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泉の女神  作者: 徒然花
本編
14/79

疲れてきたぞ?

村人たちの素晴らしい努力でたった5日で出来上がった私のマイホーム。

突貫工事にも拘らず、素晴らしい住み心地で、村人たちの心意気が伝わってくる。




長居するつもりはないけれど、やっぱりタダ飯をいただくのは心苦しい。

先日のリアルワールド帰還でゲットしてきた血圧計や体温計も投入して、診療所を再開した。

今回は自宅リビングに衝立を立てて、診察室。

ラルクに長椅子を作ってもらってその他の空間を待合にした。

ゆーても私は医者じゃないので、手術とか、ややこしいことはできない。

そこは以前からのように、王都の魔法使い様のところに謹んでまわすことにしている。

「神様じゃないからねー、万能じゃないのですよー。」

と、毎回言っているのだけれど、誰も肯定してくれない。




私の日課も、帰還前と変わらず、朝起きたら薬草摘み、朝食の後午前診。昼食を挟んで午後診。夕方には閉店。夕飯のち、本を読んだり、薬草について調べたり書き物をしたり、薬を調合したり。

ラルクは相変わらず無口で無愛想だけど、必ず私の外出にはついてくる。

一人で出かけた日にゃ、どんだけ不機嫌になるか。

ブリザードがコワイので、出かける時はちゃんと一声かけてからにしている。


しかし、診療所が繁盛するのはいいのだけれど、なんだかだんだん疲れてきた。

長風呂しても、自分で滋養強壮ドリンクを作ってもすぐに疲れが戻ってきてしまう。

歳か?!

・・・いや、冷静になって考えよう。


・・・休みねーじゃん。


ふつう、病院なんてものは月から土曜まで開いてはいるが、週半ばに午後診が休みとか、土曜は半日とか、必ず休みってものがある。

病院だけじゃない。どんな会社でもそうだ。休みってものがあるじゃないか。

こっちに来て1か月と半分は過ぎた。

ほぼ休みなしで働いてるよ?私。

そりゃ疲れも溜まるわ。

ナースの頃の激務再び?みたいな?

ああ、ダメじゃん、私・・・。




ここはひとつ、『私は神様じゃないから疲れるんだ』ということをアピールしようじゃないか!!

神様は不死身だし、万能だから疲れたりしないよねっ☆

私は人間だから疲れるのだよ!

に ん げ ん だ も の ☆

よし。そうと決まれば行動を起こすべし。




次の朝。

日課の朝の薬草摘み。

いつもの通り、ラルクと二人で森に出かける。

今日は天気がいい。前を行くラルクの金の髪が、日の光を受けてキラキラ輝いている。

むむ。綺麗な金色だ。

「今日もいいお天気ですねぇ」

眼の前の金髪をガン見しながら私は話しかけてみる。

「ああ」

・・・・・・。会話終了。


普段必要な薬草は、大体森の入り口近くに自生しているので、そんなに深く入り込むことはない。

一日の要る分の薬草と、干したりする分の薬草を採る。


「こんなもんで充分でしょう。ラルクさん、お願いします」

毎回毎回、私が持っていこうとするとすっごい睨まれて荷物を取り上げられるので、学習した私は、素直にラルクにお願いすることにしている。

ラルクも、私が素直にお願いすると機嫌よく持ってくれる。

あ、機嫌よくっていうのはあくまでも私の主観ですが。

なんか機嫌よさげだな~くらいのニュアンスで。

なにしろ無愛想ですから。


「わかった。忘れ物はないか?」

ほら。機嫌がいいから言葉が長い。ふふふ。

「はい、大丈夫だと思います」

「では、帰ろうか」

ほら、機嫌がいいから会話が続きました。ふふふ。




で。

・・・そろそろ実行の時だわ。『美華さんお疲れ大作戦』!!

私は立ち上がると同時にふらついて見せた。


「・・・!!!おいっ!!」

あ、珍しくラルクが焦っています。

ふらついてしゃがみこんだ私に慌てて駆け寄ってきた。

「大丈夫か?!どうした?!」

私を抱え込んで、顔を覗き込むラルク。

あ、顔近い。眼福。・・・いや、今それはいい。

「あ・・・。ちょっとふらっとしてしまいました。疲れてるのかしら?」

ちょっと儚げな笑みを浮かべてみせる、私は女優☆

もちろん、『疲れてる』のところをくっきりはっきり言いましたさ!

「顔色が良くないな」

心配そうなラルク。いつもの無愛想はどこへやら。ラピスのような青い瞳が揺れている。

「あ、大丈夫・・・ですよ?」

また儚げな表情で告げる私。

「いや、大丈夫ではなさそうだ。・・・摑まってろ」

と言うとラルクは私を抱き上げた。

うわっ!これは想定外!!

つーか、何度目だ?ラルクにお姫様抱っこされんの・・・。

ラルク、ごめん。私、元気ですから!

「ラっラルクさん?!大丈夫ですから、一人で歩けますから!!」

前にも言ったなぁ、このセリフ。

「いいからしっかり摑まってろ」

問答無用ですかい。


また、ラルクに抱きかかえられて帰宅する私だった。




「「女神様っ!!どうされました?!」」

家のドアを開けると、巫女ツインズが慌てて駆け寄ってきた。


「さっき森で倒れた。顔色が良くない。すぐに休ませる必要がある。」

ラルクがてきぱきと妹たちに指示する。

さすがは騎士。こういうことに慣れてんだろな。

「ああ、大丈夫かしら・・・」

おろおろするアン。

「とりあえず、すぐにでも飲み物をご用意いたしますわ!!」

自分で判断し、行動を起こすシエル。

こういう事態に直面した時、それぞれの性格って出るもんだね~。いつもそっくりだと思ってたのに。


私の部屋のベッドに寝かされ、掛布団をかけられる。

「今日はもういいから一日寝ていろ。ベッドから出てこなくていい」

ラルクが宣言する。

「ええっ??し、診察は?患者さん、来ちゃいますよぉ~」

慌てる私。起き上がろうとするけど、またベッドに押さえつけられる。

「大丈夫だ。俺たちが対応する」

「ただの疲労ですから、ちょっと寝たら治りますよ!」

ただの疲労です!ここ重要!

「じゃあ、一日寝てろ」

あれ?スルー?『女神様が疲労なんてするのか?』ってつっこむところですよ~。ボケ殺しですか~?

「ぐっ・・・」

何も返せない、チキンな私。はい、また流されました・・・。




という訳で、ラルクによって寝室に一日軟禁されてしまった私だった。


今日も読んでくださって、ありがとうございました!

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