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泉の女神  作者: 徒然花
月の石を求めて
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気がかり

異世界に来て、一年が経ちました――


そんな美華さんたちのお話です(^^)

こちらに定住してはや7ヶ月。

行き来しだしてからだともう12ヶ月にもなる。まるっと1年とな!! はやっ!

ちょうど初めて召喚された時期だ。


しかし1年で、こちらの世界にすっかり馴染んでしまった私。

仕事、家、……そして家族。

すげー。たった1年でそんだけのもの築いちゃったよ、私。


ま、それはそれでおいといて。


それでも満月の夜はなんとなく心が落ち着かない。

こんな私が唯一ノスタルジーに浸る時。




寝室の窓から、満月の煌々とした光を見つめる私。


「やっぱり帰りたいと思うのか?」


ふわり、と後ろからラルクの温もりに包まれる。


「帰れるのなら一時帰国くらいならしたいなぁって思いますけどね。でもちょっと違う、かなぁ?」


だって、私はこっちで生きていくって決めたんだもん。私の存在が希薄な向こうの世界なんて未練ないやい!! 

「何が違う?」

ラルク、頭のてっぺんで話しないでよ! 何か疼いちゃって、またキュンキュンしちゃうでしょが!

そんな照れを悟られないように私は続ける。

「えーと、『月の石』が割れたままなのが気がかりで。だって結果的には、私が何往復もしたから割れたわけだし?」

喚ばれた2回はノーカウントとしても、私の意志で3.5往復はしたよね? 召喚のみに使ったとしたら7人は喚べるわけじゃない?

村の発展(護り?)を阻害したというべきなのか、それとも召喚の犠牲者を増やさず食い止めたというべきなのかはビミョーなところだけどね☆

要するにそういうことですよ。

私が割っちゃったのが申し訳ないのだ。

曲りなりにも村の宝だったろうし?


「そういうことか」

「そうですよ。申し訳なくて」

「……ミカが向こうを恋しく思っているのかと考えて……怖くなったぞ」

そう言うと、私を包んでいる手にさらに力を込める。

あーもう、また殺し文句ですよ、このだんなさん。私、今、完全ゆでだこですわ。

瞬殺パンチを繰り出されてノックアウトっす。




「そもそも『月の石』って、いつから存在してるんですか?」

もそもそと布団に潜り込みながらラルクに問う。

「さあ? 何代も前から伝わってきたものだからな。古文書を調べたら載ってるかもしれないが」

私に丁寧に布団をかけながら、ラルクが答えてくれた。

ラルクも知らない、何代も前から伝わる宝玉を、私ってば割っちゃったのね!!

ひえ~~~!!

この期に及んで、さらに申し訳なさに輪がかかったわ。

「あわわわわ! どうしよう、私そんな大事なもの使い切っちゃったんだ……」

半泣きになってラルクの胸元にすり寄った。

「ミカがそんなに罪悪感にとらわれる必要はないと思うが? いずれは来る寿命だったんだ。気に病むことはないぞ」

ラルクの胸元で猛反省をする私を、優しく抱きしめて宥めてくれる。けどそれくらいじゃ、この罪悪感は拭えませんて!

「私が諦めきれずに往復を繰り返しちゃったから……」




『月の石』。こちらの世界への召喚アイテム。(帰還にも使えます☆)

私が見る限り、『月の石』は大きな水晶の原石のよう。こちらではなんて言うか知らないけど。希少な宝玉なんだよね? きっと。後生大事に保管されていたみたいだし、割れてしまった今も、欠片は丁寧に集められて保存されている。

リアルワールドではそんなにレアな宝石ではないよね。だって占いとかに使ってない? ほら、怪しげな占い師さんが水晶玉を両手でなでなでしてるやつ。あ、あれはガラス玉? ニセモノ?

まあ、どちらにせよ大きな結晶ていうのは探せばあるはず。

「古文書って、どこにあるんですか?」

「最初に居た神殿があるだろう。あそこの奥の部分が祭殿と古文書を収めた場所になっている」

「じゃあ、ラルクかお義父様に言えば入れるんですか?」

「ああ。……でも……」

「でも?」

「多分、ミカ、読めないぞ?」

「……」

ええ、ええ、多分じゃなくて確実にだと思うわよ! そもそも高校時代の古文漢文だって散々でしたよ! 行書体とかなんて読めねーしっ!!

「まあ、オレが読んでやるから、そう落ち込むな」

私が過去に飛んでいったのがわかったのか、ふっと笑いながらラルクが言ってくれた。

これは馬鹿な子を見る目か? そうなのか?!

拗ねてみたって読めねーもんは読めねーし? ここは素直にラルクに甘えるとしよう。プライドなんてさよ~なら~、だ。

「じゃあ、暇なときに連れてって?」

「わかった」

やっぱり私の行く処にはついてきてくれる(いや、ついてくる?)ラルクだ。


古文書に、産出した場所が書いてあるといいんだけど……




いつもの午後休診日。

今日は外貨獲得の行商には行かずに、ラルクと一緒に村外れの神殿へ向かう。

ここに来んのも久しぶりだなぁ。New神殿おうちを建ててもらってからは、とんとご無沙汰ですわ。

まさかこんな形で再訪するとは思わなかったけどね☆

一年前はあまり余裕もなくて、このパルテノン神殿みたいな建物のことを観察することもなかったなぁ。

ちょっと感傷的になりながら、建物をまじまじと見つめてしまった。

多分大理石だろう、白い石造り。これがいわゆる黄金比? ってな構造。


屋根と柱だけのスッカスカな造りと思ってたんだけど、よく見たら奥の方に祭壇みたいなのがあった。


「あ~、こんなところに祭壇みたいなのがあったんですね~」

神殿の中に入る階段を登る。

「ミカ、気付いてなかったのか?」

ラルクの片眉がクイッと上がった。

そんな驚かなくてもいいじゃない。え~そうですとも、気付いてませんでしたとも!

「だってあの時は、他のことにいっぱいいっぱいで、神殿どころの騒ぎじゃなかったから」

ぷう、と膨れてしまう。

「ああ、そうだったな」

フッと目を細めて、私の頭をそっと撫でた。

「で、どこなんです? その書庫は?」

「ああ、祭壇のところに地下に続く階段がある。そこを降りれば書庫だ」

「へぇぇ、地下なんですね。で、ランプなんですね」

「ああ、そうだ。ろうそくよりもこのランプの方が便利だしな」

家を出る時に、リビングに置いてあるソーラー式のランプ(前に私がリアルワールドから持ってきたやつね)の一つをラルクが持ってきていたのだ。何に使うのか「??」な私は、何も質問することなくここまで来てたんだけどね。ここに来てやっと用途が判ったってわけだ。


祭壇のところまでたどり着き、目的の階段を発見した私。

それは祭壇の裏側にあった。

う~ん。床にぽっかり穴じゃん。

下、暗いし、なんか出そう!! オバケコワイ。


何の変化もありませんでしたが(笑)


ちょっと続きます♪ 今日もありがとうございました!(^^)

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