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泉の女神  作者: 徒然花
番外編
47/79

異世界通貨・まえ

甘いかもー、です(笑)

こちらに来て4ヶ月。

順調に診療所は機能してますよ。

こっちの言葉もなんとか習得出来たよ。がんばってるねー、私! いい嫁だよ。まったく。

でもさ、よく考えたら、こっちの通貨っていうか、ぶっちゃけお金のことをすっかり失念してたのよね。

まあ、買い物に行く場合は必ずラルクが一緒だから、お会計に困ることはないよ?

でもね、おひとり様で、買い食い~とか、衝動買い~とかできないわけよ? わかる?

ラルクが、私を一人にしてくれないのもあるけど、たまには一人でふら~っとしてみたいなぁって思う時もあるのよね。ちょっとスイーツ食べるだけでもいいのよ。

リアルワールドでは気ままな一人暮らし、かつ、干物生活を送っていたわけだから、自由を謳歌してたのよね。

今の生活が窮屈とかそんなんじゃなくて、なんか養われてる感バシバシなのがつらいんだわ。

自分で診療所を構えてるのにね?

リアルワールドで言えば『開業医』だよ? 私!




診療所の報酬は、基本的に農産物。

まあ、初めがボランティアみたいなもんだったから仕方ない。

私だって医師免許を持ってるわけじゃないから(って、こっちの世界では関係ないか☆)、診療で報酬貰うのにためらいがあるっちゃあるからね。

でも、今は立派に私の仕事だからねぇ。

しかし、今更お金取るのも心苦しい。


「んーむ、んーむ」

夜。一日の仕事を終えて、ダイニングでお茶を飲む、寛ぎの時間。

腕を組んで難しい顔をしている私に、

「どうした? 気分でも悪いのか?」

怪訝な顔で質問してくる旦那様≪ラルク≫。

「いえ、気分が悪いんじゃないんです。どうやって外貨獲得をしようかと検討中でして」

「はあ? ガイカ?」

おおっと、『外貨』はリアルワールド用語でしたね! 翻訳せずに『ガイカ』って発音しちゃったしねー。英語で言うと『get a Gaika』みたいに言っちゃったー。

「まあ、要するにお金です。通貨です。……まさか、貝とか言いませんよね?」

「貝ではないな。硬貨だ」

そういうと、ラルクはお財布から硬貨を取り出してくれた。……金、銀、銅。おお、メダルじゃん!!←違うし。


「金貨が1000ルナ。銀貨が10ルナ。銅貨が1ルナだ」

ラルクが硬貨をより分けながら教えてくれる。

解りやすくてよかったです。1ドル~とか1セント~とか、この硬貨が10セントで、これが25セントで~……うんぬんかんぬん、種類がたくさんになるとややこしくて仕方ない。

通貨の種類はわかったけど、価値っていうの? そういうのがよくわからん。いわゆる消費者米価みたいな?

「ちなみに、主食のコメ(のようなもの)はおいくらですか?」

私はラルクに聞いてみた。

「そうだな。大体1kgで200~500ルナ、だな」

変動が大きいというのは、あれか? ブランド米高いけど、普通のコメはそこそこの値段で買えるっていうやつだな。

「なるほど。わかりました」

「で、ミカの言うガイカっていうのは何だ?」

「えーと、まあ端的に言ってお金を稼ぐことだったんですよ。ほら、診療所の報酬って農産物じゃないですか。これじゃあ何も買えないなぁって思ってですねぇ。食いっぱぐれることはないですけど、服とか、生活必需品を買うにはお金が必要かと思いまして……」

そういや、報酬って『供物』だったなぁ……遠い目。

「お金なら、ミカは心配しなくていい」

「え~! でもですねぇ、おんぶにだっこはヤなんですよ~! ぶーぶー」

「なぜだ?」

「お小遣い欲しいっていうかぁ、まあ、なんというかぁ、買い食いしたいっていうかぁ……」

最後の方は都合が悪いからごにょごにょになってしまった。

「オレと一緒なら、そんなことは解決するだろう?」

ごにょごにょが聞こえたのかどうなのか、ラルクが怪訝そうな表情をする。

「ほ、ほら、ラルクが外出中に『あ! あれが要る! すぐさま買いに行かなくちゃ☆』ってなことになった時にですねぇ、手持ちがないと心細いじゃないですか?」

「まあな。それじゃあ、ミカにいくらか渡しておけばことは済むんじゃないのか?」

ああ、もう! ああ言えばこういう小僧め!!

「いや~、こう、なんか、自分で稼いだお小遣いが欲しいなぁって……」

ラルクに言で勝てない私は、ついに本音を吐いてしまったよ。うう、弱いなぁ私。

一応、上目使いという小細工はしておいたけどね☆

「はぁ。ミカは自立心が旺盛というかなんというか」

ラルクは、本心をゲロッた私を苦笑しながら見ております。




「あ、そうだ。お薬を売ればいいのか」

「薬?」

「そうです。診察してもらうまでもない風邪とか腹痛に、常備薬っていうんでしょうか、そういうのです」

「ああ、なるほどな」

いわゆる『市販薬』ってやつ?

漢方講座で、かなり村人さんたちにも自分で薬を調合できるということが伝わったんだけど、いつでも作れるとは限らないだろうから、とっさの時にちょっとあれば便利かなって思うんだよね。緊急時だけ乗り切れば、後は自作するもよし、診察してもらうのもよしだからさ。

「それを手ごろな値段で販売する! うん、それで行こう!」

「まあ、いいんじゃないか?」


美華さんの『外貨獲得大作戦』は、『市販薬』を作って販売することに決定♪




薬草摘みの時に、いつもより多い目を摘んで、それを販売用に使う。

とりあえず『風邪薬』『解熱剤』『下痢止め』『腹痛』『胃痛』の5種類。『解熱剤』は鎮痛剤も兼ねてます☆

内容量は、大体1日分。2~3包。モノにより前後。


で、肝心の値段だけど。


「ねえ、ラルク。私の好きなあのジュースって、だいたいおいくら?」


村の市場で売っている、果物をミックスさせて作った、いわゆるミックスジュースだね。これがフレッシュで美味しいのよ~! こちらに来て一番のお気に入り。だってこっちにはまだスイーツが普及してないんだもん!!

大体こちらのスイーツは、果物をまんま絞ったりカットしたりしたものが主流なのだ。

「ああ。そうだな、大体50ルナくらいかな?」

「じゃあ、1パック25ルナにしよう!」

「……そんな安直な決め方でいいのか……?」

だんな様のツッコミはスルーの方向で行かせていただきます☆




午後診をお休みにしている日に、市場に行って行商。うん、なんか商いやってます~って感じで新鮮。

場所は、八百屋のワゴンの軒先を間借り。この八百屋のマダムはすっかり顔なじみだし、何て言っても私が初めてこちらに来た時に、泉から引っ張り上げてくれた、肝っ玉かあちゃんs(複数形)のもうおひと方なのだー!(もう一人はお義母様です☆)

それはさておき。

「こんなところでいいんですかい? ミカ様」

「もう、十分も十分です! おじゃまします」

ラルクと結婚して、さすがに『女神様』と呼ばれることはなくなったけど、その代わり『ミカ様』と呼ばれるようになってしまった。ああ、やっぱりゴージャス姉妹のあの方みたいで気が引ける……。


野菜を満載したワゴンの横に、ちっちゃいテーブルを置いてもらって、そこに薬を並べる。

テーブルの前には『ミカさん印のお薬☆』と紙に書いて貼ってあります。

ちなみにラルクは、子供たちに武術を教えに行っていて、私一人で営業でーす。


テーブルの後ろに、ちんまり座って、

「お薬はどうですか~」

と、道行く人に声をかけて行く。

ほとんどの人が、


「まあ! ミカ様!!」


と、足を止めていく。

まあ? 一応村では超有名人だもんね、私。

忙しくて診療所を出ることもあんまりなかったし、村の中にもたまにしか出没しなかったから、こんなところで薬売ってるのが違和感あるみたい。

でも、自分で言うのもなんだけど、自分自身が『客寄せパンダ』だからか、薬は案外サクサク売れたよ。ぐっふっふ~!


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