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泉の女神  作者: 徒然花
本編
30/79

がんばれシエル!

夜。


リアルワールドから持ち込んだライトの元、持ち込んだ書物を翻訳していく。

ああ、もうほんと、月の雫に文字翻訳機能を付加することを希望します!!

でもまあ翻訳と言っても、全部は無理だから、名前と効能、使用法に限定して翻訳していくというものだけどね。

私が読んで、ラルクが筆記。


「ほら」

ことり、と目の前にミルクの入ったマグが置かれる。

そろそろ疲れてきたなぁって思ってきた頃にラルクが用意してくれる。

って、はっ!! これって、女子の仕事じゃね?

「はい、お疲れ様でーす(ハート)」とか言って、残業中に飲み物とか差し入れしたら好感度上がるって言うじゃん!?(あざといぞ?)

まあ、それはいいとして、私ってばなんて気が利かないんだ…… がっくり。

心の中のどうでもいい葛藤は他所に、

「ありがとうございます」

と、素直に享受する私。ああ、あったかいミルクが沁みますわ。

「ああ。無理するなよ? ゆっくりやればいいんだから」

ラルクは自分用にホットワインを淹れてきていた。

それ、美味しそうなんだけど、飲んだら絶対寝てしまう。

うう、我慢だ。

「そうですね。これをいただいたらもうひと頑張りお願いしますね」

ラルクに付き合ってもらわないとできない作業っていうのも申し訳ないんだけど、仕方ない。文字の習得はこの年になると時間がかかるのだ! 悲しい現実。

そうして、毎日二人でちまちまと翻訳していった。




日中は、診察しながら引き続き漢方講座にアロマ講習。

漢方講座はどんどん実践していったおかげで、村のマダム達が『漢方知識』を『家庭の医学』的に理解・体得してくれた。

ここに魔法が介在しないことを理解してくれた!

目覚ましき進歩だ!!

でもまだ「女神様」って呼ばれてるけど……


できれば薬師も育ってくれたらいいなと思う。

薬師っていうか、むしろ医者だけど。

私は秘かにシエルが適任だと思ってる。

漢方もアロマも、かなり理解してきたし、何より私の診察をずっと横で見てきた。


「微熱が出て、喉が痛く腫れているという感じでございます」


診療時間。

今日も村人が診察を受けに来ていた。

大体の症状を聞く。

ふむ。多分咽頭炎だろう。

喉のあたりを触診する。

あ~、しこり出来てるね。

私はシエルに振り返り、

「シエルはどう思う?」

彼女の見立てを聞く。

問診と触診を見ていた彼女は、

「おそらく喉の炎症かと思いますが……」

「うん、いいところ。咽頭炎っていうんだけどね、喉に菌が入ったんだね。じゃあ、薬は?」

次の質問を投げかける。

「ええ……」

喉の炎症に効く薬草の名前を挙げるシエル。

花丸です!!




お昼の休憩時間。

「シエルは薬草とか薬師の勉強してみたくない?」

私はシエルに聞いてみた。

「ええ? 薬草の勉強ですか? ……そうですねぇ、女神様に教えていただいて、とても興味が出てきたのは事実ですけれど……」

「けれど?」

「巫女という本来の身分もございますから、私個人の意見だけではどうにも……」

頬に手を当てて、視線を下げて悩ましげに答えるシエル。

そうだよ。そもそもアンとシエルは巫女さんだったよ。忘れてた。

「そうですよねぇ。そうですよ。ちなみにお父上がいいとおっしゃれば?」

「それならぜひとも勉強したいですわ!」

先程の悩ましいポーズから一転、キラキラと目を輝かせ始めるシエル。わかりやすいぞ。

「では、一度村長さんとお話ししてみないとですね」

ニッコリとシエルに微笑む私。




お昼を食べてから、ラルクと森に向かう。

「どうする気だ?」

ラルクが隣を歩きながら聞いてくる。

「はい、王都の魔女様に、シエルを仕込んでもらえるか聞いてみようと思いましてね。シェンロンにお使いに行ってもらおうと思いまして」

ニッコリとラルクを見上げながら私は答える。

手には魔女様宛の手紙。

「ああ、なるほどな。おばばさまでは無理があるからなぁ」

くくく、とラルクが目を細めて笑う。

確かに。おばばさま、人はいいけどヤブだもんね。

と、森の入り口に到着した。

「という訳で、シェンローン!」

びゅわ~~~~っと風が吹いてきた。


ああ、今日も息が止まりましたよ。




シェンロンに手紙を託し、そのまま村長さんのところに向かう。

そういや私から村長さんのところに出向くことって、今までなかったなぁ。

はっ!!

「どうした?」

突然立ち止まった私に、怪訝そうにラルクが振り返る。

「あ~。あのですねぇ、村長さんち、私知らないなぁって思って」

もっそい今更ですけど。

「はあ? 村長の家って、オレんちだろうが」

呆れたようにため息をつくラルク。

「あ、そうですよ」

ぽん、と手を打つ。

「ほら、行くぞ」

そう言うとラルクは私の手首を取った。

わわわわわ!! 手つなぎですか!! って、手首を掴まれてる状態で手つなぎと言うかは疑問ですが。

顔が赤くなるのがはっきりとわかった。


そのまま村長さんちまで引っ張られていった私だった。




村長さんにはあっけなく話が通った。

「巫女で薬師なんてすばらしいじゃありませんか!!」

手放しでOK。

「まあ、魔女様のお返事次第ですけど?」

「わかりました!!」




夜には魔女様からの返事が来た。

さすがシェンロン、仕事早いわ~!

魔女様の方もOK。そもそも私に来いって言ってたくらいだもんね。

しかも私みたいな平凡な女じゃなくて優秀な美少女が行くんだから、魔女様も大喜びしてくれるだろう。




「という訳でシエルさん。王都の魔女様のところで修行できることになりました」

夜。

みんなで夕飯を囲みながら今日一日の成果をシエルに告げた。

今日一日で決まるなんてすごいね~。頑張ったねー。私。

「ええ?! 王都でですか? すごい、嘘みたい!」

ラピスの瞳を見開いて、驚くシエル。

「嘘じゃないですよ~。頑張ってくださいね~!」

シエルの手をドサマギで握っちゃった☆



今日もありがとうございました!

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