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泉の女神  作者: 徒然花
番外編
49/79

勘違い

ここの所、ミカの様子がおかしい。

顔色が悪かったり、下腹をさすっていたり。

食欲が湧かないのか、食事の量も減っている。

具合が悪いのかとオレが尋ねても「いえ、大丈夫ですから」と、無理に笑顔を作り、誤魔化そうとする。

体調の変化か、それとも……。



**********


お姉さま、最近体調が思わしくないのか、「ごめん、今日も少なめでお願い!」と言ってきます。

私の作る料理に何か御不満でもあるのかしら? と思ったのですが、そう言う訳でもなさそうですの。

胃のあたりが気持ち悪いのか、たまにその辺りを押さえて顔をしかめていらっしゃいます。

リバースするほどでもないのか、ぐっとこらえている感じではあります。

何か、悪い病気でないといいのですが。

少し心配です。



**********


今日は午後診、休診日~♪

という訳で、私は休診日恒例となった、『外貨獲得大作戦』のために市場へとやってきているのだ。

毎回同じ種類だと飽きられてしまうので、薬の種類は、毎回ちょっびっとマイナーチェンジさせていただいてます☆

いつものように、八百屋の軒先を借りて営業開始!


「ミカ様、こんにちは! 今日のお薬の種類は?」

さっそくお声がかかる。村人マダムだ。

「はい! 今日のお薬は、基本の『風邪薬』と『下痢止め』、いつもとちょっと配合を変えた『胃腸薬』、乙女の大敵『便秘薬』、そろそろアレルギーもあるかもしれない『鼻炎薬』です!」

営業スマイル全開で、私は今日のメニューを答える。なんなら揉み手もしましょうか?!

「この間買い求めた風邪薬はとてもよかったので、今日もそれを一つと、便秘薬、お願いします」

並べられた薬を目で追いながら、これと、これ、と、指差してくれる。

「はい、は~い! ではお二つで50ルナです! まいど!!」

HEY、HEY、お~きにまいどあり~♪ だ。←古すぎる。

「まいど?」

「ありがとうございます、みたいなもんです!」

「ふふふ、そうなんですね? ありがとうございました、ではまた」

面白そうに笑ってから、手を振り去っていく村人マダム。

私もスマイル全開、手を振りお見送り。

よし、これでまずはジュース代げっちゅ~!


今日もサクサク薬ははけていく。

気分はすっかりナニワの商人あきんどで~す☆




そしてまた、売り上げの一部で自分にご褒美。

今日も市場は賑やかに、いろんな珍しいものを扱っている(リアルワールド人的に)。

まずは、どこということもなく、ふらふらと市場を一周。

その間にも、


「ミカ様! これ食べてみてください!」

「おう! ミカ様! ひとつ食ってきな~!」

「ミカ様! 今日はこれが美味しゅうございます。一口味見なさっていってください!」


お野菜、果物、お惣菜。


いろんなお店から次々と声がかかる。

まさに試食パラダイス!!

最初は遠慮してたんだけど、どのお店も売りつけようとしてるんじゃなくて、純粋に好意で言ってくれているのが判ってきたので、今ではすっかりパラダイスを謳歌している。

あ、でもちゃんと買ったりもしてるからねっ!


でもさ、広い市場を一周する頃には結構満腹になってたりするんだ……。

一口といっても、いつもかなり大きな一口をくれるし(太っ腹!!)、ちょっとずつ間を開けながら食べるから、満腹中枢も刺激される。


かくして、家に帰る頃にはかなりお腹いっぱいな私。


せっかくアンが作ってくれた美味しい夕飯も、ここんところ少ししか食べられてない。

残すのは申し訳ないので、量を減らしてもらっているけど、それでも食べきれない時もある。

けど、

『残すのはよくない』→『無理やり食べる』=……なんだか最近、太ってきた?

こんな図式を繰り返すうちに、何て言うかさぁ、下腹ポッコリ?

飲んでもないのにビール腹?! いやすぎる~!!


今日も『食べ過ぎた……』と思いながら、パンパンのお腹をそっとさする。

うぐっ!

やばい。リバースだけはしたくない!!

口元を押さえてとっさに俯き、静止する。

落ち着け~、落ち着け~。

涙目になって、必死にこらえる私。

「ミカ!! 大丈夫か!」

案の定、ラルクがすっ飛んでくる。ごめん、そんなに心配そうにしないで! ただの食べすぎだから!!

「らいりょーぶれふ」

手で口を押えたままなので、不明瞭な発音は許してくれ。

「お姉さま! ご気分がすぐれないのですか?」

アンも、私の背をさすりながら聞いてくる。う~ん、気分は悪くないんだよ……

「いへ、らいりょーぶれふから」

涙目のまま、微笑んでみる私。

あ~、背中をさすってもらったら、ちょっとマシになってきた。

ふう。危ない危ない。

そっと口元から手を離し、ふぅぅ~と大きく息を吐き出したところで、


「ミカ……、もしかして……?」


ラルクがちょっと赤い顔で、真っ直ぐに私の眼を見てくる。


「ほへ?」


何がもしかして? キョトンとなり、小首を傾げてラルクの眼を見返す。


「あら、まあ! そうですわね! きっとそうでしょう!!」


私の背をせっせとさすっていたアンも、何を読み取ったのか、ぱっと顔を輝かせ、私の顔を覗きこんでくる。


「はへ? 何ですか? もしかって?」

やばい。試食パラダイスがばれた?!

「もう、お姉さまったら! すっとぼけないで下さいよ!」

え? 太ったこともばれてる?!

「って、何を?」

一応とぼけておこう。太ったなんてばれたら恥ずかしすぎる!!


「ご懐妊なさったんじゃないですか?」


ニッコリ、爆弾炸裂――――!!




「で。結局のところ、食べすぎということか」

呆れ顔でラルクが言う。

椅子の上で正座し、両手をきちんと膝の上に置き、顔はこれ以上ないくらいに項垂れた私。

はい、呆れるのもゴモットモデス。

「はい。ごめんなさい」

あ~もう、穴があったら入りたい~!!


懐妊疑惑を払拭するために、これまでの試食パラダイスと買い食いをゲロッた私。

「だって~! 村人さんたちのご厚意を無下にできなかったんですもん~!」

拗ね顔で、上目づかいにラルクを見る。ちょっと口をとがらせるのもポイントです☆

「まあ、それはわかる、が」

「でしょ!?」

「これからは、試食は3品まで」

「えええ~!!」

ああ、さようなら、私の試食パラダイス……!



**********


結局、ミカの懐妊は、オレやアンの勘違いに終わった。

これでやっと、こちらの人間になりきることができると思ったのだが。

まあ、焦ることはない、か。


今日もありがとうございました!(^^)



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