表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泉の女神  作者: 徒然花
本編
27/79

頭がプリンになってきた

やっと王都から帰ってきました。

王都からの帰りもシェンロンに乗って浪漫飛行☆

って、そんな優雅なもんじゃないけど。

まあ、往路よりはスピードダウンしてくれたけどね、それでも景色なんて見る余地ナシ!


相変わらずラルクにしがみついたままの私。

「また景色を見ないのか? ほら、夕日がきれいだぞ」

ラルクが笑いながら言う。いや、笑う余裕もないって。

「今はいいです! 地に足着いてから見ますから!」

ラルクの胸にぎゅーっとしがみつきながら言う私。

「着いてからじゃ見れないぞ」

まだ楽しそうなラルク。からかう余裕があるのがむかつくぜ。

「見なくていいです。明日見ます」

「ははは。まあ、もうすぐだ」

そう言うと、ぎゅっと私を抱えなおすラルク。




「ミカは、帰りたいとまだ思っているのか」

しばらくして、ラルクが静かに聞いてきた。

「う~ん、帰してもらえるなら帰りたいですけど、迷いが出てきているのも事実です」

「迷い?」

「はい。こちらに私の居場所がどんどんできていくのに反比例して、向こうになくなった気がしてるんです」

「そうか」

「いえね、またイチから築けばいいことなんですけどね、何だかセンチメンタルになってるっていうか、ナーバスになってるて言うか」

あ~、柄じゃないけど。

ネガティブかつ守りに入ってるとは思うんだけどね、急激な身辺変化についていけてないからそう思うのだろう。

「……なんだかんだと流されながらも頑張っているミカは凄いと思う。疲れて倒れたお前を見て、守ってやりたいとも思った」

疲労で倒れ……あ、あれ演技でした。ごめんなさい。

つか、そんな風に思ってくれていたのか。

って、こんなところでそんな心情を吐露されたらですねぇ、オトメゴゴロはズキュンなわけで。惚れてまうやろ~~~!!てな感じで。

ますますこちらに足枷ができてしまうじゃないですかっ!!

さらに抱きしめる腕に力入れるのも反則です!!

「あ、アリガトウゴザイマス……」

ここはお礼を述べとこうか?

「帰りたいという意思は尊重したい。が、帰ってほしくないというのが本音だ。自分でもどうしようもないジレンマだ……」

頭のてっぺんからラルクの声が響いてくる。

ちょ! 頭に口づけないでくださいぃぃぃ!! むきゃ~! 顔が赤くなる!!

「は、はぁ……」

ようやく絞り出した返事は生返事。フガイナイ。

つか、顔があげれません。

「それから、月の石の寿命が近づいている。もうそんなに向こうとこちらを往復することもできないだろう」

さり気なくラルクが言う。

って、はい、ここ重要!! 月の石の寿命~?! ナニソレ聞いてないよ!?

「石に寿命があるんですか?? ……!!」

思わずガバリと顔を上げた。

あまりのラルクとの近さに絶句しちゃったけど☆

「ああ。召喚を行う毎に石にひびが入っていく。もうかなり脆くなっているのが現状だ。いつ割れてもおかしくない」

「そう言えば、いつも何かが割れるような、というかヒビの入るような音がしていました。水中に放り出される前に」

そう。『ピシッ!』という音が聞こえてたんだよね、いつも。

そっか、石にひびが入る音だったんだ。

「そうか。ミカには聞こえていたのか。だからもうすぐ決断の時が来る」

「……そうですか」

コテン、とラルクの胸に頭を預ける。

無事に帰れるようにますます努力せねば!!




王都から帰ってきて数週間。

また診療所しーの、アロマ講習しーの、漢方講座しーのと、すっかり忙殺されてしまった。

ああ、一般人と認めてもらえるどころの騒ぎじゃなかった!! やばい!

時間だけが刻々と過ぎていく!


「ふぎゃぁ!! 時間がない! どうしたらいいのさぁ!!」

夕食後、ダイニングテーブルに突っ伏して頭を抱える私。

そんな突然発狂したかのような私の姿に、

「どうしました? 女神さま?!」

心配そうにアンが訊ねてくる。

「まだ誰にも私が普通の人間だと認識してもらえてません! それに焦っているんです!!」

突っ伏したまま悶える私。

「女神様は女神様です! 何をおっしゃられることやら!」

そこに割り込んできたのは村長さん。

腰が痛いとかで湿布薬をもらいに来ていたのだが、ついでに一緒に夕飯まで食べて、こうして一緒に寛いでいたのだ。忘れてた。

「だって普通の人間なんですもん! 女神様女神様って言われてたら、荷が重いんですっ!」

相変わらず頭を抱えたままの私。

そこに、


「あの~。全然関係ないんですけど、女神様の髪の毛、根元の方だけ色が違いません?」


何とものほほんとした声が響いた。

ほへ? と顔を上げたら、シエルが私の頭を興味深げに見ている。

「ほら! 全体は明るい茶色なのに、根元の方は黒いですよね?」

ニコニコしながら付け加える。

「あっ!!」

またハッとして頭を押さえる私。

「そう言われたらそうねぇ? 今まで気づいたことなかったですけど……」

アンも、しげしげと私の頭を見つめて言う。

そうです。今私の頭はいわゆる『プリン』になっているのですぅぅぅ!!


こちらに来て約3か月。

美容院なんてないわけだし、リアルワールドに帰ってもそんな時間もなかったし。

その前からのもあって、すっかり茶髪の根元が5cmほど地毛が見えてるわけなのです。

地毛は黒髪。

うわ、かっこわる。

「ええと、これはですね。向こうでは髪の色を染めたりすることが出来ましてですねぇ。私も茶色く染めていたのですよ」

説明する。

「それは魔術か何かですか?!」

キラキラお目目で村長さんが食いついてくる。

好奇心はいくつになっても衰えないのね☆

「いえ、魔術でも何でもない『技術』です。逆に、白髪を染めたりもできるんですよ」

ファンキーな紫に染めてるお婆ちゃんとかいるしねぇ。

「「「さすが、女神様のいらっしゃった異次元!!! 髪の色まで自由自在に操れるのですねっ!!」」」

ラルク以外の3人のお目目がキラキラする。

「―― 違うしっ!!」



あーもう、石が割れようがなんだろうが、来週は帰らせてもらう!!


今日もありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ