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泉の女神  作者: 徒然花
本編
17/79

森の中で白ヘビ様に出会った

診療所にアロマ講習会に漢方講座。

忙しいけど、なにこの充実感。

でも、疲労で倒れて以来、7日に1回はお休みを取るようになった『女神様診療所』。

休める日があるっていうのは全然違うわ。




今日も朝から日課の薬草摘み。

ラルクと二人仲良く(?)連れ立って森へ行く。

今日は少し森の奥に行かないと自生していない薬草を採りに行くつもり。

森の奥=ドラゴン邂逅という図式が構築されている私の脳みそ。

「野ドラゴン、大丈夫ですかねぇ?」

心配になって横を歩くラルクに問う。

「大丈夫だ。絶対にオレから離れるなよ」

おお、ラルク!!言い切りです!頼もしいです~~~!!

きりりとしたラピスの瞳に見つめられると、私ってばキュンキュンしちゃいます~!!


ドラゴンと言えば。

ラルクの指輪。『騎士の指輪』と言って、ドラゴン除けの呪術がかけられているそうだ。

ドラゴンに遭遇しても殺すことは禁じられているので、退いてもらう。これ大事。

じゃないとこっちがやられちゃうもんねー。

ちなみに『騎士の剣』というのも常に携帯していて、こちらは魔獣を薙ぎ倒せる威力があるらしい。まだ使ってるのを見たことないけど。

魔獣は人間に害しか及ぼさないので、屠ることが奨励されているのだ。

でも、見たくないから遭遇したくないなー。平和をこよなく愛するもので。

指輪も剣もかなりの魔力と剣の腕を必要とするものらしく、騎士団の中でもかなり上位の実力を持っていたラルクは、騎士を辞める際にこれらを下賜されたのだそうだ。

いわば退職金?いや、在職記念か。




ガサリ。


薬草を摘んでいると、少し離れたところの草むらから音が聞こえた。

「なっなっなに?!」

またもや慌てる、チキンな私。ちなみにお化け屋敷も苦手です☆

隣のラルクにとっさにしがみついてしまったよ!

でもラルクは何も言わず、私の肩を引き寄せてくれ、自分の背後にかばってくれる。

音のする方向を見ても、何か大きなものがいる気配はない。

「ウサギとか?ねずみとか?」

なるべく安全なイキモノをお願いする!

「さあ……?しばらく様子を見るか」

ラルクが依然、草むらから目を離さずに言う。


しばらく見ても、音がしない。

「どこかへ行ったか?風の音か?見てくる。ここにいろ」

ラルクが音がした方へと様子を見に行く。

「はい」

一人は怖いけどー。

こわごわラルクの様子を見守る。

ラルクは音のした辺りの草むらにしゃがみこむと、

「ヘビだ。しかも怪我をしている」

と言って、1匹のヘビを捕まえてこちらに戻ってきた。

って、ヘビィ????

「ふぎゃ~~~~!!!!ヘビ、苦手ぇ!!!!」

思わず目をつむり拒絶、ムンクで叫んだ私だったが、

「怪我がひどいようだ。このままだと後2、3日で死んでしまう」

お構いなしにヘビの様子を冷静に観察しているラルク。

仕方なしにヘビを見ると。


なんと白ヘビではないですかっ!!


「白ヘビ様ではないですか!」

驚いて私はラルクに言った。

「白ヘビ様?ミカはこれを知ってるのか?」

不思議そうにラルクが訊ねる。

「知ってるっていうかなんていうか、私のいた世界で、白いヘビは神様のお使いと言われているんです。白ヘビ様を祀っている神社だってあるんですよ~! だから邪険に扱ってはいけないんですよ~!」

得々とラルクに説明する。

「へぇ」

私の勢いに呆気にとられた感のあるラルク。

「でも、どうしましょう?怪我用の薬液はありますけど、ヘビ様に効くのかしら?」

以前、森の中でこけてラルクに迷惑をかけて以来、怪我用の薬は持参して森に入るようにしているのだ。学習学習。

「もとは薬草だ。薬草以外に付け加えていないから、大丈夫だとは思うが……」

ラルクも困惑気味に答える。珍しくラピスの瞳が揺らいでいる。

「ないよりはましですよね?ラルクさん、ヘビ様を下に置いて下さいますか?」

私はごそごそと手持ちのカバンから薬液を探しながら、ラルクにお願いする。ヘビは触れませんからね!

「これでいいか」

ラルクがヘビを下に置いた。

ヘビはよほど怪我がひどいのか、動くこともしない。

怖いけど、薬液を傷口に垂らす。あ、怖いから、かなり上からじょぼじょぼとね☆


たっぷりとかけてから、

「これくらいでいいでしょう。消毒にもなったでしょうし。これでだめだったら私にはどうすることもできません」

ラルクを見上げて言った。

「そうだな。また明日でも様子を見に来るか」

「そうですね」


周りにある薬草を摘んで、ヘビにかけてやる。

少しでも他の動物に見つからなければいいか、と思って。




次の日。

同じ場所に白ヘビはいた。

「まだ、大丈夫なようだな」

しゃがみこんだラルクが、草をのけながらヘビを観察する。

「傷はどうですか?」

ラルクの後ろから、怖々覗く私。これ、限界の距離!

「ああ……昨日よりは良くなっているようだけど……?」

「気のせいでも効いていそうなら、今日も薬を付けていきましょう」

「そうだな」

今日も持参の薬液をじょぼじょぼとかけてから、私たちは帰って行った。


そんなことが3日ほど続いた。




今日は休診日。

本来ならば朝の薬草摘みにも行かなくていいのだけれど、白ヘビ様が気になっているので様子を見に行くことにした。もちろんラルクと!


「あれ?いませんね?」

前日にかけておいた薬草は残っているが、肝心の白ヘビ様本体がいなくなっていた。

「他の生き物に食べられ……むぐっ?!」

「いーやー!!それ以上は言わないで~~~!!」

むごいシーンを連想しそうになった私は、ラルクの口を自分の手でふさいだ。

が、そんなもの、『べりっ』って感じでラルクに剥がされてしまう。

「急に何するんだ?」

「あー!だってラルクさんが怖いこと言いそうになるからですー!」

涙目で訴える私。それを見て、ふっと目力を緩めたラルクは、

「悪かった」

と言って、私の頭をふわりと撫でた。

あ、またキュンってしたよ~!!


って、そんなことをしていると、森の奥の方から風が吹き付けてきた。

明らかに不自然な風。

一か所から吹きだしているような。

「ぶはっ!急になんですかね、この風は!」

風にあおられて息が止まる。

「わからん」

さっきまでの優しい目が、一瞬にして凛々しいものに変わる。

風下に、私を自分の背にかばい、剣に手をかけ森の奥を睨むラルク。

すると、


ゴオオオオオオオ!!!


咆哮とも、風の音ともつかない音がしたかと思うと、目の前にドラゴンが現れた。

うわっ!デジャヴ!


今日のドラゴンは、白。

生成りと言うか淡い金色みたいな?


「むきゃ~~~!!また出ましたよ!!」

ラルクの背中にしがみつく私。ラルクは指輪を翳そうとしていた。


が、その刹那。


『われは先日の白きヘビなり。助けてくれた礼を言いに参った』

直接脳に響く声。

ラルクにも聞こえたのだろう、二人同時に目を見合わせた。

「あの、白ヘビ様……?」

「ドラゴンの化身だったのか……」

放心したように各々呟く。


『われはこの森に長く住むドラゴン。これからはお前たちを守ってやろう』

また、脳に響く。

「黄金のドラゴンは、神ともいわれる存在……。ミカ、やはり白ヘビは神様の使いと言うのはあながち出鱈目でもないな」

「えええっ?それより、こんな立派なドラゴンに懐かれても困るんですけど~!!あわわわわ」

感心するラルクに、青くなる私。


えーと、ドラゴンて餌とか要らないよね?つーか、何食べるのかも知らねーしっ!!


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