いざ、魔王様との謁見へ(今度こそ)
砦にて質より量の晩ご飯をたらふく頂き、食後にババナンのデザートまで頂いた四天王一行。その時点でもう完全に夜が更けていたので、此処で一泊し、明日の早朝出発という段取りになった。
そのまま晩酌と洒落込むジンとビオレッタに一緒にどうだと誘われたが、丁重にお断りした。
「そう言えばいつ誘ってもお前とガリーンは酒の席には付き合わなかったな。」
嫌味という訳でも無いんだろうが、ジンがため息混じりにそう漏らす。
「そうそう、ガリーン。あいつ、内乱のドサクサで死んだってホントなの? それさえ信用出来ないんだけど…。」
「ああ、それは我が国の調査員を派遣して確認した、死んだのは確かだ。何か大量に持っていた魔道具が暴発事故を起こしたとか…。だからビリジオンは今暫定的に我が国の保護下に置いている。」
ビオレッタとジンが突然ガリーンについての話題を持ち出したのを俺は聞こえない振りでいたのだが…。
「…ひょっとしてボニー、あんたこの件に絡んでるの?」
そんな態度をビオレッタに見透かされた様だ。
「なな…、何の事だ?」
声が裏返っちまった。
「…やっぱり。あんたが魔法学園からビリジオン方面に飛び去って、その直後にあの内乱だったもんね。あの時はあんたは辿り着け無いんじゃないかと思ってたけど…。」
これは、まずいことになったか?…と身体を固くする俺だったが…。
「別に責める気は無いわよ。わたし自身遅かれ早かれアイツとは争いになってただろうし。あんなテロ行為を受けたんだからね。」
あっさりそんな事を言うビオレッタをジンも咎める様子は無い。ふう、ガリーンに人望が無くて助かったぜ。
そんな風に胸を撫で下ろしながら今度こそその場を立ち去ろうとした俺だが…。
「それはそうとボニー、あんたお酒には付き合えないって言うけど、ひょっとして、飲めないの、お酒?」
ビオレッタのいきなりの質問。又も固まる俺。ジンが一笑に付するが…、
「はっはっは…、コイツが下戸⁈ まさかいくらなんでも…」
俺がフリーズのままなのを見、ジンの笑顔も引きつっていく。
「…マジなのか、お前が飲めないとか…、あ…ありえん。」
何となく逃げる様にその場を離れる俺。
「てか、あんたらは飲むんかい!」
背中の方でビオレッタの突っ込みの声…、あれ、そういえば、ジュウベイもネビルブもついて来て無い。ジュウベイの奴、子供のくせに酒は飲むのかよ。まあ歳はあの中で1番上かも知れないが。てか、ネビルブまで! くそ、今度俺も飲んでやろうかな…。
日が変わり、軽い朝食を頂くと早速出発する俺達一行、目指すはもちろんミドナ火山をいただく魔王領。今回はジンとビオレッタがいるので迷う事は無い。
自らの皮膜の翼で飛ぶ俺とビオレッタ、飛龍に跨って飛ぶジン・レオン、そしてこのスピードについて来るのはちょっと厳しいジュウベイとネビルブ。ジュウベイが"あの場所"の匂いは覚えていると言うので後から追いついてもらう事にし(ネビルブにビオレッタの予備で持っていた通行証を渡しておいて)、四天王の3人で先行する。真っ直ぐ最短距離を飛んで来ればたちまち見えて来る"あの場所"。
「何だありゃあ?」
丘の中腹に有った大きくて立派な扉は今は壊れて開け放たれている。左右に立つ門番ゴーレムが申し訳なさそうに佇んでいる様にも見える。扉はジュウベイのマグマで一旦固められたのを、出入りの為に打ち壊した様だ。
「お前等の仕業なのかあれは?」
呆れ顔のジンに対し笑って誤魔化すしか無い俺。
「既に話し合いの余地をごっそり削ってくれているな…。」
と、ため息のジン・レオン。
扉の無い入り口から地下通路を通り、最奥の扉の前へ。代表でジンが何か唱えると、あのクソ重かった扉が勝手に開いて行く。知ってりゃこんなに簡単だったんだ…。そしてあの"異空間"に足を踏み入れる3人。
「魔王様、ジン・レオンでございます! 他、2名。大陸内の各国を任された国家元首が3名、揃って魔王様への謁見を求めます! 」
突然虚空に叫ぶジン。すると、我々の目の前に突如として扉が現れる。手の掛かった装飾が施されたその扉は明らかに偉い人の部屋の入り口だ。こういうシステムだったのか!
扉は勝手に開き、ジンを先頭に中へ入って行く俺達。その頃になって駆けつけて来た兵士達が手をこまねいてそれを見ている。なるほど、招かれた者しか入れないって訳なんだな…。




