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泉の女神  作者: 徒然花
本編
3/79

私は女神様じゃありません

岸に上がらないと、このまま溺死一直線。

せっかく酸素確保に成功したところだったのに。

でも、その岸には見知らぬギリシャ人達(勝手に命名)。


…タイムスリップでもした?いや、実は水たまりで滑って転んで頭打って、ICUで爆睡中とか?


立ち泳ぎしたまま、いかんせんと考える。

すると目が合っていた一番前にいるオッチャンが、

「#$%&‘_<>+‘*‘=」@?&%!!」


なんか叫んだぞ。

英語じゃないな。一応義務教育で習った。

ドイツ語でもないな。第二外国語で習った。

フランス語?ジュテームしか知らない。


言葉はわからないけど、オッチャンを筆頭にみなさん必死に手招きしてる。

そっか、私が溺れかけてるのがわかってるから助けてくれるんだな?

じゃ、ジェスチャーに甘えてそっちに行きますわ。


ジャブジャブとクロールで岸に近づくと、肝っ玉母ちゃんみたいな女の人が二人がかりでわたしを引き上げてくれた。あ~感謝ですぅ。

「助けてくださって、ありがとうございます。」

深々と頭を下げながら私はギリシャ人達にいったのだけど、やっぱり向こうも私の言葉が解らないようで、「????」って顔してる。

びみょ~な空気が流れてるなぁと思っていたら、また先頭のオッチャンが何か言った。

解らないからボケッと立っていると、声に呼ばれた女の子が二人やってきた。

18歳くらいかなぁ?すごい美少女。二人ともよく似ているから双子かも。

その双子ちゃんたちが私の手を引いて、みんなから少し離れたところ行くと、私に布を渡してきた。

「??」

広げてみると、服だった。そう、後ろの皆さんと同じような、ギリシャっぽい服。

さっきの肝っ玉母ちゃんズ(複数形)が、大きな布を広げて背後に立ってくれている。

おっ、隠してくれてるのね!グッジョブ!母ちゃんズ!

そういや私ずっぶ濡れだったのよね。

今が夏だからよかったんだけど、寒い時期だったら凍死モノ。溺死を免れて凍死ってか。やだやだ。

紺色の半袖ワンピースも、サンダルも、お気に入りだけどもずぶ濡れ。とほほ。

持っていたカバンやコンビニの袋は後から誰か拾ってくれたかな?ケータイ、防水仕様でよかったよ。

そう思っていると、双子ちゃんの一人がタオルのようなもので私を拭き始めた。

「ええっ!じ、自分でできますからっ!」

焦って言うけども、そうだ、通じないんだった。

女の子は「?」だけども、にっこり笑って作業を続行する。

もういいや。されるがままになっとこ。楽だし。見られても平気さっ☆

こんなところで江藤美華27歳独身・彼氏ナシな枯れた自分が出てきてしまう。




着替えを終えて、またみんなの方へと連れて行かれた。

女の子が、先頭のオッチャンから何やら受け取ったかと思うと、私に向き直り、その受け取ったものを私の首にかけてきた。


ティアドロップ型の透明な石をトップに付けたペンダントだった。


「女神様、どこかお怪我などなさっておられませんか?」

ペンダントを付けた途端に、目の前の人たちが話す言葉が理解できてしまった。

おおっ、このペンダントってば翻訳機能付き?!

…って、女神様って誰ね??

きょろきょろあたりを見回してみる。


肝っ玉母ちゃんズも、双子美少女達もいつのまにかオッチャンの向こうに戻っていて、オッチャンの後ろの人たちは莚に正座して「へへ~~~!お代官様っ!」って感じでひれ伏している。

お代官様(正確には女神様)は、やっぱ私よね・・・。こっち側、私しかいないもんねー・・・。

じゃあ女神様って、私のことかい!

溺死寸前の女神様なんていないでしょ。




「えーと、女神様ってなんでしょうか?私、普通の人間なんですけど…」

とりあえず、誤解は解いておくべし。

「いえいえ、あなた様はこの泉の女神様です。今しがた我々の召喚に応じてくださったのではございませんか!」

両手を広げて、なんだか大袈裟なジェスチャーですよ、オッチャン。

「だって、女神様なら溺れませんよ。」

ほら、明らかに私ってばアップアップしてたでしょ?

「我々には静かに泉の底から出てきてくださったようにしか見えませんでした!」

うそつけ。髪の毛もずぶ濡れのぺったんこで、よく見えて河童でしょう。

それにこんな東洋人顔した女神さまって想像できないんですけど?

ほら、普通西洋人顔じゃない!

「だーもう!私は溺れかけて顔を出しただけでしょうが!女神様とか、違いますって!・・・って、まって。さっき、召喚とか言いませんでした?」

さっきのオッチャンの言葉の中で引っかかるものがあった。

「はい!我々とは次元の違う世界にお住いの女神様に、こちらにいらしていただくべく儀式を執り行いました!」

キラキラお目目でオッチャンが言わないでぇぇぇぇ!

「・・・次元、違うの?」

はい、ここ重要。

「はい、我々のような下々の住む世界には、女神様のような神様は常駐されておりません!」

そうか。神様って派遣式なのか。いや、そこじゃない。

って、じゃあここは異次元で、これっていわゆる異次元トリップってやつ??

ファンタジーの世界でしかお目にかかったことないけど。

でもなんで私が呼び出されなくちゃならない?神様でもなんでもなく一般人ですがな。

私が召喚されて来た時点で、この召喚術ってば失敗じゃないの?

「どんな神様を呼んだんですかっ?」

一応気になるから聞いてみるけど。

「あ~、いろいろと細かく条件指定をさせていただきましたので、ちょっと一言では言いにくいものでして・・・」

「話、長そうなので割愛で結構です。」

オッチャンの話を私はさえぎることにした。

まじすか。

どんな詳細設定をしたら、神様と私を間違えられるんでしょう。

異世界・・・召喚・・・女神様・・・。

ボー然とする私。

途方もなさすぎる。


「では、女神様!どうかわが村をお救いください!!」

そんなボー然とする私に向かって、オッチャンはまたひれ伏したのだった。

今日も読んでくださって、ありがとうございました!

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