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泉の女神  作者: 徒然花
本編
19/79

気分はかぐや姫

ちょっとロマンチ入ってる美華さんです。

もうすぐ次の満月の日がやってくる。

1か月は早いもんだ。

診療所やりーの、漢方教室やりーの、アロマ教室やリーの。

どこかのインチキ講師みたいだよ、私。

まあ、定休日をもらえたから疲れはマシになったけど。

しかし、私が普通の人間だということは一向に浸透していない。

否寧ろ、浸透どころか離れて行ってる気がするな。




今日も一日を終え、自室に引き上げる。

「今日もお疲れ様でした。また明日もよろしくお願いますね」

ぺこりとお辞儀をしながらアン、シエル、ラルクに言う。

「女神様こそお疲れ様でした」

にっこりとアン。

「ゆっくり休んでくださいね」

同じ笑顔でシエル。

あなたたちの笑顔こそ癒しだと思うわ。寝る前に眼福♪

「ゆっくり休め」

ぶっきらぼうなラルク。でも、声には労いとかが感じれるのよね~。ふふふ、慣れてきたらちょっと感情が解るようになってきたよ?

「はい。おやすみなさい」

みんなに笑顔を向けてから、自室のドアを開けた。




しばらく夜空に浮かぶ月を見上げる。

ここ最近の私の日課。

毎日満ちていく月。

後もう少し。

「でも、また無理だろな~」

ため息とともに小さくつぶやきが漏れる。

何の役にも立たない小娘(という年齢はとっくに過ぎたけどさ~♪)ということがわかってもらえてないからなぁ。

うう、月なんか眺めてるから柄にもなくセンチメンタルになっちゃったよ。

私いつからこんなロマンチになったんだ?

月見てアンニュイになってって、私はかぐや姫かっ!

いかんいかん。こういう時はさっさと寝てしまうに限る!




「……羊が999匹~、羊が1000匹~……」

何故だ。

眠れん。

センチメンタルで脳が活性化したのか?! んなわけない。

「今、何時くらいだろ?」

ごそごそと起きだしてきて、自室の窓から、さっきまで散々見ていた月を見ると、もうすっかり天頂に来ていた。

リビングの方でももう音もしないから、みんな寝静まってるんだろう。

こっそりドアを開けて様子を伺う。

すでに真っ暗。

つか、こっちは電気とかないから、暗くなったら蝋燭付けるだけだし、それも勿体ないから早目に寝るんだけどね~。


ちょっと夜風にでも当たってくるか。


森にさえ入らなければ魔獣にもドラゴンにも会わないし。

あ、シェンロン呼ぼう。神様だから、睡眠とか関係ないだろうし。


ショールを肩から羽織ると、私は抜き足差し足忍び足~で外に出た。




「シェンロン、シェンロン!」

泉のほとりで、森に向かって小さく呼ぶ。

シェンロンは神様ホンモノだから、小声だって聞こえるのだ! ホンモノは凄いのだー!

すぐに森から一陣の風が吹く。

「ぶふっ!!」

だめだ、毎回この風にはあおられて息が止まる。慣れない。

『こんな時間にどうした?』

頭に直接響く声。

いつの間にか眼の前に白龍がいた。

「えーとですね、なんだか今日は眠れなくてですね。誰かと話がしたくなったんですよー」

『ラルクは?』

「寝てるから、わざわざ起こすのは申し訳ないので」

『そうか……』

そういうとシェンロンは、泉のほとりに鎮座した。その胴体にもたれかかって座る私。うん、なかなかもたれ心地はいい?


「もうすぐ満月じゃないですか~」

煌々と光る月を見上げながら言葉を紡ぐ。

「今月も一時帰国になるんだろな~とは思ってるんですよ」

『それは?』

「だって、普通の人間だってことが全然理解されてないんですもん」

『ミカは何だと思われてるのだ?』

白龍が不思議そうに問う。

「何かですねぇ、泉から現れた女神様だと思われてるんですよ。シェンロンのお仲間さんですわ~」

『ふふふ。仲間か』

おかしそうに、白龍が目を細める。おお、笑ったのか! つか、笑われたんだよね……

「そうなんです。笑っちゃうでしょ。こちらに呼ばれてきて、流行り病を治したら女神様って言われちゃって。っていうか、そもそも『泉の女神』として呼んだらしいんですけどね。何の間違いか私が来ちゃったんですね~、これが」

『ここの人間たちには未知の方法を用いたのが原因か』

私が流行り病を治した方法は、リアルワールドの医学知識と薬草知識を駆使したもの。

こちらの人間には未知の医学だ。

ちょっと進歩がすっ飛びすぎたから『神業』っつーことになるんだよねぇ。

「ですね~。でも、苦しんでる人を見過ごすわけにはいかなかったんですよ。これでも元ナースですから」

『ナース?』

ああ、ごめんなさい。リアルワールド用語でしたね。

「ああ、あちらでお医者さんのお手伝いをするお仕事です」

『そうか。だからいろいろ知識が豊富なのだな』

「そうです。でも、この知識すら『女神様のお力』って言われた日にゃぁ……」

月を見上げたまま、はぁ~とため息を漏らす。

『ここでの役目を終えた時、帰還がかなうのであろう?』

シェンロンも月を見上げる。

「多分。でも、役目ってなんでしょうねぇ?漢方知識もアロマ知識もずいぶん伝えたんですけどねぇ」

まだ何があるんだろう?


『ミカは、どうしても帰りたいのか?』

おお、シェンロン。いきなり核心をついてきましたか。

むむ~と、考えてしまう。

が。

「帰りたい……ですね。だって、こちらは私の世界じゃないですもの。みんないい人ばかりで良くしてくれるけれども、所詮私は客人。異邦人だから」

私の居場所じゃないんですよ。

『そうか……』

静かに白龍はつぶやいた。

「私は、私の役目をもう少し考えますね。ありがとう、シェンロン。とりとめのない話を聞いてくれて。おかげでちょっと頭の中が整理できたかも」

うん、ちょっと元気が出てきた。

ついでに眠気も出てきた。

『それならよかった』

また目を細めるシェンロン。

「やっと眠れそうです。あ~あ、かぐや姫みたいにお月さまからお迎えが来て、有無を言わさず連れ帰ってくれたらいいのに」

そしたらあれこれ考えなくても帰れるじゃん。

あーでも、満月待ちには変わらないか。

『かぐや姫?』

「そうです。私の国に伝わるおとぎ話。また話してあげますね」

にっこり白龍に笑いかける。

『ああ、楽しみにしてるよ。さ、今日はもう遅い。お休み』

「おやすみなさい」


シェンロンとたくさん話をして、すっきりした私。

シェンロンは私が家に入るまで見守っていてくれた。




出た時同様、こっそりと入り口のドアを開けると、

「!!!!!!!!!」


ラルクが仁王立ちしていた。


深夜に絶叫はよくないととっさに判断できた私。

自分の口をしっかりと手で密封したおかげで、声にならない叫びになった。


「えと、あの、その、ですね!眠れなくてですね、シェンロンと話をしてただけなんですぅ~~~」

しどろもどろの涙目になって言い訳ニイハオ。

すっごいブリザード来る~!! と目をぎゅっとつぶって固くなっていると。


急にふわりと抱き寄せられた。


「???????」

今度もまた、声にならない叫び。

えええ? 私ラルクに抱きしめられてますぅ??

背の高いラルクにすっぽり収まっている私。なにこのシチュ? 理解不能ですがな。


「……一人で月を眺めて溜息なんてつかなくていい。オレに話せ。なんでも……」

潜めたラルクの声が頭上から降ってくる。

さらにぎゅうっと抱きしめる腕に力が籠められる。

「えっ?えとですね?」

ラルクの胸に顔を埋めた私(正確に言うと押し付けられているのですが)は、すぐさま理解するのは不可能だった。

一人アワアワしていると、

「一人で抱え込むな。……オレは女神だなんて思っちゃいない。大丈夫だ」

あ、味方さんということでしたか。

「わかりました。ありがとうございます」

素直に言うと、ラルクの腕の力が弱まり、解放された。

「今日はもう遅い。寝ろ」

私の部屋の扉まで肩を抱かれて連れてかれる。

「はい。おやすみなさい」

もうかなり睡魔が襲ってきていたので、そのままベッドにダイブでおやすみなさ~いだった。




あ~、蓬莱の玉の枝が欲しいって言ったら、ラルク、取ってきてくれるのかなぁ?

……全然関係ないし。


ロマンチ美華さんというより、愚痴パートでしたね( ̄▽ ̄;)

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