん? 何か不都合でも?
えー、こほん、とお義父さまが咳払いをひとつしてから、
「まあ、恐らく『月の石』として機能するとは思うのですが……。やはり、実際に試してみないことには断言はできないかと……」
「ということは、帰還で試してみる、ということですか?」
「そういうことでございますね」
「……次の満月……。やってみる価値はありますよね。上手く帰還できれば、その石は間違いなく機能するってことですから」
「お願いできますでしょうか?」
もし仮に『月の石』として機能しなくても、池ポチャだけで済むことだし? 本物だったら私の良心の呵責も楽になるし? ついでにリアルワールドでいろんなものを仕込んでこれるしね☆ お安い御用だ!
「もちろん……」
「だめだ。体調がよくないミカで試すなんてさせられない」
喜んで~と続けようとした私の言葉は、ラルクのブリザード付き氷点下ボイスによってぶった切られた。ひえ~! 久しぶりにブリザード吹いた!!
つか、今スグ飛び込むわけじゃないのよ? 半月後よ? そこまで疲労を引きずってないよ! ……多分。
「半月後ですよ? 疲れなんて明日には取れてますって! 大丈夫!」
ブリザードに負けるまいと、笑顔でラルクに言う。ほんと、過保護なんだから。
それでもなんだかんだと渋るラルクを、家族全員で宥めて、
「体調が悪かったら、今月は諦めること」
という約束をすることで無理矢理納得させて、満月を待つことになった。
こりゃ、歳だのなんだの言ってる場合じゃねーですよ。薬汁作ってファイト一発だ!!
今日もありがとうございました(^^)
シエルちゃんはまだ王都で修行中です☆
7/4 誤字修正しました m( _ _ )m




