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泉の女神  作者: 徒然花
本編
12/79

夢のマイホーム?

ピシッ・・・


また、何か割れたような音がしたかと思った途端、水の中に出た。

これ、いつか本当に溺死しそうだわ。


上を見て、湖面の月を確認する。

力いっぱい上に向かって平泳ぎ。

服がまとわりついて泳ぎにくい。

ああ、ほんとに溺れてしまう・・・


ザッパーーーン!!

「ぶはーーーーっ!!!」


ほっ、間一髪助かったぜ☆

ちょっと今回はやばげだったけどねっ!


岸を見ると、みなさん勢ぞろいだ。

「おお、女神様、お待ちしておりました!!!」

また村長さん、うるうるしてるし。

「待ってなくてもよかったんですけど・・・」

小声で言ってもたわ。

とりあえず岸に向かって泳ぐ。

岸まであと一歩(ひとかき?)というところで『ぐいっ』と誰かに引っ張られた。

そのまま岸へと引き上げられ、ついでに抱き上げられた。

「ほへっ?!」

びっくりして抱き上げた人物を確認すると、ラルクだった。

今日も美人さんですね☆でも無愛想はいただけませんよっ!

しかしなんでいきなり不機嫌なんでしょうかっ?


私を抱きかかえたままラルクはずんずんと仮設宿泊所にしている神殿の方に歩いていく。

「ラっ、ラルクさん?!どしたんですか?!歩けます!降ります!」

焦ってじたばたするけれど、一向に降ろしてくれないラルク。

「じっとしてろ。」

美形さんが睨むとコワイコワイ。

素直に抵抗をやめる私。チキンですから。

「はい・・・でも、ラルクさん濡れますよ?」

「構わない。」

そーですか。




神殿の仮設宿泊所・私の寝床まで運ばれてきたところで、巫女ツインズが待機していた。

「「さ、女神様、お着替えください!お体に障りますから。」」

あ、なるほど。

今回は野外お着替えの刑は免れたってことなのね。

ぐっじょぶ、ラルク!

そっか、だから不機嫌だったのか。

ずぶ濡れの私をここまで運ぶのに、ラルクまで濡れてしまったから。

でも、ラルクは特に何かを言う訳でもなく、神殿入り口を見張っていてくれている。

マコトニモウシワケアリマセン。

いそいそと着替える私だった。


濡れ鼠から解放された頃、アンがクスクス笑いながら、

「今回、ここまで女神様を運んでこようって、兄様が言い出したんですよ?」

と小さな声で言う。

ん?どゆこと?

「そうですわ。ずぶ濡れの女神様をみんなの目にさらしておきたくなかったみたいですよ?」

こちらも小さな声でシエル。忍び笑い付き。

「ふうん?そうなの?前みたいに布一つ隔てられたところでお着替えタイムにならなくてほっとしたんだけどね。そっか、ラルクさんが言い出してくれたんだ。濡れちゃったし、悪いことしましたね。早く着替えないとラルクさんが風邪ひいちゃいます。」

私のせいで風邪ひいたなんてことになったら、申し訳ない!

「ふふふ。そんなことを言うような兄様じゃなかったですのにねえぇ?」

「ほんとほんと。兄様ったら。ふふふ。」

ツインズが二人でひそひそと話していたことは、私には聞こえていなかった。




次の日。

村長さんたちがぞろぞろやってきた。

「女神さま、やはり神殿を建てたいと思うのですが・・・」

「ええ~?!それは前にもお断りしたはずなんですけど・・・」

「ここは生活していただくにはあまりにも不都合があるかと思います。」

まあ確かに、ここって四方を囲ってるだけだからね。

でも、そんなに長居をするつもりないって!

家なんて建てられたら永住決定じゃないかっ!って前にも言ったよ?私。

「う~~~。」

「前にもおっしゃっていたように、リビングがあって、キッチンがあって、寝室があって、風呂トイレは別というような家でございましたら納得いただけますか?」

渋る私に言い募る村長さん。確かにそれは好物件だけど?

ああ、もう好きにしてくれ。いなくなったらなったで誰かが使えるだろう。

「わかりました。そんな大袈裟でないものでお願いします。」

私は渋々同意した。




それから5日して。

なんとたったの5日で家が完成してしまった。

村人総出で作業したそうだ。

どんだけ突貫工事やねん!!と一人ツッコミいれたわ。

欠陥住宅とかだったら笑っちゃうからっ!


基本、この世界は石造り文化らしく、家は石の作りで、窓や扉などを木やガラスで作る。鉄などの金具もあるみたい。

ヨーロッパ文化みたいな感じだ。

ワタシ用にと造られた家は、泉のほとりに建てられていた。

かわいらしい一軒家。

「・・・ちょっと感激かも。」

これって、夢のマイホーム?!・・・違うか。

あー、完全に流されてるな、私。


村長さんや巫女ツインズに案内されて、家の内覧会。

木の扉をくぐると、そこは広いリビング。10畳はあるかも!すごっ!

そのリビングの端にキッチンがあって、カウンター式になってる。結構現代っぽいのは気のせい?

玄関入って突き当りのドアが寝室のドア。キッチンの横にバス・トイレの扉がある。

で、もう一つ扉を発見。

寝室の扉とバストイレの扉の間。

話では1LDKだったはず。

じゃあ、これは・・・ウォークインクローゼット?それなら1SLDKになるなぁ。

きょろきょろとしながら中を見ていた私は、その、気になる扉の前で立ち止まり、村長さんに尋ねた。

「この扉は何の扉ですか?」

「これですか。これはラルクの部屋です。」

ニコニコ爆弾発言。どかーーーん!!

ラルクの部屋?!聞いてないしっ!

何でここに彼の部屋がある?!

「な、なんでラルクの部屋ですか?!」

びっくりしてどもる私。

「護衛はやはり必要かと存じまして。隣にはアンとシエルの家も建てましたので。」

いや、同居すんならむしろアンとシエルと私だろ。

依然にこやかなままの村長さん。

おかしいだろ、それ。またラルクの機嫌悪くなるよ・・・。

「ラルクさんは他にも仕事があるのではないですか?」

騎士を辞めたとはいえ、こんな護衛なんて願い下げだろう。

「騎士団も退職しましたからね。昨日、女神様があちらに帰られている間に、王都での荷物なども引き払ってまいりましたし。私も年老いてきたので、そろそろラルクに跡を継いでもらおうと考えておりまして。明日からは神官見習いでございます。」

リアルワールドとこちらはタイムラグが約1日。

満月の夜に帰還術を施してもらい、リアルワールドに立ったのが満月の日の朝。そして、夜に向こうを発って、こちらにきたのが十六夜。その時差の間にラルクは動いたんだ。

「本当ですか?ラルクさん?」

入り口のところで、扉に背をもたせ掛けて立っているラルクに問う。

「ああ、本当だ。」

まじすか。万事休す。

「でも、こんな村外れだと色々大変でしょう?大丈夫ですよ私一人で。」

家でくらい心休めたい・・・。

「何があるかわからないからな。気にするな。」

・・・気にしますから。ほぼ無表情で言わないでください。



まだまだ、たくさんの方に読んでいただいているようで、ドキドキしています。


今日も読んでくださってありがとうございました。

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