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泉の女神  作者: 徒然花
本編
29/79

がんばれ私!

公園でぼんやり過ごすのも勿体ないので、買い出しに向かう。

今回はソーラー充電式のライト(ランプみたいなの)と、漢方やハーブの書物、栄養学の入門書、血圧計と体温計の予備も購入。

それらをしっかりパッキングして、いざ召喚。


月の石の寿命が近いのなら、こちらに留まったままで居れるのか、はたまた向こうに留まったままになるかわからない。

ならば、出来る限りのことをしておこうじゃないか!!




トイレに行って、手を洗ったらそのまま召喚。

これは覚悟で手洗いしてるからいいけど、この先だよ、問題は。

溺れたくない!!


…… ピシッ 


また、どこからかひびの入るような硬質な音がする。ああ、この音か。

また石にひびが入ったんだな。割れた音ではなかったから、今回はセーフ?

そう思った途端に、いつも通り水の中。


ごぼごぼごぼごぼ……!!


きたよ。これだよ。

ぐるじいよ。

まずは水面の確認から。

力を抜くと、かすかに浮く。そちらを見る。


今回もラルクの姿が見えた。

ありがとう。恩に着ます!




「へっくし!」

ずびっ。

盛大に鼻をすすって、ああ、色気ない私。

さすがに10月ともなると水が冷たくなってきたわ。ぶるっと震えもくる。

うわ、風邪はひきたくない!!

葛根湯飲んで早く寝るべし!!

「大丈夫か?」

ラルクが心配そうに顔を覗き込んでくる。

そうです、今回もお姫様抱っこで帰宅中です☆

「さすがに水が冷たくなってきましたね~。ラルクさんも寒くないですか? 帰ったら葛根湯飲んどきましょうね!」

「ああ。……寒かったらしっかり摑まっておけ」

「はい。ありがとうございます」

ラルクがしっかりと抱えなおしてくれる。私もしっかりとくっつく。

ああ、男の人って体温高いよね~。うらやましいっす。冷え症つらいっす ← 関係ない




今回もちゃんとお風呂を用意して待っていてくれたアンとシエル。

あ~もう、愛してるよっ!!


手早く温もってから、キッチンで葛根湯を作る。

お風呂から出てきたラルクに温かいところを持っていく。

「はい、ラルクさん。これ飲んでおいてくださいね」

ことり、とラルクの前にマグを置く。

「ああ。ありがとう」

ラルクがマグの中身を飲み干すのを見てから、私も飲み干す。


「ああ、今回のお土産ですけど……」

ごそごそとパッキングしてきたものを取り出す。

同じラピスの瞳が6つ。じっとそれを見守る。

特にシエルとアンは好奇心でキラキラさせている。

「……ランプとぉ、本とぉ、体温計と血圧計です!」

どどーん、とテーブルに並べる。

どうやらみんなの興味を引いたのはランプだったようだ。こちらにはないものだもんね。

視線がランプに集中してる。

「「この、ランプってなんですか?」」

アンとシエルの声が重なる。

「これはですねぇ、暗くなったら灯す明かりなんです。こちらではろうそくですけど、これはお日様の光を蓄えて、それを基にして発光するのです」

あってるかなぁ? こんな感じ?

手に取って実際に点けてみる。

パッと周りが明るくなる。

まあ、そんなに大きなものじゃないからテーブル周辺くらいしか明るくないけど、それでいい。ろうそくよりも確かだ。

「「まあああ!!!」」

ツインズが驚きに目を見開く。

「ほう」

ラルクも感心したように片眉を上げる。

ふっふっふ~。文明の利器だよ。

「これなら夜でも活動できます」

親指を立ててグッジョブポーズで満面の笑みで言い放つ私。って、私が開発したものじゃないけどね~。

幾つか購入してきていたので、一人に一個差し上げる。

リビングには3つもあれば十分。

「夜の空いた時間にこの本を翻訳できたらなぁって思いまして」

私はそう言いながら、持ってきた本を指す。

「これは?」

薬草の挿絵が描かれた本を手に取るシエル。

「それは漢方の入門書です。こっちが薬草とかの図鑑。で、こっちがアロマセラピーの教科書」

これ、これ、これと私は指差しながら説明する。

「まあ! これがあればさらにわかりやすいですね!」

図鑑をパラパラしながら嬉しそうに言うシエル。

「全部を翻訳することはできないから、名前と特徴、効能などだけでも訳せたらって思ってます」

シエルの手元を覗き込みながら、私は説明した。

「こちらは?」

アンが手に取ったのは栄養学の入門書。

「これは栄養の摂り方とかですね。向こうとこちらとではそんなに食べ物に差がないから、参考になるかなって。病人食や、普段の食生活などに取り入れたらいいかなと」

「それは素晴らしいお考えですわ!」

アンは首をぶんぶん上下させる。

いつまでも本を眺めていそうな二人にピリオドを打ったのは、やはりラルク。

「ほら、お前たち。もう遅いんだから寝るぞ。また明日からゆっくり見ればいいだろ」

立ち上がりながら、机の上を片付ける。

「「はーい。おやすみなさいませ!」」

にっこり揃った笑顔であいさつするツインズ。うう。今日の疲れも吹っ飛びます!




「はい、では今日は実践してみましょう」


翌日は漢方講座なり。


今日の生徒さんは6人の村人。みなさんお子さん持ち。やっぱり母は健康管理に熱心です。

みんなでぞろぞろ森に入る。

今日はシェンロンには遠くから見守ってもらうように朝の薬草摘みの時にお願いしておいた。出てきたらまたややこしくなるもんね。

「はい、これが風邪の時に役に立つナントカですね~」

「これも解熱作用があるカントカですね~」

「これは鎮痛作用があるウントカですね~」

各々、自分に必要な薬草を摘んでいく。

あるママさんは風邪薬、こちらのママさんは下痢止めなど。


摘み終えて、また家に帰り今度は調合。

薬師のおばばさまから借りてきた調合の道具で、みんなでガッシガッシと地味な作業に没頭する。


「では、今日自分たちで調合した薬を早速使ってみてくださいね!」

にっこり。

今日はこれで終了。各自満足してほっとした空気が流れたところで、

「はい、みなさんお疲れ様でした! 今日のハーブティですよ~」

と、お茶を出してくれた。

「自分でお薬なんて作れるなんて、目からうろこでございますわ」

「組み合わせ次第で色々な効能が引き出せるのも面白いですしね」

感想などを言いながら、寛ぎのティータイム。


「そうですよ~。薬草の効能と組み合わせ方だけなんです。特別な魔法なんてなかったでしょう?」


はい、ちゅうも~く!! ここ、重要!!

にっこり、しっかり、はっきりお伝えする。


「ええ、確かに」

「そうですわね。私たちでもできるんですもの」


顔を見合わせながら言うママさんたち。

納得してくれた!! うわ、うれしいかも!!


「でも、女神様? 昨日は暗くてよくわからなかったんですけど、髪色が変わってますよね?」

ママさんの一人が、私の髪に注目しながら言った。

「そうね」

「たしか茶色でしたよね?」

「今は黒?」

「黒もお似合いですわ!」

「ほんと!」

「女神様の国では髪の色も自由自在なんでございますねぇ!」

口々に好き勝手言っていたママさんたちだったが、最後、


「どんな魔法なんでしょう?」


みんなが一斉にこっちを見た。

「魔法じゃなくて、技術なんですけど~」


これじゃあ元の木阿弥だよ……




髪染めのことをママさんたちに、一から説明する美華であった。



今日もありがとうございました!

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