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泉の女神  作者: 徒然花
本編
26/79

魔女様のおうち

王城の正門を出て、少し歩く。

そこは王城にほど近いが、大通りから外れた民家がひしめく中にあった。

看板もなにもない、古びた扉。

とっても趣のある、言い換えればふっるーーーい家が、魔女様のおうちらしい。

「これが魔女様の家ですかー。」

ほおおー、と感激しながらその建物を見上げる私。

「そうだ。入るぞ。」

そう言って、ラルクは扉を開ける。

カラン、と、扉に付いたベルが鳴る。

ラルクの後から恐る恐る顔を出してみる私。

ドロドロした液体を大鍋でかき混ぜてたりするのかしら?

そんな好奇心ばかりは押さえれない。




「魔女様、参りました」

ラルクが胸に手を当てて恭しく挨拶する。さっきも見たけど、騎士さんの挨拶かな?

慌てて私もラルクの後ろから出て、同様に挨拶する。

王様にしたように跪いたりはしないんだね。

「早かったね、ラルク。街見物はしなかったのかい?」

ふふふふふ、と笑い応える魔女様。

魔女様こそ早くね?

あ、移動の魔法とか使ったりするんだよね?


間接照明の、ほの暗い部屋。

魔女様は、奥のテーブルに、こちらを向いて座っていた。

瞳だけは少女のような魔女様。

パッと見、上品な老女にしか見えないが、秘める力は凄いらしい。

普段は怪我人や病人の治癒をしているが、大事の時には国を守る中心になるらしい。

やっぱ、実力ある人は凄いんだよ。

「こんなにかわいらしいお嬢さんが女神様だってね?」

私を見た魔女様が言う。

う~ん、かわいらしいお嬢さんていう歳でもないんだけど……あはっ☆

「改めまして、魔女様。江藤美華と言います。ミカ・エトウ。いつもお世話になっております。」

ぺこり。

とりあえず、あいさつは大事。もう一度、魔女様に自己紹介する。

「それと、私は女神ではありませんから。ただの一般人です」

これは必ず告げておかねばならない事実!!

すると魔女様は、すっと目を細めて、

「面白いお嬢さんだねぇ。召喚されてきたらしいけど、それはまた厄介なことに巻き込まれたもんだねぇ。」

おほほほほほ、と笑う。

あれ? なんだか今までとは反応が違うぞ?

やっと理解者に出会えた?

「そうなんです!! 帰りたいんだけどなかなか帰してもらえないし、女神様とか神様じゃないと言ってるんですが、信じてくれないんです!!」

両手をグーにして、ぶんぶん上下に振りながらここぞとばかりに訴えた。

「そうかいそうかい。それで、ミカは流行り病を治すのにどんなことをしたんだい?」

優しげな瞳に見つめられると、心が凪いでいく感じがする。ん? これも魔女様の魔法?

「ええと、薬草を調合してお薬を作って患っている方々に投薬しました。健康な方にも予防策を施しました。」

これだけだよ? どこに女神様の力なんて不思議なものが存在します??

「それで、村の病は完治したんだね?」

「ええ……まあ……。そうみたいです」

「ところで、その薬草の知識はどこで学んだんだい?」

また好奇心でキラキラ輝きだす魔女様。

「えーと、私が元居たところでですね、お医者様のお手伝いをする仕事をしていたのです」

リアルワールドでの私のことを、時折説明を入れながら、話して聞かせた。

「へへぇ、それはまた面白いねぇ。私にもその知識を披露しておくれよ? よかったら今日はうちに泊まっていきな」

私の薬草ヲタ話を聞きたいの?? 語るよ~?

あ、でも明日にはまた診療所があるじゃない。

そう思い出した時、

「それは無理でございます。明日にはミカは村での仕事が待っておりますので」

それまで黙って私たちのやり取りを聞いていたラルクが言った。

「あら、それは残念だね。じゃあ、また日を改めておいで」

「ありがとうございます!」

にっこり笑顔で言われるから、つられてこちらも笑顔になる。

「今度は私が召喚術で瞬間移動させてあげるよ?」

ニヤリという笑顔に変わる。

慣れないドラゴンで来たのが分ったのかしら?

それ、ぜひお願いしますぅって言おうとしたら、

「いや、オレが連れてきますから」

なぜか憮然とした顔でラルクが答えてるし!!

またジェットドラゴンかぁ……

「せっかく魔女様が魔法で呼んで下さるんですよ? ラルクさんも楽できる……」

と、言葉途中で絶句を余儀なくされた。

ラルク、ブリザード出てます。ゴーゴーです。

凍死しました。

「オレはミカの護衛でもあるんだ」

氷のように冷たい冷凍ビームで瞬殺ですー。

「ラルクさんにお願いします……」

また負けました。


「おほほほほほ。ラルクも面白くなったねぇ」

今度はラルクをニヤニヤと見つめている魔女様。

「せっかく来たんだから、ミカの運勢でも視てあげようか?」

そう言いながら、横においていた水晶玉を正面に寄せる。

うおおお!!The水晶玉占いじゃないですか!!

って、結構リアリストだった私は、そんな占いに行ったことないけどねっ☆

タダなら視てもらおうかしら?

あ、ちょっと怖いかも?

「え……と、いいんですか?」

「いいんだよ。少しだけだしね? さ、手をこの水晶の上に置きなさい」

そう言うと、私の手を取り、水晶の上に置かせる。

それから魔女様は自分の手を水晶玉を包むように翳す。

「ふ……ん。ふん」

じーっと水晶を見て、一人納得してる魔女様。

おーい、何か解説してくれませんかー?

しばらく「ふーん」とか「ほお」とか言ってから、おもむろに顔を上げると、

「普通の子のミカにはいろいろ大変だろうけど、最終的にはいいようになるさ。自分の選択を信じて進むがいいよ」

・・・・・・・・・・・・。

「……自分を信じろ、と」

「ま、そゆことだね」

パチンとウインクする魔女様。じと目になる私。

……それ、ちょっと前にも自分に言い聞かせたとこだったような……

やっぱ、占いなんてこんなもんなんだ!

ま、タダでよかったよ。

お金払ってこれだったら、暴動起こすわっ!! ちゃぶ台ひっくり返すわっ!!

……落ち着け、私。

よくきいたら、魔女様「普通の子のミカ」って言ってくれてたじゃない!

ちゃんと私が『タダモノ』ってわかってくれてたじゃないか!!

それだけでも良しとしよう。……いいのか? いや、いいんだ! タダだから。

「魔力がなくても、ミカの知識があれば治癒魔法に匹敵するよ」

魔女様が水晶玉を脇に片づけながら言った。

「そんなもんですか?」

「そんなもんだよ」

ふうん?

「これからも、私の手に負えない患者さんはよろしくお願いしますね?」

これはお願いしとかないと。今回きた意味がない。

「ああ、まかしときなさい。」


それからしばらくお茶をいただいたりしてから、ラルクと私は帰途に就いた。



今日もありがとうございました!

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