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泉の女神  作者: 徒然花
番外編
48/79

異世界通貨・うしろ

今日の販売分があっという間にはけちゃったので、早い時間に店じまいになった。


軒先を貸してくれてたマダムには、ショバ代として『風邪薬』を献上した。

「まああ! そんな、結構ですのに!」

「いえいえ。とても助かりました。少ないですけど、よかったら」

「ほんとにもう。では、ありがたく頂戴します」

最初は遠慮していたマダムだったけど、タダでは申し訳ないのでその手に薬を押し付けたわ。ほら、礼儀を重んじる日本人だもの。

マダムも結局笑顔で受け取ってくれたし。よかったよかった。


手元の巾着には今日の売り上げが入ってる。1こ25ルナ×5種類×5パック分のお金。

外貨獲得、大成功☆

うほうほ~な気分で、ジュースを売ってる果物屋さんに向かう。ああ、スキップしちゃうよ☆

「ミックスジュース、くださいな!」

満面の笑みで注文する。うへへ、初買い食い☆

「まあ、ミカ様。今日は珍しいですわね? お一人ですか?」

優しい笑顔の果物屋のマダムは、私の注文のジュースを早速作りながら世間話をする。

「はい! 久しぶりのお一人様です!」

「まあ! ふふふ。……はい、できました。50ルナです」

「はい。50ルナ」

「ありがとうございます」

巾着から10ルナ銀貨を5枚出し、マダムの手の上に置く。うん、かなりうれしいぞ。

初任給で初めてご飯を食べた気分だな。こりゃ。

いつものジュースが、さらに美味く感じるぜ☆




初任給といえば、お父さんお母さんにプレゼントよね?

こっちにお父さんもお母さんもいない私としては、ここはやっぱり愛する旦那様にでしょう。て、うわ、自分で言ってて恥ずかしいわ。

……こほん。まあ、それはいい。

なんかラルクにも買ってみよう!

リアルワールドのモノは、ちょいちょい差し上げたけど、こっちのモノはあげたことないしなー。

鉄板ネタのネクタイなんて、こっちにゃ存在がないし? じゃあ、服? ……ピンとこないなぁ。

じゃあ、なんだ? 何がいいんだ??


そんなことをぐるぐる考えながら、市場をフラフラと見て歩く。

ここの市場は食品以外にも雑貨や服、いろんなものを置いている。


しばらくフラフラしていると、地面に敷物を敷いて、銀細工のようなものを売っている店を発見した。

看板には『&%*‘$の店』。……読めねえし。

たぶん、ここの村人じゃないんだろう。行商人かな?

こちらの村人よりも、若干色黒なおじさんが、店番をしていた。


「手に取って見てもいいですか?」

「ああ、もちろんですよ」


ニコニコと人のよさそうな笑みを浮かべて、おじさんは「どーぞどーぞ」と言ってくる。

文字は読めなかったが、言葉は通じた。よかった。

遠慮なくしゃがみ込んで商品を見ると、細かな意匠が掘りこまれた繊細な指輪や、かと思うとあっさりとしたチェーンのみのネックレスなど、なかなかに面白いアクセサリーがいろいろ置いてある。値段を見てもそんなに高くはない。今日の稼ぎで買えそうなものばかり。


その中で気になったのが、細いリング。


シンプルで、一か所だけがねじれているデザイン。

「ふむ。なかなかシンプルでいいじゃないですか」

手に取ってよく見る。

「でしょう? これなら彼氏に上げても喜ばれますよ~」

「彼氏ちゃうし」

「おや」

「旦那様です」

「それはさらにいい! お安くしときますよ?」

早速交渉モードなおじさん。むむ、お値段交渉ですか? 値切っちゃいますよ~!

おじさん、後悔しないでよ!




「……ありがとうございました」

白旗フリフリでお見送りしてくれるおじさん。

ふふふ、勝ったぜ。

元々のお値段が300ルナだったんだけど、交渉頑張った私は、250ルナにしてもらった上に、お揃いのサイズ違いをゲットしたのだ!!

いわゆるペアリングってヤツ?

ラルクの指のサイズなんて知らなかったんだけど、いまだ借りっぱの『騎士の指輪』からサイズを推測したさ! 合わなかったら、チェーンで首から下げておけってんだー!




意気揚々と我が家に戻る私。

まだラルクは帰ってなかったんだけど、そんなに待たずして、

「ミカ? 先に帰ってたのか?」

と、声がかかった。


入り口扉を開けて入ってくるラルクに、

「おかえりなさい~!!」

と、思わず飛びついてしまった。あれ? なんかテンションたっかいなぁ、私。

普段こんなこと絶対しないのにな。


「っ!? ミカ?? どうした??」


おお、ラルクが焦ってます! 私を抱きとめたものの、いつものテンションでない私に戸惑ってますね。

ふふふ。ちゃんと読み取れるようになってますよ~!


「え~とですねぇ、外貨獲得成功と、初任給プレゼントで、なんか舞い上がってます~!」

にまにまと笑う私、若干呆れ顔のラルク。抱きとめた私を少し離して、まじまじと顔を覗き込んでくる。

「はあ? 初任給プレゼントってなんだ?」

あ、またこれもリアルワールド用語ですね~。

「平たく言って、初めての給料でプレゼントを買うことですよ~。という訳で、はい、これどうぞ!!」

そう言って、私の腕をつかんでいたラルクの左腕を解いて、おもむろに指輪をはめてみる。

「指輪?」


驚いた顔で、はめられた指輪を見つめるラルク。


すごー、ぴったりだった!! 私の見立てってば捨てたもんじゃないわね。

「そーです。向こうの世界では、結婚したらお揃いの指輪をつけるんですよ」

見て見て~、と、私の左手の指輪も見せる。

「これ、ミカが買ったのか?」

「そうですよ! 今日の売り上げでゲットです! いつもありがとうの気持ちも込めてみました」

てへぺろ☆


「……」


あれ? 無言??


「ラルク?」

ラルクの表情を見ようと顔を上げようとした時。

「ぐっ!! ……ぐ、ぐるじい……」

むっぎゅ~~~っと抱きしめられたよ。あまりの強さに内臓的な何かが出てきそうになったわ。




それから、毎週午後診が休みの日にはせっせと外貨獲得に勤しむようになった私。

これが結構評判で、この村だけじゃなく、近隣の村からも購入者が増えてきた。


「女神様印のお薬ください!」


でも、いつの間にか『ミカさん印』が『女神様印』に変わっていたのはなんでだろう??


甘かった……かな? いや、この二人的には甘い方、なはず!(笑)


今日もありがとうございました!(^^)

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