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泉の女神  作者: 徒然花
本編
33/79

明日は満月

イタイ闖入者(いや、ラルクの彼女か?)がやってきてから2日。

あれからラルクは家には帰ってきていない。

一度、彼女が現れた次の日の朝、薬草摘みに姿を現したんだけど彼女もべったり一緒で。ちょ~邪魔なのでお引き取り願った。ラルク、こんなに空気読めない人だったっけ?

「え~と、話つけるまで帰ってこなくてもいいですから?」

シエルと二人、森の入り口に向かう。後ろからラルクはついてくるけど。今日はシェンロンにシエルを紹介しなくちゃね。

そのままシェンロンと3人でも全然大丈夫だし。

「こいつはルゥと言って、あのドリィの妹だ。ただそれだけ……」

ラルクは説明するが、

「ラルク様、ただそれだけなんてひどいですわぁ~」

また甘ったるい声にぶった切られる。ちょ~、朝から鬱陶しいですよ?

あ~でも私、ちょっと感情的になってるかなぁ?

「いやほんと、大丈夫ですから。お引き取りください」

冷たい声になってしまった。

ラルクを盗み見ると、まだ何か言いたげだが私の取り付く島のなさに諦めたみたいだ。ルゥを伴って村の方へと引き返していく。

「兄様も、なぜあのような方を……」

ラルクとルゥを睨んでいたシエルがため息交じりに漏らす。

「さぁ? ほら、蓼食う虫も好き好きっていうじゃないですか?」

「??」

あ、ごめん。リアルワールドのことわざだったわね。




「シェンロン、シェンロン~!」

森の奥に向かって呼びかける。

「あ、シエルさん! シェンロンが現れるときってすっごい風が吹いてくるから気を付けてくださ……ぶはっ!!」

言い終える前に突風にあおられた。教訓。伝えるべきことはシェンロンを呼ぶ前に伝えましょう☆

「きゃっ!」

ああ、驚き方も私と違ってかわいいよ……シエル。

腕で顔をかばって、目をぎゅっと閉じているシエル。

シエルよりは突風に慣れてる(?)私はすぐに目を開けられる。

シェンロンはもう目の前に現れていた。

『その娘は?』

意識に問いかけてくる。

「ああ、ラルクさんの妹さんでシエルさんっていいます。これから先、私の代わりにここへ薬草摘みに来ることも多いと思うので、シェンロン、シエルさんも守ってあげてくださいね?」

シェンロンに笑いかける私。その横で、

「女神様……ドラゴンともお知り合いだったのですか!! しかもこんな神レベルのドラゴン!!」

やっと目を開けたシエルが目を見開き、口をあんぐりあけて驚いている。

まあ? ある意味『野』ドラゴンだもんね?

「まあ、いろいろありましてお友達になりました。あはっ☆ でもすごくいいドラゴンなんで、頼りになりますよ?」

まあまあ、とシエルを落ち着かせながら言う。ほら、伝言とかも頼めるし、王都までびゅってひとっとびよ☆

「はあ……」

「シェンロン、て勝手に名付けたんですけどね? シェンロンが一緒だと百人力、いや千人力です! 『野』ドラゴンも魔獣も怖くないですよー!!」

力強くシェンロンをアピールする。

『ここで私に加護される者は、必ずや守って見せよう』

シェンロンも請け合う。

「すごいです……!!」

驚いていたシエルも、シェンロンが味方とわかると目の輝きを取り戻す。いやむしろ、好奇心でキラキラと輝きだした。

「まあ、あんまり村人さんたちには言わないでくださいね?」

また神様仏様女神様になっちまう。なんて言っても神レベルのドラゴン様だからさ。

「わかりました!!」

力強く頷くシエル。




夜、そっと一人で家を抜け出した。

今夜もラルクは帰ってきていない。あれからアンとシエルが泊まってくれている。二人に気付かれないように、抜き足差し足忍び足。

そっと外に出て夜空を見上げると、満月に一日満たない小望月がきれいに浮かんでいる。かなり秋も深まってきているから、空気が澄んできて、月の光が冴え冴えとしている。

冷えないように夜着の上から羽織った厚手のケープの前をしっかり握って、森の入り口へと急ぐ。

「シェンロン、シェンローン」

小声で呼びかける。

途端に吹き付ける突風。

「ぶふっ!!」

ああ、最後までこの突風に慣れなかったわ……

『どうした?』

シェンロンが語りかける。

「いえね、明日満月だから。明日こそリアルワールドに帰るつもりなんで、シェンロンとお話ししたかったんです」

えへっと笑ってみる。

『そうか』


前もそうしたように、泉のほとりに鎮座したシェンロンにもたれかかり、夜空を見上げる。

「ラルク、帰ってきませんねぇ」

ポツリ。

『そうだな』

「明日、満月ですねぇ」

『ああ』

心に浮かんでくるまま、取りとめなく話し続ける私。

「私、今月頑張りましたよー。村人さんたちに『魔法』とか『不思議な力』じゃないってわかってもらえたんですよー」

『そうか』

「そうなんですよ。やっぱり『自分でもできる』ってことが実感できたらわかったみたいです」

『ああ、そうだろう』

ふふふ。もっと早くに実践しときゃよかったよ。

「でもなんだか、いざ帰るっていう段になるとなんだか切ないですねぇ。しかもこの期に及んで自分の気持ちを自覚しちゃったりしたもんだから、大変ですわぁ」

『気持ち?』

「あ~、はっきり言うと恥ずかしいんですが恋心ってやつですかねぇ? どんだけ鈍いんでしょうか私。枯れた生活長いとこうなっちゃうんですね。ヒモノコワイ」

『ああ、そういうことか』

「そういうことですよ。ま、彼女さんも現れたことだし、今更な気持ちなんで、どうこう言っても仕方ないですね。何とか割り切ります」

『……できるものなのか?』

「しなきゃならないでしょ。がんばります」

しばらく心はシクシク痛むだろうけどね。干物に戻れば大丈夫だろう。

「すべてが完璧じゃないけど、出来ることはしたと思うんです。だから明日、リアルワールドに帰りますね? 私がいなくなっても村のみんなを守ってくれるとありがたいです」

シェンロンに向かってお願いする。

『ああ、分った』

アリガト、シェンロン。

「またシェンロンに愚痴って、ちょっとすっきりしましたよ。ありがとうございました」

私くらいだろう。神様をこんな使い方してるの。いつかばちが当たりませんようにっ!!


なんだかいろいろびみょーに心残りがあるけど、まいっか。お得意の流され体質爆発させよう!!

レッツ! 河童の川流れ!!←全然関係ない!!

今日もありがとうございました!

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