ガラスの犬とハイビスカスの声
私は、鬱作品を書くのが好きなんです。
レモンは、雨が降る中、トンボシティに予約しているホテルへ行きました。今はもう事件から逃げたかったのです。私には関係ないと思いました。私は出会った子供達を死に追いやってしまう死神なのだと自分を責めました。レモンがテレビを付けると、ニュースがやっていました。
(先程、トンボランドの駐車場で車が突然爆発して火災が発生しました。火は3時間後に消し止められましたが、車に搭乗していたリスの大人の女性と彼女の子供達含む5名の園児が死亡しました。)
レモンは、ホテルで暫く寝込みました。そのまま寝ると涙が止まら無かったのです。その涙と一緒に彼女を吐き気が襲いました。彼女は立ち上がってトイレに行くと嘔吐しました。
トイレ前で鏡を見ると、もう1人の自分が写っていてこう言いました。もう1人のレモンは黒い目で嘲笑っていました。
「あなたは、助けられなかった。幼い命を5人も奪ったのよ。あの子達は火の中、熱いよ。熱いよって叫んでいたのよ。それなのにあなたは火事に合わなかった。あなたは逃げた。それでいてあいつが憎いだけ。そうでしょ。今のあなたは、あいつを憎んでいるだけ。」
「やめてよ!、何で私が悪いのよ。私には何の責任もない。タロウ君は関係ないのよ。」
「あなたはあいつに暴言を吐いた。暴力を振るった。そうでしょう。あいつには一緒に旅をする資格なんてない。良い加減自分の本当の気持ちと向き合いなさい。」
「本当の気持ちって何なのよ。私はどうすれば良いのよ。
もう出会った友達がどんどん死んでいくなんてそんな現実耐えられない。私は死にたくない。うううう」
トイレの前で項垂れるレモンでした。その時でした。ホテルのフロントから連絡が掛かって来たのです。レモンは電話に出ました。
「お客様、警察の方から、事件が起きた時のお話をお聞きしたいとの事で。」
レモンがいる部屋に熊の刑事が訪ねて来ました。
「君はあの時亡くなった6人の被害者に会っていたんだよね。周りで怪しい人物を見かけ無かったかい?」
「わかりません、いきなりだったんで、誰が車に発火装置を付けたかも分からないし、一体誰がこんな酷い事を。まさか、あいつのせいなんじゃ。私をいじめて来たいじめっ子がいるんです。そいつが犯人かもしれません。」
時間が経つとレモンの足は自然と告別式の会場に向かっています。そのお葬式の会場には、被害者の遺族が集まっていました。お葬式にタロウはいます。でもレモンはタロウと目を合わせなかったのです。
棺の中にはスカーレットとレイスの姿がありました。横にはだけど、その姿を見た瞬間にレモンは声をあげそうになりました。2人は黒焦げになり面影はありませんでした。腕は曲がってしまっています。その様子を見たレモンの目から大粒の涙が溢れました。
「レイスちゃん達、ごめんね。熱かったよね。苦しかったよね。どうして死んじゃったの?また答えてよ。私の前で楽しく笑ってよ。一番頑張ったんだから。こんな子達がこんな思いで私なんかが、生きる資格なんか。」
レモンは、涙を拭うとお線香を入れました。生前の写真が華やかに飾られています。その写真の中ではレイス、カリル、デール、ヒューズも笑っていました。告別式が終わると、レモンは顔を下を向いたまま真っ直ぐに歩き出しました。そんな彼女の前に、マロンは現れたのです。
「おい、寄生虫、どうだよ。私が起こしたゲームは?あんたと仲良くなった友達、全身黒焦げになって死んでたねー。あたしが殺したの。あんたには友達なんか作る必要ないんだよ。
「あんたがやったの?何で、関係ないレイスちゃん達を殺したのよ?あの子達は関係ないじゃない?私を殺しなさいよ。あんたなんか、殺してやる!!」
レモンは走って行くと、マロンの首を絞めようと襲い掛かりました。だが、マロンはレモンを蹴り飛ばしました。そして、レモンを殴り付けると言いました。
「そうやって憎めよ。お前の、口だけの憎しみなんかあたしには、何にも通じないから。お前、うざいんだよ。ああ?
いつでも弱い癖に良い子ぶりやがって。いじめられっ子にはわからねえのかよ。そんなにいうなら、いっそのこと殺してやるよ。この寄生虫野郎!!!」
その時、マロンの頭を殴り付けるものが現れたのです。三毛猫のタロウです。タロウはマロンに言いました。マロンは頭を殴られるとその場に倒れそうになりました。
「やめろ!この殺し野郎!もう逃げられないぞ」
「ふん、出たよ。寄生虫の仲間が、」
タロウはマロンを押さえつけようと走ります。マロンを殴りつけました。だが、マロンをタロウを避けると、タロウの腹部に強烈なパンチを食らわせたのです。そしてマロンは瞬きをすると、タロウに催眠をかけました。催眠にかけられたタロウの意識が揺らいでいきます。そしてマロンはその場から姿を消して行きました。
しかし、マロンは催眠術を使いその場から姿を消しました。
レモンはタロウに言いました。
「タロウ君、助けてくれたの?私、ごめんなさい。酷い言葉を言ってしまった。タロウ君に対して。」
「その事は、僕も謝るよ。でも、レモンちゃんがあれだけ、思うのもしょうがないと思うよ。だって僕は守れなかった。僕達と遊んだ子供達は結局、マロンの手によって殺されちゃったんだもん。折角だから、仲直りの続きにトンボシティのお花でも見に行かない?」
タロウはレモンを誘ってトンボシティのフラワーパークへとやって来ました。夜遅く開いている公園に2人で行き一面の花畑を見ました。その花畑にはハイビスカスやネモフィラが咲き誇り辺りはお花を楽しむカップルで溢れています。デートスポットとしてかなりおすすめなのでしょうか。
「トンボシティも見納めだね。この街での出会いも、何かあると思ったけど、結局、スカーレットさんもレイスちゃんも焼死しちゃったし。」
その時奇跡が起きました。
タロウとレモンの前にガラスで作られた犬の置物が置いてありました。月の光に照らされて、ガラスの犬が突然動き始めたのです。ガラスで作られたその犬はタロウとレモンの前に現れると挨拶をしました。
「私はガラスの犬である、デスネードです。非常に辛かったでしょう。旅で仲良くなった仲間を失い続ける。しかも子供ばかり。旅というのは出会いもありますが、別れもあるのです。それを乗り越えなければいけません。」
「ガラスの犬が喋った!君は魔法の力で喋るのかい?」
「あなたはもしかして魔法の力で動いているの?ガラスが喋るなんて。」
タロウはとレモンは突然喋り始めたデスネードに話しかけるとデスネードはゆっくりと丁寧に話し始めます。その口調は柔らかな口調です。
「夜になると魔法が掛かるんです。ガラスで作られた動物や普段動く事のない人形達も動き始める。タロウさん、レモンさん、あなた達の旅は運命なのです。他の世界でもその悲劇は途切れる事はありませんでした。悲劇は連鎖していきます。この世界に於いて、全ては無力なのです。ご覧下さい。聞こえませんか?ハイビスカスが歌っています。レクイエムを」
デスネードがそう言うと、フラワーパークの前にあるハイビスカスの花が開き始めました。ハイビスカスの花からは目と口が見えています。そして一斉にハイビスカスの花がレクイエムを奏で始めました。その声を聞いたレモンは言います。
「違うわ。こんなはずじゃない!だって本来命は守らなければいけないものでしょ。こんな悲劇の連鎖ばかり起きているなんて本当に私達の意識が低すぎるんじゃないかってそう言う事じゃない。」
するとデスネードは厳しい言葉を冷たく言います。その言葉はレモンとタロウの心を抉り出すように突き刺さります。しかしそれは他でもない真実。
「ええそうです。あなた達は意識が低い。その意識の低いせいでカマキリタウンの園児達や今回の事件は起きて沢山犠牲が出ました。でもそれがあなた達のせいではありません。事件を起こす犯人がいてそいつらを止められないあなた達の能力の低さも影響しているでしょう。」
するとタロウはデスネードに対して苛立ちを覚えたのか、激しく怒り始めました。
「そんな言い方はないだろう。だって、僕だってレモンちゃんだってやるだけの事はやったんだぞ。お前だってその現場にいなかったからそんな酷い事が言えるんだよ。じゃあ何の為に命はあるんだ。何の為に助けるんだ。命って、生命って何なんだよ。」
問いかけた時に既にデスネードの姿はありませんでした。そして、レモンはタロウに言いました。
「タロウ君、辛かったんだね。そうやって1人で抱え込んで、私は何も分かってあげられなかった。私は、最低だよ。タロウ君に八つ当たりして怒りをぶつけて、だからもう良いよ。だからもう1人で苦しまないで。私がいるから。
私がタロウ君の力になってあげるから。」
「レモンちゃん、ごめん。ありがとう。」
レモンはタロウをそっと抱きしめました。そしてハイビスカスの花びらは静かに閉じるとレクイエムは静かに幕を閉じました。
読んで頂きありがとう御座います。




