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泉の女神  作者: 徒然花
本編
10/79

満月の夜、再び

そして瞬く間に1週間が過ぎ、今宵は満月。

おおっ!やっとリアルワールドに帰れる時が来たっ!!

でも、どうやって帰るんだろう??




朝から神殿に、村長さんや村の人たちが大勢やってきた。

今日も、初めて会った時のようなギリシャ風の衣装。

どうやらこのギリシャ風衣装は、何かの儀式や祭りごとの時に着るらしい。


普段、男の人は上はリネンやコットンのシャツに動きやすそうなズボン。

女の人はゆったりとしたお尻まで隠れるくらいの丈のチュニックにスパッツのようなボトムを着用している。

私も、初めこそギリシャ風の衣装を着せられたが、いざ治療するにあたって、そんな動きにくい実用に向かない物なんて着れないから、村人と同じような服を用意してもらっていた。

「本当に帰してくれるんですよね??」

今日の私は、こっちに来た時と同じ、紺のワンピースを着ていた。だって帰る気満々なんだもの。

「えええ、それはもちろん、帰すことはできるのですが・・・」

なんとも歯切れの悪い村長さん。

なんか変な汗でてますよ?


「女神様が帰られるのは、村人として大変困るんです。」

変な汗をかいてる父親の代わりにアンが言った。

「そうでございます。女神様の治癒能力は、もはやこの村の宝。それが失われるとしたら、残された我々はどうしたらいいのやら・・・」

と、シエル。さめざめと泣くな。っつーか、治癒能力ってなに?

私変わった力なんてもってないしー!ちょっとは欲しいくらいだっつーの。

「でもですねー、私にも向こうの世界の生活というモノがありましてですねー。行方不明とかになっちゃうと大変なことになるんですよ。」

ひと月お世話になった村人さんたちだから、強く言う訳にもいかないので、下手に出てみる。

「こちらも、女神様の喪失となれば、痛手でございます。大変なことになってしまいます。」

アンが言う。あ、あんたもさめざめ泣かない!美少女の泣き落としは卑怯です。

あーもう、こんなに帰還を渋られるなら、役立たずの穀潰しのままでいればよかったんだわ!!小市民根性出して、ただ飯はよくないなんて働いちゃったからこんなことになったのよ。ああ、自分を呪うわ。後悔先に立たず!後悔後を絶たず!!!

「うーん、平行線ですねぇ。」

困る私。

私が帰りたくても、村人が『うん』と言わない限り帰してもらえない。

でも、『うん』と言ってくれなさそうなこの雰囲気。

どーすっべ。

「例えば、向こうに戻ったとして、またこちらに来ることって可能なんでしょうか?」

ああ、言ってはいけない言葉を言ってしまった気がする・・・。

チキンな美華さん、本領発揮☆

「はい。可能でございます!」

さっきまで変な汗かいてた村長さんが、勢い込んで復活してきた。

あ、やっぱ私ってば自分で自分の首絞めたんだわ。

「今お持ちになっている月の雫をお持ちくだされば、こちらに帰ってくることができます。」

ふむ。なるほど。

村長さんは続けた。

「満月の出ている夜に、水に触れると、こちらに戻ってくることができます。」

「それは、月の出から月の入りまでの間のことですか?」

「左様でございます。月の雫と満月の力で召喚が行われるのです。」

「はぁ。」

じゃあ、月の雫を外していたら召喚術って効かなくなるんじゃないの?

「あ、石を外そうとは思わないでくださいね。それ、こちらの者にしか取り外しができませんから!」

シエルがにっこり言い放った。

うおっ!思考読まれた!!しかもイタイこと言われた!!

「え?!そうなんですか?自分では着け外しできないんですか?」

試しにとってみようとする、が、・・・おおっ!言うとおりだよ!取れない!!

なんだかおかしな幻術にかかってるとか?催眠術?「あなたにはこれが外せない~」みたいな?

「そうです。その石は選ばれし者のみが着けることのできる石。外れるのは、選ばれしものが衰えた時、もしくは別のより強き選ばれし者が現れた時のみでございます。」

ひええええ!!これってそんな呪いの石だったのね!!

「・・・外すの、諦めました・・・。向こうに居座るのも諦めるとします・・・」

ああ、降参。白旗フリフリ。

「やはり、どうしても帰りたい用事があるので、帰らせてください。用事が済めばこちらに戻ってきますから。」

諦めモードでみんなに告げる。

「「「「さすがは女神様!!ありがとうございます!!」」」」

村人全員、ハモった。

こっちに帰ってこざるを得なくしたのはお前たちだろー!!!




私がこの『月の石』を泉に浸します。そうしたら女神さまは泉に飛び込んでください。


村長さんが言った。

ああ、またずぶ濡れですね。まあいいです。帰れるなら。

満月が静かに水面に映る。

私も静かに岸辺に立つ。

「向こうに女神さまが現れるのは、満月の日の朝でございます。月が出ましたら、水に触れてください。こちらに渡れます。向こうでの滞在は日中だけでございます。」

「わかりました。やれることはやってきます。」

・・・できるかなぁ?いろいろあるぞー?

奈々子のところでバイト休止を告げなければならない、マンション解約しなくちゃならない、引っ越さなきゃならないetc・・・etc。・・・無理だ。時間が足りない。

とりあえずプライオリティつけなくちゃ。

現実的なことを考えながら、何気なく村長さんの後ろを見ると、そこにはラルクがいた。

アンやシエルと違ってまったく発言をしないから存在を忘れてた。

私がいない間はお守りから解放されるね。なんて思うと、自然と微笑みが出た。自虐的だなぁ。

一方ラルクは、いつもは無表情なくせに、今日はなんだか心配そうな顔をしていた。

溺れないか心配してんのかな?ふふ。




「じゃ、お願いします。」

村長さんに向かって、私は言った。

「では。」

村長さんは静かに月の石を泉に浸した。

女は度胸!!

えいやっと、私は泉に飛び込む。


・・・一瞬、ラルクがこちらに手を伸ばしたように見えたのは気のせいか。




あーあ、こっちに居場所造るために診療所開設したんじゃないのになぁ・・・。


たくさんの方に読んできたたいているようで、舞い上がってます!


一人祝杯あげました(笑)


また読んでやってください☆

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