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泉の女神  作者: 徒然花
本編
23/79

交通手段

王様からお呼び出しが来た。


こんな片田舎の、得体の知れない、召喚されてきた『女神様』ごときに。

呼び出されて、『薬事法違反』とか『医師法違反』とか言われてとっ摑まって牢屋にIN☆ とかだったらどうしよう~~~!


そもそもチキンな私。

リビングのテーブルの椅子に座りこんでアワアワしている。

動揺が激しいので、今日の午前診は急遽休診にしてもらった。

テーブルに突っ伏して悶える私。

その頭もとには、先程蹴り出されたドリイが置いていった王様からの招待状。

はい。読めませんけどね☆


コトリ、と、マグがテーブルに置かれた。

顔を上げると、アンがハーブティを淹れてくれたのを持ってきてくれたのだ。

「あ、すみません。ありがとうございます」

突っ伏していた顔を上げて、アンにお礼を言う。

「これを飲んで、落ち着きましょう。明日行くって返事をしてしまったのですから、その相談もしなくちゃですしね」

ふわりと微笑むアン。

あ~、その微笑みにちょっと浮上出来たよ。

「王都はとても賑やかで楽しいところですわ。女神様の気分転換にもなりますよ」

こちらもふわりと微笑むシエル。

これでさらに浮上。

起き上がり、目の前に置いたままの招待状をつまみ上げる。

「これ、何て書いてあるんですかぁ? 読めないんですよね。『月の雫』に文章翻訳機能もつけておいてほしかったですー」

ぶーたれながら縦にしたり、横にしたり、裏返したり表返したり。ぴらぴらと弄ぶ。

それをふいっとラルクがつまみ上げると、

「村を救った泉に女神様の評判は遥か王都まで及んでいる。ぜひ一度会って話がしたい。王城に招待するので、ぜひ来られよ。……ということだ」

ナンデスカ、この上から目線お手紙は! って、王様だからいいのか。……いいのか?

私は今女神様だよね? いちお。「日出る処の天子、書を日没する処の天子に致す、つつがなきや」じゃねーんだよ?


「で、明日なんですね?」

「まあ? そう伝えてしまったからな」

ちょっとぶすっとしながらラルクが答える。あなたが適当に答えてさっさと蹴り出したんでしょうが。

お友達は大事にしましょうね!

「王様って、どんな方なんでしょう? いきなり牢屋にポイッてこと、ないですよねぇ?」

それだけはいーやーだー!

自分を抱きしめてぶるぶる震える。

「大丈夫だ。そんな方ではないから安心しろ」

ラルクが呆れた目で私を見ている。

「ほんとですかぁ?」

「ああ。陛下とはよく騎士の鍛練で一緒になった。変わった人だが悪い人ではない」

断言するラルク。

「じゃあ、魔女様は? 魔女様って、いつも私では診れない患者さんを診てもらっている方ですよね?」

所詮、私の診察は薬のみ。手術や呪術などは全くの専門外だから、そういう治療が必要な患者さんは王都にいる魔女様のところで診てもらう。他の村でもそうらしいけど。

「魔女様は、普段は薬を作ったり傷病者を診ているが、本来は国を守る要の方だ。あの方も悪い方ではない。安心しろ」

「大丈夫ですかねぇ?」

涙目でラルクを見上げる。

ラルクは知っているから断言できるけど、私は知り合いでもないし、ひょっとしたら向こうは秘かに私のことを危険人物とみなしてるかもしれないんだよ? 

「ああ。心配するな。オレがついてる」

頼もしい一言。ラルク、カッコイイっす!

「そうですわ。兄様もついてます」

「何かあれば私たちも黙っておりませんから!」

アンもシエルも、私の手を片方づつ握りながら力づけてくれる。

ああもう!キュン死に決定。




「王都まではどれくらいかかるんですか?」

車も自転車もないもんね。移動手段は馬? ……乗ったことねーし。

「馬で3時間ほどか」

ラルクが何気なく答えるけど、乗ったことない馬で3時間も飛ばすのか。

「歩きだとどれくらいかかるんですか?」

一応、こちらも確認しておこう。

「歩きならば半日はかかるだろう」

ゴン!

盛大に頭をテーブルにぶつけてしまった。

半日て!

う~。徒歩で行こうと考えることはやめた方がいいな。

「うう~。徒歩っていう選択肢はなさそうですね」

とほほな感じ。

「そうだな。ああ、ドラゴンならあっという間だ」

ああそうだ、とラルクが付け足す。

「ドラゴン? シェンロン?」

ドラゴンて、乗り物なの?? ああ、アニメでも乗ってたねぇ。川の神様である白龍に、異世界トリップしちゃった小学生女子が。あんな感じかなぁ?

乗る時は角持ったりするのかな?

「ああ。ミカなら喜んで運んでくれるだろう」

まぁ? 懐かれてるけど?

「……馬とドラゴンなら、どっちが乗り心地いいですか?」

どっちも乗ったことないしなぁ。それなら乗り心地で決めよう。

速くても乗り心地悪かったら、ドラゴン騎乗は遠慮したい。

「オレはドラゴンだと思う。馬みたいに揺れないからな」

きっぱりとラルクが断言する。

「ドラゴン、乗ったことあるんですか?」

こちらでは茶飯事なのか?

「ああ。騎士団のドラゴン騎乗部隊に居たこともあるからな」

さらりとラルクが言う。

「えーと、でも、シェンロンの予定とか聞かないとダメですねぇ。ちょっと聞いてきます」

私は立ち上がりながら言った。こっちで勝手に決めるのもシェンロンに悪いしね。

私に倣いラルクも席を立つ。

ああ、いつもすみません。




「シェンローン!」

森の入り口でシェンロンを呼ぶ。


びゅうううう~!


シェンロン出現に伴う突風。

「ぐはっ! この風、なんとかならないかしら? シェンロン~!」

今日も息が詰まった。

『無理だ。慣れるんだな』

変える気はなさそうです☆

「突然すみません。明日なんですけど、急に王都に行かなければならなくなったんです。もしよかったら送ってもらえませんか? あ、デートとかあったら、全然そっちを優先してもらって構いませんから!!」

シェンロンにお伺いを立てる。

『お安い御用だ。ミカならば望みがあればどこへでも連れて行こう』

目を細め、優しい声音でシェンロンが言う。

「ありがとうございます! では、明日の朝、よろしく願いしますね!」




次の朝。


「ぎゃ~~~!! 高い~~~!! 速い~~~!! こーわーいー!!!」

ただ今絶賛ドラゴン騎乗中☆

ジェット機に生身で抱き付いてるのか? これは?

ドラゴン騎乗用の鞍を置き(シェンロンは嫌がったがラルクの『ミカのためだ』という言葉に素直に従った)、ラルクの前に横座りに乗っている私。高いわ速いわで怖くてラルクにしがみついている。

ラルクは慣れたもので、手綱をしっかり握りつつも、ちゃんと私もホールドしてくれている。

『あと少しだ、ミカ』

シェンロンの声が頭に響く。

「せっかくの景色なのに、ミカ、全然見てないな」

ラルクが笑いを含んだ声で話しかける。

「そんな余裕ないです~!! 早く着きたいです~!!」

ラルクの胸に顔を押し付けたまま、私は叫ぶ。

『そうか、ではもう少し急ごう』

そう言うとシェンロンが加速した。

「い~や~!!! また速くなってるしっ!!」


王都の手前でシェンロンが着地する。

足、ガクガクです。

「や、やっと着きましたね……」

私ってば、もう這う這うの体。

「やっとって、まだ村を出て1時間も経っていないぞ?」

ラルクは呆れ顔をしながら言うけれど、ふらふらの私をしっかりと抱きかかえてシェンロンから降ろしてくれる。

いえ、恥ずかしいから抱き上げなくてもいいんですけど?

そのままそっと地面に降ろされて、いったん休憩。

最後、シェンロンがかっ飛ばしたから思ったより早く着いたからね☆

ラルクと私とシェンロン。地面に腰を下ろす。




見遣った先には王城の塔が、いくつもそびえていた。

灰かぶり姫のお城みたいだ~!!


今日もありがとうございました!

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