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第四話

魔法がないのに魔法を学ぶ学校生活が始まった

入学式が終わり、新入生たちはそれぞれの寮に案内された。

僕の部屋は三人部屋で、ルームメイトは——

「お、おい……お前も魔法が使えるのか?」

第一声がそれだった。

目の前に立っていたのは、ちょっと小太りでメガネをかけた、見るからにオタクっぽい男子。

「いや……まぁ……?」

返答に迷う。

ここで「使えません」と言ったら、「えっ、君だけじゃないの?」という目で見られる可能性がある。

しかし、「使えます」と言ったら、どこかのタイミングで実演を求められる危険性がある。

「俺、藤崎っていうんだけどさ……」

藤崎は声を潜め、僕に耳打ちする。

「実は俺、魔法、全然使えないんだよ……」

「……!!」

やはり。

やはり、こいつも「魔法が使えないのに、魔法学校に入学してしまった被害者」だったか……!

「でも、お前は使えるんだよな?」

藤崎の目が真剣だ。

——しまった。

「いや、まあ……その……」

僕は咄嗟に濁した。

すると藤崎は納得したように頷き、安堵の表情を浮かべる。

「……そうか、お前は使えるのか。よかった、俺を見捨てないでくれよ……!」

いやいやいやいやいや、なぜそうなる!?

僕も使えない側だぞ!!

しかし、もう言えない。

僕が「いや、僕も使えないよ」と言った瞬間、藤崎は完全に絶望する。

だからこそ、適当に話を合わせるしかなかった。

「ま、まぁ、大丈夫だって」

……とりあえず、部屋の空気を落ち着かせることに成功した。

が、これは完全に負のスパイラルである。

このままいくと、僕は”魔法が使える側”として扱われ続けるのでは!?

魔法授業初日、衝撃の課題

そして翌日、ついに最初の魔法授業が始まった。

「ようこそ、基礎魔法学の授業へ!」

教師は、どう見てもただのおじさんだった。

魔法使いっぽい杖を持っているが、明らかに軽くて安物っぽい。

ローブも、どこかのコスプレ用品店で買ったような質感。

そして、開口一番、彼はこう言った。

「まずは、魔力の流れを感じることが重要です!」

「では皆さん、目の前のろうそくに火を灯してみましょう!」

ザワ……ッ!

教室が一気に緊張に包まれる。

生徒たちが顔を見合わせる。

……あ、これ、全員どうすればいいのかわかってないやつだ。

もちろん、僕もわからない。

なぜなら、魔法は存在しないから。

「さあ、杖を持って、心の中で念じてください」

「フレア・インカンデス!」

教師が言いながら、杖を振る。

すると、ろうそくに火がついた。

「おおっ!」

生徒たちがざわめく。

が、僕は見逃さなかった。

教師が杖を振った瞬間、袖口からライターを取り出していたことを。

——いや、普通にライターじゃねえか!!

しかし、誰も指摘しない。

「では、皆さんもやってみましょう」

「さあ、フレア・インカンデス!」

生徒たちは、おそるおそる杖を振る。

「フ、フレア・インカンデス……!」

「フレア・インカンデス!」

しかし、当然ながら、誰のろうそくにも火は灯らない。

全員が焦る。

「えっ、どうしよう……」

「どうやったら火がつくんだ……?」

「俺、ヤバいんじゃないか……?」

そんな中、藤崎が僕を見て言った。

「お前、すごい魔法使いなんだろ? なんとかしてくれよ!」

——いや、僕も魔法使えないんですが!?

「おい、○○くんがやるって!」

周りの生徒も期待の目で僕を見ている。

詰んだ。

完全に詰んだ。

でも、ここで**「僕もできません」**と言ったら、確実に”魔法が使えないやつ”として白日のもとに晒される。

どうする……?

どうする……!?

——その時だった。

バチッ!!

突然、教室の電気がショートした。

「わっ!? 何!?」

「急に暗くなった!?」

「誰かが……魔法を使ったのか!?」

その瞬間、ろうそくが何本か自然に灯った。

どうやら、停電の影響で風が流れ込んで、近くのろうそくに火がついたらしい。

そして、僕が杖を振ったタイミングと完全にシンクロしていた。

「……!!!!」

「○○くんが……やった……?」

「す、すげえ……! 何も触れずに、魔法だけで火をつけたぞ!!」

「こ、これは……真の魔術師……!!」

「伝説の魔法使いが生まれた瞬間だ……!!」

——いや、ただの偶然です。

しかし、誰もそれを疑わない。

教師までもが興奮して言う。

「素晴らしい! ○○くん、これは天賦の才能ですね!」

「他の生徒の皆さんも、彼の魔法を見習いましょう!」

その場の雰囲気は、完全に「僕がとんでもない魔法使いである」という流れになってしまった。

——どうしてこうなった。

——もう訂正できない。

そして、この日から、僕は「すごい魔法使い」として扱われることになったのだった。


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