『月の石』?
シェンロンが何か神様レベルの力を発揮してくれたので、予想以上にすぐさま『月の石』は発見・発掘・確保できた。やっぱ、ついてきてもらって正解だったよ!
ラルクがシェンロンからその石を受け取った。
『月の石』のかけらの薄明かりの中、それはラルクの掌の上でひときわ明るく発光している。
もはやランプの電源は切っちゃったくらいにね!(エコだエコ~!)
「ふわぁぁぁ! きれいですねぇ。なんで自然発光してるとかは考えないでおきます!」
「発光についてはよくわからないが……。大きさは『月の石』と同じくらいだな。」
重さと大きさを確かめるように、ラルクは握ったり手を上下させたりしている。
そして、消していたソーラーランプの電源を入れると、そこに石を翳す。
「……ここは明るさが足りているとは言い難いが、なかなかに透明度も高いな」
「まるで鑑定士ですね」
「?」
「いや、なんでもないです」
ランプの明かりを石に中て、透明度も見るラルクはまるで宝石の鑑定士みたいだ。
つーか、『月の石二世』になるためには、何か基準とかがあるのかしら?
「『月の石』って認定されるためには、何か決まりごとがあるんですか?」
ラルクの横から石を覗き込みながら聞いてみる。ジュエリーは好きだけど、そんなにポンポン買えるほど余裕のある生活してなかったし、ましてやプレゼントしてくれるダーリンも居なかったからね! 宝石にはあんまり詳しくない。それに、『月の石』って、不思議な力を持つ石じゃない? その力を持つには特別な何かがあるのか?
「重さ……大きさとも言えるな。それから、色。傷の有無。だな」
「まるきり4Cですね! あ、カットはないか」
「?」
「でかい独り言です。気にしないで」
「……。とりわけ大きさが重要だな。限りなく透明に近い色で、傷もなく中に内包物もない状態で、これだけの大きさに成長しようとしたらかなりの偶然・奇跡と年月が必要になる。それだけ稀有な石ならば、おのずと力がついてくるんだ」
「ははぁ! なるほど! 偶然と奇跡の産物なんですね! そんだけ貴重なものだったら、異世界から人も喚べちゃうわけですね~!」
って、納得してる場合か? 私!!
あまりに非科学的すぎてくらくらしちゃった。
「おい、大丈夫か!?」
あまりのファンタジーぶりについくらっとしてしまった私は、ラルクに支えられる。
って、ここは科学技術の発達した21世紀リアルワールドじゃないんだから、しようがないか。剣と魔法の夢いっぱい(でもあんまり登場しません☆)の異世界なんだから!!
「大丈夫です……」
イタむアタマを、こめかみを揉み揉みしながら和らげる。
「目的は達したんだから、そろそろ帰ろう。もう遅い」
ラルクが石を、持ってきた柔らかい布に包んでから袋に片づけた。
「そうですね。なんだか疲れましたよ」
ファンタジーワールドにねっ☆ 今更だけど。
「それはいかんな。すぐ帰ろう。石はまた後日父さんに鑑定してもらえばいい」
「あ、お義父さまに見てもらうんですか?」
「ああ。神官長だからな。オレはいっても見習いだし?」
「そうなんですね。じゃ、帰りましょう」
そう言って移動しようとした時だった。
ぽろっ。
「?」
何かが私の後ろに落ちた。
振り返ってみても何もない。……出たかオバケ?! いや、冷静になれ、私。
少し立ち止まったまま、後ろを観察していると、天井からポロっとまた落ちてきた。
……石だ。つーか、土塊?
「ラルク? 石が上から落ちてきてます?」
「は?」
「ほら」
そう言って指し示したところは、後から後からぽろぽろと石が剥がれ落ちてきている。
ん? これって……
ある予感に思い当たった時とラルクが鋭い声を発したのは同時だった。
「崩れるぞ! ミカ! 急げ!!」
「えええええ~~~!! まさかの崩落ぅ?!」
『来い! 二人とも!! 私に掴まれ!』
シェンロンの声が頭に響き、ラルクと二人、言われた通りヘビ様シェンロンを掴む。
掴んだ途端に足元の地面がなくなった気がした。
次に意識が戻った時にはもう地上、つーか、坑道の入り口に立っていた私たち。
やっぱりシェンロン、神業発揮したのね!! ぐっじょぶ!!
「……っぷっは~~~!! まさか崩落するとは……」
気が抜けてその場にへたり込みそうになるのを、ラルクが抱き支えてくれたので何とかこらえる。
眼の前の坑道は、入り口から土煙を吐き出している。
『坑道全体が崩落したのではなくて、どうやら石を掘り出した辺りだけ崩れたようだ』
さすがシェンロン。中の様子が判るみたい。
「大きな石を掘り出したから、土中のバランスが崩れたのかもな」
ラルクがシェンロンに応えた。
『ああ、恐らくは』
あ~。でも危機一髪だったわ。
もうっ! 親方さん! 崩落しないって言ったじゃない! ……いや、用心しろよとは言ってたな。すんません。八つ当たりです。
「さ、もう地上だし大丈夫だ。ミカ、歩けるか?」
そう言って抱き支えたままの私の方を気遣わしげに見てくるラルク。
「あー。若干腰抜け気味です。もうちょっと休んでから帰りましょう」
「いや、ミカは疲れているし、今のパニックもあるから急いで帰るぞ。掴まっておけ」
そう言うと、私を抱き上げてしまった。
あーもう、お姫様抱っことか!! 恥ずかしいけど暗くてよく見えないだろうから甘んじます。いろいろなことに疲れたのは事実なので。
まだ続いてた、ラピ〇タの世界(笑)
今日もありがとうございました(^^)




