シロちゃんの言葉
カマキリタウンに僕とレモンちゃんの2人で入るとそこにはカマキリの銅像が置かれているどこか田舎の雰囲気を感じる街です。街には畑が生い茂り何か穀物を育てているのでしょうか。レモンちゃんに僕は聞きます。
「ここもお母さんが生前連れて行ってくれた街なのかい?」
「そうよ。カマキリタウンでよく畑で取れたっていう野菜を買いに行ってた。お母さん結構採れたてのお野菜好きだったから。お母さんが作ってくれた野菜スープは美味しかったなぁ。」
レモンちゃんは言います。2人で歩いていると目の前にキャベツの畑がありました。そのキャベツの畑で1匹の白いうさぎさんでしょうか。僕と同い年くらいの女の子が畑を手伝っていたのです。白うさぎの女の子は顔を上げて僕と目が合いました。その時うさぎの女の子は僕の方へと急に近づいて来たのです。
「もしかしてタロウ君、久しぶり。私だよ。シロだよ。孤児院以来だね。」
「シロちゃん、久しぶりだね。そっか里親が見つかったんだ。農家の家に預かってもらったんだね。今はキャベツを育てているんだね。」
「そうなの。お父さんはキャベツ農家だから、美味しいキャベツを販売しているんだよ。お友達?」
「こんにちは、レモンです。タロウ君の幼馴染なんですか?」
「うん。タロウ君とは孤児院が一緒で。良かったらタロウ君とレモンちゃんも私のお家に来ない?」
レモンちゃんがシロちゃんに聞き、その質問にシロちゃんが答えます。シロちゃんが誘ってくれているのです。僕は一瞬迷いましたが、その答えを言う前にレモンちゃんが答えます。
「えー、良いんですか?是非行きたいです!」
レモンちゃんの元気いっぱいの返事を聞いたシロちゃんはにこりとして言いました。
「どうぞ、私が案内してあげます」
僕とレモンちゃんはシロちゃんが住んでいると言う家にやって来ました。一見普通のお家なんですが、収穫した野菜が置いてあるのです。シロちゃんのお部屋に行くとその部屋には女の子らしいぬいぐるみが置いてあるではありませんか。シロちゃんは冷蔵庫に入っている野菜や収穫したばかりだと言うキャベツを使ってスープを作ってくれました。
「はい、どうぞ、キャベツが入った野菜のスープです。」
「「うわぁ、美味しそう。頂きます。」」
僕とレモンちゃんが交互に言うとシロちゃんが作ったスープを口に入れました。なんて美味しさでしょうか。温まったキャベツが柔らかくなりミネストローネのスープと合わさり更に甘い味を出しています。
「シロちゃん、料理うまいのね。これとても美味しいわ。
ねえ、シロちゃん、タロウ君は子供の時はどんな男の子だったの?」
「タロウ君はでも優しかったな。当時と変わらないよ。今みたいに落ち着いていたかも、少なくとも私の記憶の中ではね。後は朝顔とかお花が好きでよく朝一緒に植えに行っていたよ。」
「あーね、よく一緒に育てていたね。タカも一緒だったっけ?」
「3人で同じプランターに入れて一緒に水を上げていたね。懐かしいね。それで私が最近育てていたんだけど、朝顔の花が私に話しかけてくれるの。」
シロちゃんが言った事が信じられなかったのですが、僕達は庭の方に行くと朝顔の花が顔を出していました。どこか穏やかで優しそうな感じですが、朝顔の花が急に喋り出したのです。
「おやシロちゃんのお友達かい?これはこれは可愛い猫ちゃんだこと。」
「はい、僕は幼馴染でして、今日久しぶりに再開したんです。」
「彼女は優しい子だ。しっかり励ましておやり」
まるでおばあちゃんのように優しく話しかけてくれたのです。するとその様子を見ていたレモンちゃんが言いました。
「朝顔さんとシロちゃんっておばあちゃんと孫みたいなんだね。」
シロちゃんはレモンちゃんの言葉を聞くとこう言いました。
「うん、朝顔おばあちゃんって私は呼んでいるかな。」
シロちゃんに案内されてカマキリタウンにあるパン屋さんに向かいました。そこでパンを食べながら僕達はおやつの時間を過ごしています。だが急にシロちゃんが来るしそうにし始めたのです。
「シロちゃん、具合が悪いの?」
「タロウ君、私実は病気で余命僅かなの。後、1週間しか生きられないってお医者さんから言われていたから、だけど私、タロウ君に会えた事が嬉しいよ。」
突然シロちゃんが言った言葉に僕は驚きを隠せませんでした。一瞬言葉を失いました。レモンちゃんもびっくりして目が丸くなっています。僕は言いました。
「嘘でしょ。余命僅かってそんなに重い病気だったのかい?
余命1週間ってそんなの受け入れられないよ。」
僕はいきなり聞かされたその事実にどうすれば良いかわからず、シロちゃんと過ごした思い出を回想します。レモンちゃんは励ますように言います。
「シロちゃん、大丈夫、きっともっと生きられるよ。だから頑張ろうよ。」
レモンちゃんの励ましの言葉を聞いてシロちゃんは泣き始めたのです。
しかし一週間後、シロちゃんはカマキリシティの病院で息を引き取りました。僕は目の前で動かなくなる彼女を見て涙が出ました。
「シロちゃんは頑張ったよね。最後まで。でも何で久しぶりに再開できたと思ったのに、うわぁぁぁ!!!」
僕の目から大粒の涙が出ました。現実を受け入れきれないでいっぱいだったのです。
「大切な人って急にいなくなっちゃうから、お星様になる前に会いたい時に会わなくちゃね。」
そして葬儀が行われました。シロちゃんは棺の中に静かに眠っていました。やがて最後は火葬されていったのです。




