リアルワールド!!
ぱちっ。
目を開けたら。
・・・ここは、自分の一人暮らしマンション?
おお!!ベッドの上だぁ!!
ひと月ぶりってことよね?
ああ、快適だ・・・。
もう一眠りしよう。
・・・。
・・・。
・・・って、いかーーーーん!!
私に許されてるのは日没までなのだよ!!
走れメロスな気分だ。
惰眠をむさぼってるような時間はない。
急いでベッドサイドの時計で時間を確認すると、ちょうど朝の7時だった。
カレンダーで確認する。今日は例の奈々子のところでアロマサービスをする日だ。
急いで出かける支度をする。
「おはよう!奈々子!」
なんとか約束の時間に、奈々子の旦那様の産院に到着した私。
「おはよう、美華。今日もよろしくね。」
ああ、『美華』って名前、久しぶりに呼んでもらえたぁ!!!
すっごいしょーもないことでプチ感動。
そう、私は女神様なんかじゃない!さ、働こう!!
今日もどんどん患者さんを癒していく。
けど、時間は刻々と過ぎていく。
いつもと違う私には、いつもと同じように過ごしてしまうことなんてできないわけで。
とりあえず、ここでのアルバイトを一旦休止させてもらわなくちゃならない。
せっかく施術の日数を増やしてもらえるはずだったのになぁ。
残念だけど、仕方ない。
昼休憩。
私は奈々子と院内の応接室でお弁当を食べていた。
スタッフルームと違い、院長の応接室とあって、ソファーはふかふか、上質だねぇ。
・・・て、そんなことはどうでもいい。
「あのね、奈々子。・・・実はとっても言いにくいんだけど、しばらく施術をお休みさせてもらえるかな?」
一大決心をして、私は口を開いた。
「へ?どういうこと?」
ぽかんとして、奈々子が問い返す。
「うん、知り合いに誘われてね、海外の医療ボランティアに行くことになっちゃったの。」
ま、ある意味海外と言っても間違いないところだ。
「え?そうなの?う~ん、えらく急だね。」
ぽかんとした表情は脱したものの、まだ不思議顔の奈々子。
「うん、急に欠員が出たらしくてね、私くらいしか頼めなかったんだって。」
ああ、嘘です。ごめんなさい。
「そっかぁ。んで、どれくらいの期間行くの?」
「ん~、未定だけど1年くらい?わかんない。」
「そっかぁ。」
そっかぁ、を繰り返す奈々子。
頬に手をやり、考えポーズをした後、
「わかったよ。旦那には私から言っとくわ。帰ってきたらまたバイトしてよ。」
にっこり笑って言ってくれる。
なんだかものすごく物分りのいい、かつ私に都合のいい展開にびっくりするけど、いつも奈々子はそうだった。
学生の頃から一緒にいる。激務のナース時代も一緒に過ごした。
愚痴を言いあったり、楽しいことを分かち合ったり。
いつも一番の理解者だったと思う。
今回だって私の勝手な申し出に、にっこりと笑って許してくれる。
社会人として、こんな仕事の切り方は絶対によくないのにね。
「ありがとう。勝手言ってごめんね?」
丁寧にお辞儀する私。
「いいよいいよ。せっかくアロマサービスが軌道に乗り始めたとこだったから残念だけどね。美華が自分で決めたことじゃないの。体に気を付けて頑張ってね!」
私の決めたことを受け入れ、応援してくれる奈々子。
その代わり、中途半端なことをしてると途端に怒られたりもする。
「うう・・・奈々子。泣けてくるわ。ホント、ありがとう。」
ほんとは行きたくなんかないんだよ~!でも帰る約束しちゃったんだよ~。
向こうでベストを尽くして、絶対こっちに帰ってくるからね!!
改めて決意する私だった。
午後の施術も終えて帰途に就く私。
マンション、引き払う時間なかったなぁ。
どうしよう。
「あ、そっか。来月の手配してからむこうに行けばいいんだ。」
ポン、と手を打つ私。
来月、何としてでもまたこっちに帰してもらおう!
その足で、マンションの管理会社に連絡を入れた。
マンションに帰り、ざっと部屋を見回す。
働いてる間はほとんど寝に帰ってきてるようなものだったから、殺風景この上ない。
ベッドとサイドテーブル。小さな本棚、テレビ、小さなテーブル。
引越しするにはすぐに荷造りできそうだ。
「あ、そだ。ちょっと道具があれば便利よね。」
むこうに持っていけるものを考える。
前のように丸腰で行きたくはない。
「よし、ドラッグストア行ってこよう。」
お財布片手に、近所のドラッグストアに向かった。
「血圧計、よし!体温計、よし!ソーラー充電器よし!」
血圧計と体温計は、昔ながらのものをゲット。ほら、空気入れみたいなのでしゅこしゅこするやつ。体温計はもちろん水銀の。
ソーラー充電器は、ケータイを殺さないために。電気がなくてもこれなら充電できる!
これらと貴重品を、水にぬれても大丈夫なようにパッキングして持つ。
色々準備していたら、すっかり時刻は8時を回っていた。
覚悟を決めてトイレに行き、手を洗った瞬間。
足元に穴が開いた・・・気がした。
要するに、落ちて行ったのだ。
今回はちょっと短めでしたね(--;)
とってもたくさんの方に読んでもらって、とっても喜んでいます!
(喜びすぎて震えてますが(笑))
また読みに来てくださいね♪
2012/2/22 11:40 アップしたばかりですが加筆修正しました。すみません。m(_ _)m マイナーチェンジですので、話の流れに影響はありません。




