勘違い
ここの所、ミカの様子がおかしい。
顔色が悪かったり、下腹をさすっていたり。
食欲が湧かないのか、食事の量も減っている。
具合が悪いのかとオレが尋ねても「いえ、大丈夫ですから」と、無理に笑顔を作り、誤魔化そうとする。
体調の変化か、それとも……。
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お姉さま、最近体調が思わしくないのか、「ごめん、今日も少なめでお願い!」と言ってきます。
私の作る料理に何か御不満でもあるのかしら? と思ったのですが、そう言う訳でもなさそうですの。
胃のあたりが気持ち悪いのか、たまにその辺りを押さえて顔をしかめていらっしゃいます。
リバースするほどでもないのか、ぐっとこらえている感じではあります。
何か、悪い病気でないといいのですが。
少し心配です。
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今日は午後診、休診日~♪
という訳で、私は休診日恒例となった、『外貨獲得大作戦』のために市場へとやってきているのだ。
毎回同じ種類だと飽きられてしまうので、薬の種類は、毎回ちょっびっとマイナーチェンジさせていただいてます☆
いつものように、八百屋の軒先を借りて営業開始!
「ミカ様、こんにちは! 今日のお薬の種類は?」
さっそくお声がかかる。村人マダムだ。
「はい! 今日のお薬は、基本の『風邪薬』と『下痢止め』、いつもとちょっと配合を変えた『胃腸薬』、乙女の大敵『便秘薬』、そろそろアレルギーもあるかもしれない『鼻炎薬』です!」
営業スマイル全開で、私は今日のメニューを答える。なんなら揉み手もしましょうか?!
「この間買い求めた風邪薬はとてもよかったので、今日もそれを一つと、便秘薬、お願いします」
並べられた薬を目で追いながら、これと、これ、と、指差してくれる。
「はい、は~い! ではお二つで50ルナです! まいど!!」
HEY、HEY、お~きにまいどあり~♪ だ。←古すぎる。
「まいど?」
「ありがとうございます、みたいなもんです!」
「ふふふ、そうなんですね? ありがとうございました、ではまた」
面白そうに笑ってから、手を振り去っていく村人マダム。
私もスマイル全開、手を振りお見送り。
よし、これでまずはジュース代げっちゅ~!
今日もサクサク薬ははけていく。
気分はすっかりナニワの商人で~す☆
そしてまた、売り上げの一部で自分にご褒美。
今日も市場は賑やかに、いろんな珍しいものを扱っている(リアルワールド人的に)。
まずは、どこということもなく、ふらふらと市場を一周。
その間にも、
「ミカ様! これ食べてみてください!」
「おう! ミカ様! ひとつ食ってきな~!」
「ミカ様! 今日はこれが美味しゅうございます。一口味見なさっていってください!」
お野菜、果物、お惣菜。
いろんなお店から次々と声がかかる。
まさに試食パラダイス!!
最初は遠慮してたんだけど、どのお店も売りつけようとしてるんじゃなくて、純粋に好意で言ってくれているのが判ってきたので、今ではすっかりパラダイスを謳歌している。
あ、でもちゃんと買ったりもしてるからねっ!
でもさ、広い市場を一周する頃には結構満腹になってたりするんだ……。
一口といっても、いつもかなり大きな一口をくれるし(太っ腹!!)、ちょっとずつ間を開けながら食べるから、満腹中枢も刺激される。
かくして、家に帰る頃にはかなりお腹いっぱいな私。
せっかくアンが作ってくれた美味しい夕飯も、ここんところ少ししか食べられてない。
残すのは申し訳ないので、量を減らしてもらっているけど、それでも食べきれない時もある。
けど、
『残すのはよくない』→『無理やり食べる』=……なんだか最近、太ってきた?
こんな図式を繰り返すうちに、何て言うかさぁ、下腹ポッコリ?
飲んでもないのにビール腹?! いやすぎる~!!
今日も『食べ過ぎた……』と思いながら、パンパンのお腹をそっとさする。
うぐっ!
やばい。リバースだけはしたくない!!
口元を押さえてとっさに俯き、静止する。
落ち着け~、落ち着け~。
涙目になって、必死にこらえる私。
「ミカ!! 大丈夫か!」
案の定、ラルクがすっ飛んでくる。ごめん、そんなに心配そうにしないで! ただの食べすぎだから!!
「らいりょーぶれふ」
手で口を押えたままなので、不明瞭な発音は許してくれ。
「お姉さま! ご気分がすぐれないのですか?」
アンも、私の背をさすりながら聞いてくる。う~ん、気分は悪くないんだよ……
「いへ、らいりょーぶれふから」
涙目のまま、微笑んでみる私。
あ~、背中をさすってもらったら、ちょっとマシになってきた。
ふう。危ない危ない。
そっと口元から手を離し、ふぅぅ~と大きく息を吐き出したところで、
「ミカ……、もしかして……?」
ラルクがちょっと赤い顔で、真っ直ぐに私の眼を見てくる。
「ほへ?」
何がもしかして? キョトンとなり、小首を傾げてラルクの眼を見返す。
「あら、まあ! そうですわね! きっとそうでしょう!!」
私の背をせっせとさすっていたアンも、何を読み取ったのか、ぱっと顔を輝かせ、私の顔を覗きこんでくる。
「はへ? 何ですか? もしかって?」
やばい。試食パラダイスがばれた?!
「もう、お姉さまったら! すっとぼけないで下さいよ!」
え? 太ったこともばれてる?!
「って、何を?」
一応とぼけておこう。太ったなんてばれたら恥ずかしすぎる!!
「ご懐妊なさったんじゃないですか?」
ニッコリ、爆弾炸裂――――!!
「で。結局のところ、食べすぎということか」
呆れ顔でラルクが言う。
椅子の上で正座し、両手をきちんと膝の上に置き、顔はこれ以上ないくらいに項垂れた私。
はい、呆れるのもゴモットモデス。
「はい。ごめんなさい」
あ~もう、穴があったら入りたい~!!
懐妊疑惑を払拭するために、これまでの試食パラダイスと買い食いをゲロッた私。
「だって~! 村人さんたちのご厚意を無下にできなかったんですもん~!」
拗ね顔で、上目づかいにラルクを見る。ちょっと口をとがらせるのもポイントです☆
「まあ、それはわかる、が」
「でしょ!?」
「これからは、試食は3品まで」
「えええ~!!」
ああ、さようなら、私の試食パラダイス……!
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結局、ミカの懐妊は、オレやアンの勘違いに終わった。
これでやっと、こちらの人間になりきることができると思ったのだが。
まあ、焦ることはない、か。
今日もありがとうございました!(^^)




