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白虎の騎士ヴィラン-4

白虎の騎士ヴィラン-4


まるで黒い刃物のような竜だった。漆黒のうろこに、刃の様な黒い爪、口だけが炎のように赤い、巨大な飛竜。

味方も何もか振り切って、単独で突っ込んでくる戦闘狂。あまりの速さに、バリスタの狙いが間に合わない。

何度も戦っている兵士は、全員がこのドラゴンを知っている。

「オルドロス!!!」


ヴィランが駆けつけると、すでに戦闘が始まっていた。帝国兵たちは、代わる代わる城塞の上からクロスボウで、人型や小型で動きの遅いドラゴンを狙い撃ちする。

比較的大きなサイズのドラゴンは、バリスタと岩石のゴーレムで対処する。城壁が突破されると守り切れないため、可能な限り城壁への攻撃を減らす必要がある。


以前に比べたら魔法も使えるようになったが、それでも実戦で使えるほど得意ではない。とはいえ城壁の上で剣を振るってもできることは限られている。

ヴィランは石ころを両手いっぱいに抱えて、城壁の上に飛び出した。こういう時はシンプルな方法が一番だ。

魔力を敵に放射するのでなく、自己の筋肉の強化に利用する。手ごろなサイズの飛竜に狙いを定めたら、大きくてを振りかぶって全力で投げる!命中!

次々に敵を打ち落としていくヴィランを横目に兵士が呟いた。

「すげえな、コイツ」


戦闘が激しくなってきたが、今のところはうまく守れているようだ。

「何とか守り切れそうだ」

少し休憩しながら、ヴィランが呟いた。水を手に取りながら、隣の兵士を見ると、何か考えるような顔をしている。

「どうしたんだい?何か違和感でも?」

経験者の直感は無視しない方がいい。ヴィランはこれまでの戦いでそれを学んでいた。

「オルドロスがなんか変だ・・・」

兵士がそう呟いた。


言われてみれば、最初に突っ込んできたかと思えば、バリスタをよけるばかりで、積極的に攻めてこない。城壁の近くまで来たかと思えば、さっと後方に引く、をずっと繰り返している。

「バリスタの矢弾切れを狙っている?」

とりあえず思いついたことを言ってみたが、兵士はそれでは納得できないようだ。

「いや、アイツはそんなに気が長くない」


突如としてオルドロスが地面に着地した。四肢を踏ん張り、凄まじいい魔力をその赤い口に集めている。

「アイツ城壁ごとぶち抜くつもりだぞ。今のうちにバリスタをぶち込め」

慌てて周りのバリスタ部隊に警告をする。射程圏なので、溜めている最中にぶち込めるはずだ。

「駄目です!射角が取れません」

しまった!!!あの野郎、全バリスタの稼働角度を調べていたのか!


オルドロスは凄まじい閃光と共に、魔法弾を放った。貫通力を高めるために力を収束し、ひねりを加えたその一撃は、確実に城壁を貫通するだろう。

これまでか、だれもがそう思った時に、気が付くものは気が付いた。薄く静かだが、重く固いその魔力を。


「国母」「守護者」「水王」帝国兵が安堵と希望を口にする。

「傾国の魔女」「冥府の女王」ドラゴンどもが嫌悪と恐怖を口にする。

「千年公」ヴィランが思わず呟いた。

これらの二つ名は、すべて、ただ一人を指している。


突如として現れた水柱が、オルドロスの放った全力の魔法弾を巻き上げた。ずれた魔法弾は、あらぬ方向に飛んでいく。

防がれたにも関わらず、オルドロスは不敵に笑う。


「帝国のミレリア」








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