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泉の女神  作者: 徒然花
番外編
40/79

空白の3日間~嵐の直前

昨夜のショックはまだ心に残ったまま、朝を迎える。結局眠れずに悶々と一晩過ごしてしまった。ベットでごろりと寝返りを打つ。見慣れた天井を凝視しながら、まだ思考は堂々めぐりをしていた。


ミカが向こうの世界に帰ってしまう。


どんなに待っても、もう次の日に帰ってくることはない。

それは彼女を失うこと。もう二度と会うことも叶わない。

いつも他人のために一所懸命がんばるミカ、そんな健気な彼女を愛しいと思い、それを側で守っていることに幸せを感じていたのだと今になって実感する。いつも朗らかな微笑みで周りを癒す彼女を、どうしたらこちらに留めておけるのだろう?

しかし、ここでこうして思い悩んでばかりいては不毛というもの。


この気持ちを彼女に伝えて、彼女自身に判断してもらおう。もし本当に向こうに帰ってしまうにしても、納得がいくだろう。


そう思うに至って、やっと納得がいき、おもむろに起き上がる。

そろそろ朝の薬草摘みに出かける時間だ。




朝の薬草摘みの時も、ミカはいつもと変わらずせっせと薬草を摘んでいく。

「なあ、ミカ?」

一晩考えたことを直接彼女に問うてみようと口を開いたのだが、肝心のミカは先程から「この草の根っこがいい薬になるんですよ~」とか言って、うんうん唸りながら引き抜こうと悪戦苦闘していた。質問は後回しでいいかと思い直し、手伝ってやるか、と手を伸ばしたところでいきなり抜けたらしく、

「えいやっ!! うぎゃっ!!」

と叫んだかと思うと後ろにひっくり返ってしまう。手には抜けたばかりの根っこをしっかり持ち、引き抜いた拍子に飛び散った土まみれになるミカ。ものすごく間抜けな図なのだが、それすらも微笑ましく見えてしまうオレは重症か。オレが微笑んだのと同時に目が合った彼女は、瞬く間に顔を赤くする。

「大丈夫か?」

笑いをこらえ、そう言いながらミカの手を取り引き起こす。ついでに飛び散った土も払ってやると、

「きゃ~!! スミマセン!! ご迷惑をおかけしましたっ!!」

と、無駄にあたふたしてから慌ててぺこりとお辞儀する。そんなに慌てなくてもいいし、迷惑にも思ってないのに、いつも彼女はこうだ。むしろもっと頼ってくれていいくらいなのに。

「いや、大丈夫ならいい。頭は打ってないか?」

「ぜんっぜん、大丈夫です!!」

まだ真っ赤な顔をしてぶんぶん頭を振る。そんな様子も面白い。

「それよりもほら、見てラルクさん!! すっごい立派な根っこが採れましたよ!!」

はっと我に返り、嬉しそうに戦利品を見せるミカ。その顔を見てまた可愛いと思ってしまう。

「ああ」

そう返事をしながら、すっかり質問をするタイミングを逃してしまったことにがっかりする。まあ、またタイミングをみて聞けばいいか。




「そうだ、ミカ」

また質問を繰り出そうとした時。


ズベっ。


ミカがこけた。


「……」


また見事にタイミングを外された。

オレはもはや無言で常備している怪我の治療薬(以前怪我をしたシェンロンにぶっかけたやつ)を取り出して、擦りむいたところに塗ってやる。

「うぅ、ごめんなさい」

恥ずかしそうに俯いているミカ。

「ちゃんと足元も見ろ」

「はい」

「今日はもう引き上げよう。必要な薬草は充分摘んだだろう?」

「うう……。はい」

不承不承肯いたミカを抱き上げる。本人は重たいからとかなんとか言って降りようとするけれど、ミカくらいの重さなど全く苦にならない。元騎士をなめてんじゃないぞ。それにこれ以上面白いこと、いや、心配になることをされても困る。

「ぎゃ~! ラルクさん!! 歩けます! 歩けますから、降ろしてください~~~」

普段から大きな目をさらに見開いてじたばたと暴れるミカ。それすらもすでに面白いのだけれど。

「診察をするはずの人間が傷だらけなんて、説得力もクソもあったもんじゃないだろ」

「ぐぅぅぅ」

途端に大人しくなるミカ。そんな様子が面白くてつい頬が緩む。

ぎゅっと抱き抱えなおして診療所への帰路を急ぐ。

結局聞けずじまいだったけど、まあ、まだ時間はある。焦ることもないか。




しかし後から思えば、この時が最大のチャンスだったのだが。


ああ、またルゥ登場までこぎつけませんでした……

ごめんなさい。

美華がからむと本編テイストが出てきますねぇ(^^)


またよろしくお願いします。

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