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泉の女神  作者: 徒然花
番外編
46/79

お料理

アンちゃんはお料理担当です(^^)

「~♪~~♪」

ふんふんと鼻歌を歌いながらキッチンに立つ私。後ろのカウンターには、異世界のお料理本。時折それを覗きこみながら、手早く調理してゆきます。

最近、お料理が楽しくて仕方がありませんの。


アン 18歳。村の巫女 兼 調理師見習い。




村を突然襲った謎の病魔を退治してもらうべく、異世界からお呼び申し上げた女神様。

村外れ、森の入り口にある神泉から姿を現された女神様は、小さくておかわいらしくてびっくりしてしまいました。

思い描いていた神様というのが、すらりと背が高く、ほのかに微笑んだ、慈悲深いのかそうでないのか判然としない表情(いわゆるアルカイックスマイルというやつか?)、ゆるゆるとした動き、耳にではなく精神に直接語りかけてくる、そういったものだったので、目の前に現れたかわいらしい人が女神様だなんて、ちょっとほっとしたりしていました。だってとっても好感のもてる人だったんですから。

小さいながらもエネルギッシュに、私たちの無理なお願いを聞いてくださり、ご尽力くださったことに、私たち村人はすっかり心酔してしまいましたとも!

得体の知れない流行り病を鎮圧したにもかかわらず、ちっとも威張ったりせず、謙虚な所も惚れてしまいました。私が男ならばすぐさまプロポーズしてますわよ!

もうほんと、この時ほど兄様をうらやましいと思ったことはないですわね。

まあでも、そんな兄様のおかげで(?)、女神様は名実ともに私の『お姉さま』なんですけどね。うれしいですわ。


ああ、こほん。女神様の話からずいぶんと脇にそれてしまいましたわ。

で、その女神様が、ご自分のいらした世界からお取り寄せ(実際に行って持ってきたんだが)してくださったのが、あちらの世界の料理の本。栄養学の本もあります。

文字はまだたくさんは読めませんが、『ひらがな』というものと『カタカナ』というものはかなり読めるようになりました。お姉さまが教えてくださるんですもの、張り切らずにいられますか!

そして、お姉さまはあちらの料理のことも教えて下さりまして、私に『栄養を考えて料理を作る人になってはどうですか?』と勧めてくださいました。

私もそれに異論はございません。

それ以来、料理や栄養に関して、お姉さまに翻訳してもらいながら勉強してまいりました。




「で。最近のアンのお流行はこれ?」


夕飯は、以前からの通り私が作って、兄様とお姉さまと一緒にいただいています。

だって、お姉さまは診療でお忙しいんですもの。私がやらずに誰がやるのです!

新婚さんの邪魔をしないとか、そこ、言わない!

で。今日も張り切って作りましたよ~。


リニュウショク。


「ええ! どうですか? これなら病人の方も食べやすいと思うんです」

「病人……」

あら、お姉さま! お疲れになったのかしら? なんだか引きつってません?


ゴン。


まあ! 大変! テーブルに突っ伏してしまわれましたわ!!

「ミカ、どうした?」

ほら、すぐさま兄様が反応しますよ! 椅子からさっと立ち上がり、お姉さまの元へまわります。

「お姉さま! お疲れになられたんですか?」

私も心配です。お姉さま、働きすぎなのでは?

「……いえ、疲れでも病気でも何でもなくてですねぇ」

兄様に引き起こされながら、涙目でおでこをさすっています。ああ、おでこを盛大にぶつけていらっしゃいましたものね。

「じゃあ、どうしたんだ?」

「アンの料理に……」

「……私の料理に?」

気まずげに頬を赤らめておられますが、私の料理がお気に召さなかったのかしら……!

我知らず青ざめていたのでしょうか。勝手にショックを受ける私に、お姉さまは慌てて、


「違うんです! 離乳食っていうのは、赤ちゃんの食べ物なんですよ!」


……まあ、私ったら!


「あら! そうなんですね!」

「そうです! ちゃんと教えましたよね?」

まだ赤い顔をされているお姉さま。これはこれでおかわいらしいですけどね。

「あ、間違えてしまいました!」

あはっ☆

兄様もなんだかビミョーな表情。

「あら、でももうすぐしたら必要になるじゃないですか! その時のためにも私、いっぱいレパートリー増やしておきますね!!」

そうです! これこそ私の使命ですよ!!


「いや、まだないですから!!」

「ふむ、それは一理ありだな」

「ラルク!!」


ますます顔を赤らめるお姉さまと、ニヤリと笑う兄様。


ふふふ、あながち遠い未来ではなさそうかと。


アンちゃん、こういう人だったのか……(笑)


今日もありがとうございました!

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